投稿日:2025年11月27日

OEMアウターの洗濯・耐久試験の基準を設定する方法

OEMアウターの洗濯・耐久試験の基準を設定する方法

はじめに – OEMアウターの品質基準とは

OEM(Original Equipment Manufacturer)ビジネスにおいて、アウター製品の洗濯耐久性や物理的な耐久力は、エンドユーザーの満足度やブランド価値を大きく左右します。

しかし、昭和時代の「勘と経験」に頼るアナログな現場風土がいまだ強く残る日本の製造現場において、体系的かつ合理的な品質基準の設定はしばしば後回しにされがちです。

消費者の目は年々シビアになり、不良品リスクがブランドイメージを即座に左右する現代では、OEMアウターの洗濯および耐久試験の標準化が不可欠です。

本記事では、OEMアウターの洗濯・耐久試験基準を実践的かつ現場目線でどのように設定するかを、具体例を交えながら徹底解説します。

洗濯・耐久試験とは何か

洗濯試験とは、繰り返し洗濯後の生地の劣化(色落ち、毛羽立ち、収縮、溶着部の剥離等)を評価する試験です。

耐久試験は、長期使用に耐えうる製品かどうか、摩耗や引き裂き、引張強度などの物理的な耐久性を評価します。

いずれもエンドユーザーにとって「買ってよかった」と思わせるための“見えない品質”を担保する工程であり、サプライヤー・バイヤーの信頼関係を築く根幹でもあります。

昭和流品質確認の限界と新しい基準づくり

日本の製造現場、特に中小規模のOEM先では、熟練者の個人的経験や「昔からこうしてきた」方法がいまも定着しています。

ある工場では「3回洗えば充分」とされ、別の工場では5回やるなど、明確な根拠なく試験回数がバラバラとなる事例も散見されます。

このような状況では、バイヤーが本当に求める品質レベルとサプライヤー側の“合格ライン”がズレてトラブルが生じがちです。

これからは、社外・社内を問わず“誰がやっても同じ品質結果を出せる”共通言語としてJIS(日本工業規格)やISOなどの国際的な規格を軸に基準を策定することが求められるでしょう。

OEMアウターの洗濯・耐久試験の具体的基準の例

バイヤーがOEM先に求める主な基準は下記のようなものです。

  • JIS L 0844による洗濯耐久試験(家庭用洗濯機での標準回数5回、10回など)
  • JIS L 0850に基づく摩擦による色落ち度
  • 寸法変化率(洗濯前後で±3%以内 など)
  • 引張・引裂き強度試験(JIS L 1096 など)
  • 耐摩耗試験(スナッグ、ピリング発生評価など)

代表的なアパレルバイヤーでは、「洗濯10回で外観・機能に大きなトラブルの発生がないこと」「日常使用を想定した摩耗試験で一定レベルの物性を保持すること」を要求仕様書に明記しています。

サプライヤー側は単なる“数こなし”から脱却し、これら試験の意味と影響をきちんと理解したうえで、生地・副資材の選定、縫製仕様、溶着方法まで踏み込んだ設計・製造を行う必要があるでしょう。

基準策定でバイヤーが考えていること

バイヤー側は、OEMアウターの耐久試験基準を次のような観点から考えています。

  • ブランド価値を維持するため、消費者クレームを最小化したい
  • “初回納入分”と“量産分”の品質差異をなくしたい
  • グローバル展開も前提に、国際的な根拠のある基準を採用したい
  • 将来のロット変更や材料変更時も検証可能な仕組みを作りたい

形だけの試験ではなく、市場クレームや返品率の低減、リコールリスクの最小化まで見据えた基準設定が求められているのです。

つまり「誰のための基準か?」を常に起点にしなければなりません。

サプライヤーが基準設定で注意すべきポイント

サプライヤー側はつい「バイヤーから指定されたとおりにやります」と無批判になりがちですが、長期的な信頼関係を築くには、現場のリアルを反映したフィードバックが不可欠です。

  • 自社工場・協力工場で実施可能な試験内容・設備の有無の確認
  • 従来材料・新規材料での物性差異の把握
  • 現行仕様とバイヤー要求仕様とのギャップ抽出と報告
  • 万一の不合格リスク時の対応案の事前提案
  • 量産化後の市場モニタリング(ユーザーアンケートや実使用の着用モニター実施)

単に“クレームが来てから対策”するのではなく、事前にリスクを把握し、基準への適合継続性まで自ら管理する意識が差別化要素となります。

現場でのラテラルシンキング事例 – アナログ現場を活かす工夫

昭和流の勘や経験がまったく役に立たないわけではありません。

例えば“洗濯後で一番変化しやすい所”や“実際の現場で目立つトラブル傾向”を熟練者が知っている場合、それを「規格外データ」として記録し、試験項目や基準の見直し材料にすると良いでしょう。

地域によって異なる水質や洗剤、洗濯機の違いまでも考慮し、工場ごと、ロットごとの傾向値を蓄積することで、机上のJIS試験と実使用のギャップを埋めることが可能です。

つまり、アナログの知見をラテラルに活用し、標準化と現場リアルの「すり合わせ」を繰り返すことが本当の意味での“持続的な高品質”に繋がります。

洗濯耐久試験基準の設定フロー(実践例)

1. 目的設定
・各OEMアウターの顧客ターゲット、使用状況(アウトドア、毎日洗濯、雨天着用等)を想定したうえで、どのような耐久性が求められるか明確にします。

2. 基準項目の選定
・色落ち、防水性、撥水性、収縮率等、用途に応じた必要な項目をピックアップします。

3. 試験方法・規格の決定
・JISやISO等の第三者機関発行の公的規格を優先。そのうえで社内独自の追加評価を加え、バイヤーと相談・合意形成します。

4. 試験頻度・評価基準の設定
・洗濯5回で変化なし→A評価、10回で僅かな変化→B評価など、ランク分けすることでリスクを可視化しやすくします。

5. 結果のレビューおよびフィードバック
・不合格データやロットごとのバラツキを定量的に蓄積。再発防止・工程改善につなげます。

6. 継続レビュー
・製品リリース後も市場クレーム、ユーザー評価を反映し、基準の見直し・アップデートを継続します。

基準づくりは「現場・顧客・バイヤー」の三方良しで

OEMアウターの品質基準設定は、バイヤー、サプライヤー双方だけでなく、実際のユーザー=現場にとっても「納得感のある」ものにすることが核心です。

机上の理論やお仕着せの規格だけでなく、現場での“気づき”や“こだわり”を、規格値や基準設計に織り込みましょう。

最終的には「誰が見ても、誰がやっても、変わらない品質アウトプット」が実現できれば、OEMパートナーとの長期的な信頼が生まれます。

まとめ

OEMアウターの洗濯・耐久試験基準の設定は、勘と経験だけのアナログ流儀から一歩先へ進み、体系的かつ共通言語化された合理的な基準に転換するフェーズに来ています。

JISやISO等の公的規格を軸に、サプライヤー側からも現場リアルを“根拠あるフィードバック”として提供し、新たな基準づくり=業界の進化に寄与しましょう。

読者の皆さまが、自社ブランド・パートナーシップ・ひいては日本製造業の新たな発展の一助となることを願っています。

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