投稿日:2025年6月4日

フッ素樹脂(PFAS)の代替品調達方法と新規商材の提供方法

はじめに:フッ素樹脂(PFAS)の課題と代替品調達の重要性

フッ素樹脂(PFAS)は、その高い耐薬品性や耐熱性から、半導体・電子部品、自動車、食品、医療機器など様々な製造業で不可欠な素材でした。

しかし、近年では環境規制の強化により、PFASの生産制限や使用制限が世界中で加速しています。

欧米やアジア諸国の規制動向を受け、国内の製造業も「脱PFAS」の動きが本格化しつつあり、「従来の原材料が確保できない」「取引先からグリーン調達が要求される」など、調達現場は深刻な転換点を迎えています。

このような時代、製造業現場で働く方、バイヤーを目指す方、サプライヤーの立場でバイヤーの思考を知りたい方に向けて、PFAS代替品の調達ポイントや、新規商材提供における実践論を解説します。

アナログに根付いた昭和型の調達慣行から脱却し、2024年以降の新時代にマッチした「攻め」の調達手法も織り交ぜてご紹介します。

フッ素樹脂(PFAS)とは何か?そしてなぜ代替が求められるのか

PFASの定義と用途

PFAS(Per- and Polyfluoroalkyl Substances)は、フッ素原子を多く含む有機化合物の総称です。

絶縁性、化学的安定性、耐熱・耐食性、低摩擦特性などを有し、PTFE、PFA、FEP、ETFEなど多彩な樹脂が存在します。

これらは主に以下の産業で活用されています。

・半導体製造装置の配管やシール材
・食品加工のノンスティックコーティング
・自動車の燃料系部品
・電気電子部品の絶縁体
・医療機器の各種部材

PFAS規制の現状と調達現場のインパクト

PFASの環境残留性や人体への残存性が懸念され、欧州(REACH規則、SVHC指定)、アメリカ(PFAS規制法)、中国他アジアでも規制強化が進展しています。

これにより、サプライヤーからの突然の出荷停止、取引条件変更、原材料価格高騰、納品遅延などリスクが多発し、調達部門では「代替素材をいかに早く確実に調達できるか」が重要なミッションになっています。

フッ素樹脂(PFAS)代替品の選び方と調達基準

代替素材の候補と主な特徴

フッ素樹脂代替として注目されている素材には、以下のようなものがあります。

・ポリサルフォン(PSU、PPSU):耐熱・耐薬品性が高い
・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK):機械的強度、耐熱、耐薬品性に優れる
・ポリエチレンテレフタレート(PET):一部の用途で代用可能
・シリコーンやEPDM等の高性能エラストマー:パッキン、ガスケット等の用途
・生分解性プラスチック:環境配慮型(ただし、耐薬品・耐熱には限度あり)

代替品調達時のアプローチ:「適合性」「コスト」「実用性」評価

PFAS代替品調達では「試作→評価→量産切り替え」が必須です。

どんなに環境適合でも、現場の実運用に耐えうる“能力値”がなければライン稼働を止めるリスクも孕みます。

アナログな現場経験を生かし、「現品現場現実主義」で以下のような手順を踏むことが安全です。

1. 用途ごとに必要な機能(耐熱性・耐薬品性など)をリストアップ
2. 既存品の実働データと新素材の仕様値を厳密比較
3. サプライヤーの現物サンプルで実ライン・実環境でテスト(24時間以上の経過観察推奨)
4. コスト・納期・数量安定性を同時に確認(短納期に依存して失敗するケース多発)
5. 妥協すべき機能・譲れない性能を明確化し、段階的な移行期間を設定

特に昭和型「一社依存」「経験と勘頼み」の調達スタイルから、「複数サプライヤー調達」「データドリブン化」へ転換することが現実的な適応になります。

バイヤー目線:サプライヤー提案を評価するチェックポイント

新規素材の提案を受ける時の見極め方

PFASの代替商材をサプライヤーが提案してくるケースが増えています。

バイヤー視点では、以下の点を必ず確認しましょう。

・サプライヤーがなぜその素材・規格を推しているか(単なるリスト先行ではなく実績根拠があるか)
・他社・他工場での導入評価や不具合履歴(失敗談も情報価値大)
・長期供給可能性と価格変動リスク(規制強化で輸入停止リスクが残る国産品かどうかも重要)
・品質保証・トレーサビリティの範囲と内容(証明書のみではなく現品確認を推奨)

