投稿日:2025年11月20日

スタートアップ協業で重要な“担当者の力量”を底上げする方法

スタートアップ協業で重要な“担当者の力量”を底上げする方法

製造業界は長らく“昭和のやり方”が支配してきましたが、現代はスタートアップとの協業が成長や競争力強化の重要な鍵となっています。
しかし、いざ現場でスタートアップと連携を進めようとしても、担当者の“力量不足”が壁となり、せっかくのチャンスを逃してしまうケースが後を絶ちません。
この記事では、20年以上製造現場で調達購買・生産管理・品質管理などを歴任し、工場長経験もある筆者が、“現場目線”で担当者のスキル底上げ方法を徹底解説します。

スタートアップ協業での担当者の力量=プロジェクト成功の鍵

多くの伝統的大手メーカーでは、新規技術や斬新なサービスに強いスタートアップと組むことで、事業の加速や新市場開拓を狙っています。
実際、AIやIoT、DX関連で先進スタートアップと手を組む事例は増えています。
しかし、その現場をよく観察すると「協業推進のボトルネックは担当者の経験不足・対応力不足」であることが多いのです。

なぜなら、製造業の多くは“型通り”“前例主義”のカルチャーが色濃く残っています。
スタートアップとの協業では「未知×スピード×柔軟性」が求められますが、現場担当者が“慣習の枠”から抜け出せないままプロジェクトを進めようとすると、せっかくの相乗効果が生まれず、プロジェクトが座礁することも珍しくありません。

現場でよくある協業失敗パターン

・決裁プロセスが遅く、スタートアップのスピード感についていけない
・リスクばかりを強調し、挑戦的な提案を潰してしまう
・担当者が「お客様気分」でスタートアップを“下請け”扱いしてしまう
・業務仕様書や要件定義の曖昧さが後になって大量の手戻りを発生させる

こうした失敗ケースの多くは、「担当者1人ひとりの力量不足」が根本原因です。

担当者の力量を「底上げ」する3つの視点

1. 型破りな“共感力”と“巻き込み力”を育てる

製造業の担当者は、合理的・論理的な説明力はあっても、「共感力」や「巻き込み力」を苦手とする傾向があります。
しかし、スタートアップ協業ではこれこそが成功のカギです。

現場で担当者に求められるのは
・スタートアップ側の“想い”や“独自の論理”を傾聴し、きちんと汲み取る力
・自社上層部や他部門のキーパーソンを巻き込み、プロジェクト全体で合意形成をリードする力
です。

「俺たちはこうだから」ではなく、「どうすれば一緒に成功できるか」をゼロベースで考え抜く“共創思考”ができる担当者が、これからは求められます。

2. 昭和的プロセスから脱却!高速PDCAサイクルを習慣化する

スタートアップと共創して価値を生むには、高速で仮説・検証をまわし続ける“実践力”が不可欠です。
従来のように「始める前に完璧な計画を!」ではなく、
1ヶ月後に結果が出なかったらすぐ軌道修正する
→失敗を責めずチャレンジと学習を評価する
そうした文化を、まず担当者自身が主導してつくり上げることが重要です。

現場担当者としては
・最初から100点満点を狙わず、まず“動いてみる”勇気
・動きながら自己検証し、修正し、次に活かす
・成功事例/失敗事例をオープンに展開して全体学習に昇華する
こうした姿勢を持つことで、“昭和アナログ型”から“令和ソリューション型”へ進化できます。

3. “バイヤーは選ばれる側”という意識醸成

調達・購買担当者には「サプライヤーを選ぶ」という“買い手優位”の自負が根強いものですが、今や優れたスタートアップは“選ばれる側”でもあるのです。

・自社と組みたいと思ってもらうにはどう振る舞うべきか
・スタートアップと「協力し合うパートナー」としての存在感を出せているか
・一方的な“御用聞きまたは命令”になっていないか

今後は「バイヤー力=“選ばれる力”」の時代です。
担当者一人ひとりがその意識を持つことで、お互いを高め合う真のパートナーシップが生まれます。

担当者レベルアップのための具体策

では、どのように担当者のスキル・マインドを底上げしていけるのでしょうか。

1. “フィールドワーク”で現場感覚を鍛える

現場主義を徹底してきた私の経験上、「現場を自分の目で見て肌で感じる場数」が、何よりの成長材料となります。
新しいスタートアップが持つ技術や課題を“現地に足を運んで聞きに行く”“実装現場で何が起きるか体感する”ことで、紙の上・会議室だけでは絶対に得られない実務肌感が培われます。

また社内でも、間接部門と製造現場・物流・営業部門など横断的な交流を積極的にはかることが、従来の“分断”から“共創”へマインドを変える第一歩となります。

2. 年齢・役職を超えた“逆メンター制度”を導入する

新卒社員や若手・女性・海外人材など、多様な視点を持ったメンバーを“逆メンター”として活用するのは、極めて効果的です。
昭和的なベテラン担当者も、彼ら新世代とディスカッションしたり、現場提案を一緒に検証したりすることで、今まで気づかなかった視点・気づきを得ることができるからです。

年功序列や縦割り主義は捨て、“年下上司からも学ぶ”カルチャーがスタートアップ協業型組織には必須です。

3. 外部イベントやワークショップ参加を推奨する

とにかく“外に出る”ことです。
他企業のスタートアップ協業事例を学ぶセミナー、異業種勉強会、リーンスタートアップ系のワークショップなど、外部コミュニティに担当者をどんどん派遣し、最新事例・失敗談・現場課題への気づきを得てもらうことは、地味ですが強力な底上げ施策です。

自分の会社・自分の担当領域だけに閉じこもっていては、これからの“協業バイヤー”にはなれません。

業界あるある:なぜ“人材教育”が進まないのか?現場目線で考える

ここまで理想論を述べてきましたが、実際「昭和から抜け出せない」「社内教育が進まない」と悩む現場担当者が多いのは事実です。
調達・購買や工場現場では
・人手不足と日々の“現場業務”優先
・教育は後手・OJT任せ
・変化への根強い“アレルギー”
こうした現実が横たわっています。

それでも、新たな飛躍のためには“現場の担当者”のレベルを引き上げるしかありません。
そのためには
・現場責任者自らが率先して行動する
・小さな成功例・変化を部門内で共有する
・「一度に全員」ではなく「少数精鋭」から変革をスタートさせる
といった“地に足の着いた変革”が現状打破の近道です。

まとめ:“人”の力が新しい協業の最強エンジンになる

製造業スタートアップ協業では、“技術や会社規模”だけでなく、「現場担当者1人ひとりの力量」が最終的な成否を握ります。

共感力・巻き込み力・高速PDCAの習慣・選ばれる意識――。
そして何より“現場主義”と“多視点の柔軟性”。
これらをセットで身につけられる担当者がいる組織こそ、新しい価値を創り出し、次の時代をリードできるでしょう。

昭和から令和へ――。
アナログに根ざした現場でも、「人材」「担当者育成」こそが最大の武器になります。

今こそ、皆さん自身も“変革の主役”として現場で一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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