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航空貨物の破損クレームを有利に進めるための受領時写真と記録の残し方

目次
はじめに:航空貨物の“破損クレーム”は他人事ではない
日本の製造業は、部品や製品を世界規模で頻繁に輸送しています。
近年はグローバルな分業が進み、航空貨物の利用が日常の一部となりました。
しかし、航空輸送には「破損リスク」が常につきまといます。
受け取った商品に破損があれば、速やかにクレーム手続きを行う必要がありますが、適切な証拠や記録が不足していたことによる“泣き寝入り”が、業界の深い闇の一つでもあります。
この記事では、実際の現場目線で「航空貨物の破損クレーム」を有利に進めるための写真と記録の残し方について徹底解説します。
また、昭和から抜け出しきれないアナログな現場が多い製造業界でも実践できる現実的なノウハウをお伝えします。
なぜ受領時の写真・記録が重要なのか?
航空貨物は“立証責任”が受領側にあることが多い
航空貨物の損害に関するクレームを申請する際、多くの場合「受領した時点で貨物が既に破損していた」ことを受領側(バイヤーや輸入者)が証明しなければなりません。
つまり、運送会社や航空会社に“やられてから”では立証が難しくなりがちです。
現物が最優先、次が“客観的な証拠”
貨物に破損があった場合、まず現物を確認し、できる限りそのままの状態を保持します。
しかし、現物自体は修復や再搬出などで動かされることが多いため、“客観的な証拠”としての写真や書類が最重要の役割を果たします。
クレーム対応の流れで“写真・記録”が生死を分ける
貨物被害の回復には、次の流れが非常に典型的です。
1. 貨物到着
2. 受領時検品
3. 破損の有無の確認
4. 受領書や運送状へのダメージ記載
5. 写真撮影と詳細記録
6. クレーム申請
この“2〜5”のプロセスが曖昧だと、クレーム対応が不利になり損害回収が難しくなってしまいます。
現場で有効な受領時写真・記録の実践手法
1. 荷姿(外観全体)の写真を必ず残す
貨物到着時、パレット梱包・カートンなど外観全体の写真を撮影します。
四方向・上から・側面など、複数ショットを確実に残しましょう。
ここで重要なのは「開梱する前に撮ること」です。
緊急で開梱検査を依頼される現場でも、まず1枚撮ってから作業を開始するクセ付けが重要です。
2. 下記ポイントも必ず押さえて写真に写す
・荷物の送り状(AWB)、送り主や受取人名が見える部分
・運送タグやシール(取り扱い注意、天地無用など)
・梱包の破損、へこみ、裂け目、濡れ、異臭などの異常部分
・破損物と、外装の傷の位置関係
・周辺の梱包状況や他の荷物との干渉がわかる引きの写真
写真には、必ず日付やタイムスタンプ機能を活用しましょう。
スマートフォンのカメラでも撮影できますし、現場専用のデジカメを常備している会社も多いです。
3. 記録ノートは「大袈裟なくらい細かく」
① 受領した担当者、立会者の名前
② 受領場所(通関場所、配送先の検品ヤードなど)
③ 受領日時(何時何分まで)
④ 気づいた外観ダメージの内容、状態
⑤ 荷物の封印(ラップ、バンド、シール)に異常があったか
⑥ 運送業者立会いの有無、担当者名
⑦ その他付随する伝票番号や航空便番号
これらを現場ノートやExcel台帳など、何でも良いので必ず記載します。
社内共有のルール化が極めて重要です。
昭和型・アナログ現場で実践するコツ
紙中心でも「現物主義」で証拠を残す
製造現場の多くは、デジタル化が遅れており“紙とハンコ”が根付いています。
だからこそ、写真はプリントアウトして一緒に案件ファイリングし、“荷受けNo”や“発生番号”とヒモ付けして管理します。
仕分け担当や課長のハンコをもらった記録台帳も役立ちます。
LINEやメールで「即座に写真共有」が今っぽい現場術
PCや社内ネットの利用が難しい現場では、グループLINEやメールで写真を即座に関係者へ共有しておくと、後々の証拠になります。
「◯月◯日、◯時、◯◯さんと一緒に確認」とテキストを添えると、経緯が明確になり有効です。
後日まとめやすく、トラブル回避の保険にもなります。
立会人(運送会社~社内担当者)を「できるだけ巻き込む」
業者やドライバーも立会った状況を記録して「第3者の証言」の効力を持たせます。
運送会社の担当者の名刺コピーやサイン入り受領書も有用です。
これにより“運送側も認識していた”事実を、強力な証拠として残すことができます。
どのような証拠が“決定打”になるのか
破損事故の「直結性」が示せるかが勝負
単に「壊れていました」だけでは弱く、以下の条件が満たされているとクレームが強くなります。
・輸送中以外で破損原因が考えられない
・外装箱(梱包材)に破損個所が明瞭に記録されている
・荷姿の異常が到着直後であることをタイムスタンプで示している
・周囲の荷物や積載状態が明らかになっている
・書面上でも「受領時に異常があった」旨の記載
また、AWB(航空運送状)には異常を受領時に必ず記載するのが鉄則です。
「DAMAGE RECEIVED」「CARTON CRUSHED」「WET」「STRAP BROKEN」など、英語表記で簡単にメモして運送側担当者にサインをしてもらうと、クレーム処理の武器になります。
現場バイヤー・サプライヤー視点で知っておきたいこと
バイヤーは“損失補填”だけでなく「社内評価」にも関わる
現場バイヤーにとって破損クレームの損失回収は、直接自社利益に影響します。
同時に、社内で「しっかりチェックしてトラブルを未然防止できているか」「スピーディかつ適切な対応ができるか」が“評価指標”となります。
サプライヤーは“バイヤーの苦労”を知ることで信頼向上へ
サプライヤー(供給側)は、納入後すぐの受領確認や、必要なら再出荷・保険請求の手続きが発生する可能性を認識しておく必要があります。
現場がどのような記録・証拠を求められているかを理解すれば、先回りしてアドバイスやサポートができ、取引先からの信頼が大きく高まります。
昭和から抜け出しきれない現場でも“じわじわ進む変革”
近年、ISOやIATFなどグローバル認証要件が厳しくなってきた背景もあり、アナログ主体だった現場にも「記録のデジタル化」「クレームフローの標準化」が波及しつつあります。
しかし、現場主義・実物主義が色濃く残り“人の目と手”で確認・記録する文化はすぐには変わりません。
だからこそ「写真」と「丁寧な記録」がこの業界では今なお最大の武器なのです。
まとめ:失敗した現場・成功した現場の“分かれ道”
航空貨物の破損クレームは、証拠を「残す」か「残さないか」で勝敗がほぼ決まる、非常にシビアな現場課題です。
特に昭和型のアナログな現場や、多忙な日々のなかでは“つい省略しがち”な工程ですが「おかしいと思った時点でカメラを向ける」「一言メモを残す」「立会人と握手する」――この習慣の有無が、数十万~数百万円の損失回収と信頼獲得の大きな違いを生みます。
今後も物流環境の変化とともに現場バイヤーやサプライヤーの役割は拡大しています。
時代を超えて通用する“現物主義”と“確かな証拠主義”を武器に、ぜひ貴社の現場力と交渉力を高めてください。
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