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アパレル工場での生産性指標(稼働率・生産性・歩留まり)の見方

目次
アパレル工場における生産性指標とは
アパレル業界は、依然として昭和的なアナログ管理が色濃く残る一方で、グローバル化や多品種小ロット生産への対応など、目まぐるしい変化を強いられています。
このような時代において、工場現場の「生産性」をどう評価し、どのように競争力強化につなげるかは、経営層だけでなく調達購買担当者、現場管理者、サプライヤー企業すべてにとって最重要課題です。
本記事では、アパレル工場でよく使われる生産性指標である「稼働率」「生産性(ラインバランス含む)」「歩留まり」の基本的な理解から、現場目線で実際どう使いこなすべきか、業界動向を踏まえた課題について解説します。
稼働率の定義と現場での実状
稼働率とは何か
稼働率とは、設備および人員が生産活動に使用された時間の割合を示す指標です。
たとえば、ミシンを8時間稼働できるはずが、実際には6時間しか稼働していなければ、稼働率は6÷8=75%となります。
アパレル工場ではこの稼働率が低いことが利益率の悪化や納期遅延の主因となっているケースが少なくありません。
アパレル工場特有の課題
多品種小ロットの製品を扱うアパレル工場では、段取り替えや原反・付属品待ちなどによる「隠れロス」が多発し、稼働率が上がりきらない現場が多いです。
しかも「何となくラインが動いているから稼働している」という錯覚に陥りがちで、正確な実稼働率を把握できていない工場が大半です。
さらに、昭和的な手作業のラインも多く<生産日報>は紙記録だったりして、データが即時に活かしきれない構造上の問題も根強く残っています。
稼働率を改善するには
稼働率向上の本質は“止めない現場づくり”に尽きます。
そのためには「段取り時間の短縮」「原材料・部材の供給ロスの低減」「定時点検の徹底」など、地道なロス削減活動が肝心です。
手書き日報・口頭伝達というアナログ文化でも、「いつ・どこで・なぜ」止まったのか、事実を振り返ることが最初の一歩。
予算が許せば現場IoTやタクトタイマーによるデジタル可視化も有効です。
生産性(ラインバランス)の考え方
基本の生産性指標
生産性とは「得られた成果(アウトプット)」を「投入したリソース(インプット)」で割った値です。アパレル現場で言えば、「製品や部品の出来高」を「稼働時間」「作業人数」「設備数」などで割る形が一般的です。
たとえば
・ライン1時間あたり○枚生産できたか
・一人一日あたり何着縫製できたか
などの指標が実用されています。
ラインバランスの重要性
洋服製造は、裁断-縫製-仕上げ-検品…など多段階工程を持ちます。
このとき、どこかの工程だけがボトルネックになって他工程が手待ちになると、“ライン全体の生産性”が劇的に落ちます。
昭和アナログ管理では、「どこかで詰まったら現場が頑張る」「ベテラン職人が穴埋め」といった“属人化”が、現場力の美徳のように見なされてきました。
しかし、今や多様な人材を最大限活かすためには、「全工程のタクトタイム均一化」といった客観的なラインバランス調整が不可欠です。
生産性指標の可視化と働き方改革
ピッチ管理表や工数グラフを使い、各工程の「作業時間」を見える化する。
ボトルネック解消のため人材シフトや工程統廃合の提案をする。
こうした活動が働き方改革や生産現場のDX推進にも直結します。
また、ベトナムや中国など海外縫製工場では、レイティング(作業標準時間管理)を徹底している事例が増えていますが、日本企業の現場はいまだに「職人によるナレッジ」に依存しているところが多いです。
ここにメスを入れることこそ、本当の意味での生産性向上と品質安定化につながります。
歩留まりの意味とアパレル現場の特徴
歩留まりとは
歩留まりとは、「投入した原材料のうち、最終的な製品として有効活用できた比率」を表す指標です。
アパレル業界では「生地の使用効率」や「製品不良率」と関連し、原価率・利益率に直結します。
たとえば10mの生地から実際に7着分が問題なく製造できれば、歩留まりは高い。逆に裁断ミスや汚損・不良などで使えない箇所が多ければ、歩留まりは低下します。
歩留まり向上のカギはどこにあるか
アパレル工場の場合、“裁断工程”“プリント・刺しゅう工程”で大きなロスが発生しやすいです。
ここで以下を徹底管理すると、大きな効果があります。
・裁断レイアウト(マーキング)最適化
・必要最小限の副資材配送
・工程内不良の即時検知~フィードバック
一見地味ですが、不良やロスが“どこで・なぜ”発生したかを把握し、工程ごとやアイテムごとに歩留まりを計測・比較する習慣が非常に重要です。
アナログ現場でもできる歩留まり改善の工夫
実際、まだ「手作業裁断・ヒト目検品・原材料記録を紙で管理」が根付く工場でも、以下のような取り組みで成果を出した事例があります。
・朝礼で、前日の歩留まり/不良率を皆で確認し、現場改善テーマにする
・「カットロス」や「返品率」が高い型番を見える化し、検証を促す
・工程を観察して、ムダ取り(手順見直し・冗長な移動の削減)に挑戦
もちろん、歩留まりロスを「仕方ないもの」と棚上げせず、日々の意識付けを習慣化することが継続改善を生みます。
サプライチェーン全体での生産性指標の使い方
調達購買・バイヤーが現場指標を押さえる狙い
バイヤー担当者や調達部門の方こそ、サプライヤー各工場の「本当の生産性」を客観的に把握する視点が不可欠です。
なぜなら、
・稼働率が悪い=納期遅延リスク大
・生産性が低い=価格交渉に難あり
・歩留まりが悪い=品質トラブルや原価高騰要因
となるためです。
「生地が遅れても頑張れば納期通りに仕上げます!」という伝統的現場力にだけ頼っていると、結局“火消し型対応”になりやすいのです。
調達購買側は、各サプライヤーの生産能力やボトルネック工程、材料消費率も含めて議論ができるよう情報収集すると、調達先との関係もより戦略的になります。
サプライヤーにこそ、生産性改善眼が求められる
サプライヤー企業も、現場管理・工程責任者まかせでなく、自社の生産性や歩留まりを定量データで説明できるよう準備してください。
これが最終的には価格競争力や受注・継続取引の武器となります。
令和時代のアパレル工場に求められる「現場データ」の意義
デジタル化やIoT導入ばかりがクローズアップされがちですが、アナログ現場でこそ真価を発揮する改善活動は地道な「現場観察」「データの顧み」「気づいた人から動く」マインドです。
稼働率・生産性・歩留まりという3大指標は、経営数字だけでなく現場改善の“共通言語”となります。
これを徹底することが、
・品質と効率を両立した生産体制づくり
・働き方改革による多様な人材活用
・調達・サプライヤー関係の健全化
につながります。
今まさにアパレル工場に求められるのは“昭和のままの現場主義”にこだわるのではなく、「根拠ある数字を武器にした改善力」。これが未来のコスト競争力に直結します。
まとめ
アパレル工場における「稼働率」「生産性」「歩留まり」は、単なる数字管理ではなく、「現場力の見える化」「ボトルネックの特定」「継続的な改善活動と成長」のための羅針盤です。
バイヤー・購買担当者、そしてサプライヤーの皆様も、こうした指標を正しく押さえ、昭和の“根性論”から脱却しましょう。
令和時代の競争力を手に入れるには、現場目線と数字感覚の“二刀流”が不可欠です。今日から現場改善に踏み出していただき、製造業界ひいては日本のアパレルものづくりの発展につなげましょう。
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