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初めて商品を作るときに必要な味のゴール設定と検証方法

目次
はじめに:なぜ「味のゴール設定」が重要なのか
製造業の現場で新商品開発に携わるとき、「どんな味にするかを決める」工程は想像以上に難しく、また重要なポイントです。
食品メーカーはもちろん、非食品分野でも「品質の具体イメージをつかむ」作業は製造プロセス全体に影響を与えるため、企画・設計段階でのゴール設定が成功の鍵となります。
この記事では、工場長や現場経験者としての実体験や、アナログゆえに根付いた現場目線も踏まえ、「初めて商品を作るときに必要な味のゴール設定と検証方法」を詳しく解説します。
バイヤー志望の方、サプライヤーの立場からバイヤー目線を理解したい皆さまにもお役立ていただける内容です。
味のゴール設定とは何か
「味のゴール」とは明確な基準設定
味のゴール設定とは、その商品がどのような味になるべきか「終着点(品質イメージ)」をあらかじめ明確化し、製造過程の全ての判断基準とすることです。
このゴールが曖昧だと、開発も調達も生産もベクトルがずれてしまい、「なんとなく出来上がったもの」を市場に出すことになります。
現場でよくあるのは、「まあ、これくらいでいいか」「他社品と大差ないからOK」などの妥協。
これでは自社の独自価値をつくれず、価格競争や模倣品との競合に巻き込まれてしまいます。
味のゴール設定が製造業において特に大切な理由
製造業は工程が複数層に渡るうえ、原材料の調達や生産条件で最終品質が容易にブレます。
とくにアナログ体質が色濃く残る「熟練者の勘」が評価軸になりやすい業界では、口頭指示や感覚頼みで味の落差が生まれやすいのです。
例えば、A工場とB工場で製造した同一商品で、微妙に香味や後味の印象が異なり、クレームや再生産コストがかかることは珍しくありません。
「明確なゴール=数値+五感」で指標化しなければ、市場で支持されるものづくりはできません。
味のゴール設定、まずやるべき3つのこと
1. ターゲットユーザーと使用シーンの明確化
どんなに素晴らしい味でも、それを手に取るお客様がイメージできていなければ意味がありません。
まず、「誰に、どんな時、どのような気持ちで食べてもらう商品なのか」を関係者全員で徹底的に可視化しましょう。
たとえば、「30代女性、仕事帰りのリラックス時間に健康を意識して食べるスイーツ」なら、
・甘すぎない
・罪悪感を覚えないカロリー、味付け
・食感や香りで癒しを感じる
など、必要な味のキーワードが浮き彫りになります。
2. ベンチマークとなる既存品、市場トレンド調査
ゼロベースで味を決めるのは困難です。
自社および競合商品、市場でヒットしている味の傾向、訴求ポイントを複数ピックアップし、現物をテイスティングしてリスト化しましょう。
この際、「あの商品より塩味+10%」「A社のクリーミーさを手本にする」など、言語化と数値化を意識します。
市場調査会社のデータやコンビニの棚割、消費者アンケートも活用してください。
3. 社内の合意形成と現場への落とし込み
商品企画・マーケ・品質保証・製造、場合によって営業やバイヤーも交えて、「これが我々の商品です」と全員が納得できるゴールを設定します。
ここで曖昧な表現(例:『さっぱりしてる感じ』)は絶対避けてください。
あくまで、五感+客観データ(糖度・塩度・pH・テクスチャー等)をミックスした判断軸をつくることが重要です。
現場に根付いた味の検証アプローチ
昭和式アナログ検証とデジタル検証の融合がカギ
工場の現場では、いまだ「ベテランの舌が全て」なアナログ文化が色濃く残っています。
確かに経験値は貴重ですが、それだけに頼ると属人化と再現性の低下を招きがちです。
一方で、近年は味の数値管理やAIによる官能評価予測など、デジタル技術も進化しています。
両者の良いとこ取りこそが、次世代の製造業に必要な視点と言えます。
味の検証方法:現場で使える具体的な手法
- 官能評価テスト
・複数人でブラインドテスト(サンプルに番号を振る)
・「どちらの味がゴールに近いか」を5段階評価や順位付けする
・五感ごとの評価シートを作成しデータ化 - 物理化学的測定
・糖度計、塩度計、酸度計などの機器で成分を数値管理(例:Brix値、塩分濃度、pHなど)
・香気成分分析やテクスチャー分析(硬度・粘度測定など)
・これにより「美味い/マズイ」を誰でも説明できる共通言語に変換 - 比較対照実験(A/B試作)
・Aサンプル(現物)、Bサンプル(新提案)のみを同条件で比べて、差分を明確化
・バイヤーやモニターに直接フィードバックをもらい重要ポイントをSPY分析(強み/弱み/差別化点)する
バイヤー・サプライヤー視点で押さえておきたいポイント
調達購買担当として意識すべきこと
バイヤーの立場で「味のゴール設定」の議論に参加するときは、単にサプライヤーが仕上げる味に合わせるのではなく、マーケットを牽引できる基準を自分で提案できることが強みに変わります。
・顧客の声を現場に正しく伝える
・「なんとなく美味しい」より「〇〇なシーンでベストな一品」になる品質設計が求められる
・数値と五感の両面から評価できる自己学習が重要
また、サプライヤーからの自主提案を引き出す「共創」姿勢が、ひとつ上の購買プロとして重視されます。
サプライヤーとしてバイヤーの意図を読むには
サプライヤー側からすると、「どんな味を求めているかよく分からない」「とりあえずサンプルだけ作って」と言われて困ることが多いでしょう。
こここそが商談の差別化ポイントで、
・ターゲットのシーンや消費者像を自ら詳細ヒアリング
・可能な限り、市場・競合のベンチマークや数値を自社なりに整理して提案
・「現場で調整しやすい」「工場横断で再現しやすい」味のレシピや管理基準も合わせて提出
こうした能動的なアプローチが、バイヤーの信頼獲得・次の受注につながります。
ラテラルシンキングで味のゴール設定に新しい地平を
味のゴール設定というと、どうしても「今までの延長」「過去にヒットした味」に縛られた発想が多くなりがちです。
しかし、市場の環境はダイナミックに変化します。
たとえば高齢化による「薄味」志向、ヘルシー志向や植物由来原料の時流、海外消費者向けのローカライズなど、「今までと同じ」では対応できない時代です。
ラテラルシンキングを活用し、異業種の味付けトレンドや情報技術、感性AI、サステナブル・エシカル要素なども積極的にリサーチし、「まだ誰も体験したことのないおいしさ」をゴールに据える。
新しい情報と伝統の技を融合させてこそ、ものづくり産業の未来が開けるのです。
まとめ:味のゴール設定・検証の最適解とは
初めて商品を作るときの「味のゴール設定」とは、
1. ターゲットユーザーの明確化
2. ベンチマーク&トレンド調査
3. 言語化+数値化による合意形成
を順守したうえで、
・現場の官能評価
・機器分析とデータ管理
・A/Bサンプルとモニター検証
を繰り返し、PDCAサイクルを回すことが大切です。
バイヤーもサプライヤーも、現場目線と最先端技術、そして柔軟なラテラルシンキングを掛け合わせて、自社だけの「おいしさ基準」を確立しましょう。
それがこれからのものづくり日本を支える最大の競争力となります。
皆さまの現場での実践を心から応援しています。
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