- お役立ち記事
- 行政の支援制度を活用した“地域一体型サプライチェーン強靭化”の進め方
行政の支援制度を活用した“地域一体型サプライチェーン強靭化”の進め方

目次
はじめに:製造業に求められるサプライチェーン強靭化の意義
近年、自然災害や感染症の拡大、国際情勢の悪化などにより、製造業のサプライチェーンはかつてないほど複雑かつ不安定な状況に直面しています。
昭和・平成の時代には、安定した国内外の流通網を背景にした集中型サプライチェーンが一般的でした。
しかし、2020年以降の「新常態」では、従来通りの“アナログ的”運用だけでは大きなリスクを抱えることが明らかになっています。
国や自治体も、こうした背景を受けて「サプライチェーン強靭化補助金」などの支援措置を矢継ぎ早に打ち出しています。
本記事では、調達購買から品質管理、工場オペレーションまで20年以上携わってきた現場経験をもとに、行政の支援制度を上手く活用し、”地域一体型”でレジリエントなサプライチェーンを構築する実践的なアプローチについて解説します。
サプライチェーン強靭化の今日的背景
災害・パンデミックリスクの現実化
2011年の東日本大震災や、近年の大型台風では、1社の部品工場停止が自動車や家電メーカー全体の生産ラインをストップさせる事象が多発しました。
また、2020年の新型コロナウイルス感染拡大では、国境を超えた人や物の流れが遮断され、グローバル調達のリスクが浮き彫りとなりました。
アナログ文化の限界と変革の必要性
日本の製造業、とくに中堅・中小企業では、いまだ紙ベースの帳票管理やFAXによる受発注など、昭和から続くアナログ文化が根強く残っています。
これらは平時には「慣れ」で運用できますが、有事には人海戦術の限界を露呈します。
サプライチェーン分断時代の教訓
単一サプライヤー依存や遠隔地調達に頼った体制では、ちょっとした異変で全体が機能不全に陥ります。
バイヤー/サプライヤー双方にとって「地域内連携」と「複線化(分散化)」の重要性が年々高まっています。
行政が提供する主な支援制度
経済産業省:サプライチェーン強靭化関連補助金
経済産業省は、再編成補助金やものづくり補助金など、多数の関連制度を提供しています。
直近では「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」が注目されています。
この補助金は、重要部素材や部品などの生産拠点を国内に設ける、または分散させる場合に最大50億円超(※申請内容による)の大型支援が得られる、画期的なものです。
地方自治体:独自の強靭化・連携支援策
各都道府県や市区町村も、製造業集積地域を中心に、各種補助金や人材派遣、コーディネート事業を展開しています。
サプライチェーン全体を見据えた設備投資や業務改善、デジタル化を促す「機械設備導入補助」「サプライヤーDX化推進」なども追加されています。
その他のサポート:
・中小企業基盤整備機構(J-Net21等)による相談窓口
・商工会議所や産業支援機関主催の連携マッチング会
・政府系金融機関による低利融資
“地域一体型”サプライチェーンとは何か
バイヤーとサプライヤーの相互理解・共存共栄
従来、サプライチェーン最適化といえば「価格・納期・品質」で最良の企業を選ぶバイヤー主導型が一般的でした。
しかし、リスク分散や技術継承、サステナビリティ志向が加速度的に求められる今、地場企業同士の連携や、”顔の見える取引”が大きな意味を持つようになりました。
単なる「下請け」ではなく、
・共同開発
・設計段階からのものづくり参画
・BCP(事業継続計画)を念頭に置いた材料供給
こうした取り組みは、結果的に双方の筋肉質な体質強化につながります。
行政の「地域コーディネート機能」
公的機関は、産業支援人材や支援策の窓口、マッチングイベント運営などを通じて、異業種・異分野間の結節点となっています。
支援制度活用のための実践ステップ
1.目指すべき強靭化のKPIを明確に設定する
たとえば
・納入遅延リスクを半減させたい
・仕入先の多元化比率を30%→50%へ
・BCPに則した複数拠点分散の実現 など、
自社固有の課題を現場レベルで掘り下げることが大切です。
2.“顔の見える地域ネットワーク”の再構築
新規調達先の探索だけではなく、「疎遠になっていた地場サプライヤー」「将来性のあるベンチャー」などにも目を向けましょう。
3.行政にアンテナを張り、専門家と連携する
運用・申請要領は複雑です。
産業支援機関やコンサルタントの力を借り、「二重申請を避ける」「最適な公募時期を逃さない」ポイントを見極めます。
4.現場のデジタル&業務改革とのセット推進
補助金の採択傾向では、「DX推進」や「社内人材育成」とセット化したチャレンジが高く評価されます。
IT化の専門知識がなくても、地域内デジタル人材育成プログラムやクラウドサービスの活用で一気にキャッチアップが可能です。
事例紹介:地域一体で築いたサプライチェーンの具体例
中部地方・自動車部品メーカーA社のケース
A社は、2020年のコロナ禍で主力材料の輸入調達が途絶した際、地元サプライヤー8社と行政(産業振興課)による「地産地消部材開発プロジェクト」を立ち上げました。
ノウハウや設備不足を役割分担で補い、補助金も“取引連鎖体ごと”に申請。
1年で90%近い安定調達率と、新たな受発注ネットワークの構築に成功しました。
九州・電子機器メーカーB社の取り組み
B社は、既存取引先の高齢化や後継者問題を背景に、行政・商工会議所と連携した「町工場デジタル化コンソーシアム」を設立。
クラウド型生産管理システムや共同購買を補助金で導入し、約30社の生産性向上&コストダウン効果を実現しています。
これからのバイヤーに求められる“地域目線”
・単なる購買プロフェッショナルから“地域連携のハブ”へ
調達担当者は、従来の価格交渉力・目利き力以上に、社外パートナーや行政を巻き込む調整・発信スキルが求められています。
・ESG・カーボンニュートラル時代の競争力獲得
CO2排出削減などに資する「近隣調達・国内回帰」は、世界の主要企業が続々と注目しています。
グローバルとローカルのバランスを取り、サステナブルな体制づくりに取り組みましょう。
昭和的アナログ業界を変える“現場の一歩”
アナログ→デジタル移行の壁を突破する
FAXや伝票文化の温存は、部分最適・属人化の原因です。
まずは小さなITツール・クラウド利用から始め、機械設備や帳票管理など一つずつ「ノンストップでつなげていく」実践が大切です。
現場と経営層の“意識ギャップ”も埋める
中長期視点のサプライチェーン強靭化には、現場担当と意思決定層の共通理解・対話が不可欠です。
行政や専門家の第三者的立場をうまく活用することで、全社的な納得感を醸成しやすくなります。
まとめ:行政と地域を生かして次世代型バリューチェーンへ
「行政の支援制度」「地域ネットワーク」「デジタル」「人材育成」――。
いま製造業には、複数の切り口を有機的に“つなぐ力”が求められています。
サプライチェーン強靭化は、単なるリスク管理やコスト管理だけでなく、新たな地域産業エコシステムの創出――昭和から令和へ、持続発展し続ける”場”づくりの試金石となります。
自社だけでなく地域全体で発展していこうとする大胆な一歩を、行政の支援制度をフル活用しながら実践していきましょう。
そうした地道な取り組みが、これからの日本の製造業全体の競争力強化、ひいてはグローバルでの信頼向上につながるのです。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)