昭和型の「上司のツテで決まる」「試作品もらって終わり」的な景色から、現代は「証拠・繰り返し性・安定調達」が肝となります。

試作〜本採用までの業界的ギャップを埋める

多くの現場で「試作まではできるが、本採用で止まる」現象が散見されます。

代替品には初期不具合や量産移行時の新たな障壁がつきまとうため、下記フェーズごとにポイント管理を徹底しましょう。

・開発部門とQA部門の早期巻き込み
・サプライヤーとの共同試験(カスタムテスト仕様の設定)
・ユーザー現場との体感温度すり合わせ(熟練現場リーダーの意見を重視)
・一次調達後の二次・三次サプライヤー分まで多元化
・故障対応マニュアル・交換方法の整備

これらは従来の“できればやる”項目から“マスト”管理に昇格しています。

サプライヤー視点:バイヤーの要求・心理を読む

バイヤーが求めているものの本質

サプライヤーがPFAS代替品を提供する際、意識すべきは「お客様は単なるカタログスペックでなく、実ライン・現場課題の“解決”を求めている」点です。

・製造現場のライン停止リスク経験者(例えば“月曜朝の突然のトラブル”を本当に痛感している人)は最終意思決定で慎重です
・バイヤーは“御社から買うメリット”を上層部にロジカルに説明する必要があります

単なる提案資料の提示だけでなく、「実装した時の失敗事例や応急対応策」「納品遅延・輸入トラブルの過去履歴」など現場エピソードをセットで伝えることで、“想定外対策”ができるサプライヤーだと評価されやすくなります。

課題共創型の新提案アプローチ

PFAS代替に悩むバイヤーは“分からない・決められない”不安も感じています。

この時大切なのは「自主的な提案⇒課題探索」で終わらず、「客先現場との共創」へ昇華させるスタンスです。

・実際の現場に立ち入り、不具合発生プロセスを自社の材料技術担当がヒアリング
・バイヤー主導でなく、サプライヤーが“現場改善”を一緒に進める同行スタイル
・「一社独占」よりも「業界連携(例:中小企業連合)」による供給安定策の提案
・新素材の再進化(リサイクル対応、環境配慮アピール)

競合優位性を築くためには、こうした“共感・参画型”が強力な武器になります。

実践的Tips:フッ素樹脂代替調達の業界動向と新地平の開拓

昭和型からの脱却:アナログ人脈主義からデジタル&多元調達へ

従来の製造業では「長年のつきあい」「上司の一声」「現場の経験値」中心の世界が色濃く残っていました。

しかし2024年以降、グローバル規制・人材流動化・新素材普及の流れの中で、以下のような新しい地平を切り開く必要があります。

・サプライチェーンの多元化:複数企業間で共同購入、供給リスク分散
・調達プロセスのデジタル化:サプライヤーデータベース構築、AIによる最適素材マッチング
・現場リーダーのDXリテラシー向上:調達担当自身もデジタル活用力を磨く必然性
・「部材だけ調達」から「現場改良ごと調達」へ転換:サプライヤーを単なる“物売り”から“共創パートナー”に昇格

こうしたアプローチでのみ、急速な環境変化や素材不足に強い調達力を維持できます。

真の競争優位を生む「現場型バイヤー&提案型サプライヤー」連携

PFAS代替時代を生き抜くためには、「現場課題を本質的に理解・体感できるバイヤー」と「問題解決型提案ができるサプライヤー」が連動することがますます大切になります。

・一方通行の提案ではなく現場実験型のアイデア創出
・不具合対応も“犯人探し”から“共に原因究明・対策検討”へ
・現場目線の「使い勝手・メンテ性」まで訴求
・「バイヤーもサプライヤーも市場変化の当事者」という共通認識を持つ

このような関係構築ができれば、新たな法規制や業界動向があっても先手で打ち手を実行できます。

まとめ:PFAS代替時代の調達・新規商材開拓は、現場目線かつ共創型で

フッ素樹脂(PFAS)規制の波は今後さらに強まります。

調達・購買担当や開発現場、そしてサプライヤーに求められるのは、「技術力」だけでなく「現場現実を踏まえた実戦力」「現場課題に一緒に向き合う姿勢」です。

昭和型の“人脈頼り依存”から脱却し、データと現場力のハイブリッドで調達体制を構築しましょう。

また、サプライヤーは単なるサンプル提供業者でなく、「業界全体の未来を共に考えるパートナー」として存在感を示すことが新たなビジネスチャンスを切り拓きます。

これからのPFAS代替時代は、現場を知る本音トークと、未来志向の共創力が鍵なのです。

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