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相見積の提示の仕方を工夫し本命サプライヤから実勢価格を引き出す方法

目次
はじめに
購買・調達担当者の皆さんにとって、相見積の取り扱いは日常業務の一つです。
しかし、「ただ見積を集めて比べる」だけでは、なかなか本命サプライヤから本音の実勢価格を引き出すことはできません。
本記事では製造業現場で培ったノウハウを軸に、業界の“昭和的慣習”を乗り越え、サプライヤとの信頼を損なわずに、最大限の競争力ある価格を獲得する実践的な相見積の提示方法を解説します。
相見積の本質と業界の現実
相見積の“建前”と“本音”
相見積は「市場原理を活かし、最適な条件で調達するための手段」と言われています。
しかし現場の実態では、「とりあえず取引継続のために形だけ参加」「すでに本命が決まっている」のが多いのも事実です。
昭和の時代から、商習慣として“見せ球”サプライヤ、すなわち価格交渉の引き立て役としての見積依頼も少なくありません。
本命サプライヤの“防御本能”
サプライヤ側も、調達部門の「値下げ圧力」や「カモにされる危険性」を敏感に察知しています。
本命と分かれば尚更「足元を見られるのでは」と、本当に出せる底値価格や提案を控える傾向が強くなります。
こうした背景を理解せずに「とにかく安く!」と迫るのは逆効果です。
なぜ実勢価格が引き出せないのか
調達サイドの「透明性の欠如」
– サプライヤからしてみれば、相見積の位置付けや意図が見えづらいまま価格提出を求められると、「本当に公平に検討されているのか」と疑念を持ちます。
– 「絶対に受注したい」と思わせる材料が伝わらなければ、本腰を入れた見積回答は得られません。
真のモチベーションを引き出す仕組み不足
– どんなにローカルベンダーであっても、「この案件は譲れない」「こことはパートナーシップを深めたい」と思わせるストーリーがなければ、彼らも本気の価格・提案を出すリスクを取りません。
本命サプライヤから実勢価格を引き出す7つの工夫
1. 相見積の「透明性」と「意義」を必ず伝える
ただ「他社見積も取っています」と言うだけでは不信感をあおるだけです。
– 本命サプライヤには“なぜ相見積なのか”その理由を正直に伝えましょう。
– 「価格競争力のベンチマークを取りたい」「技術的に最適な提案を広くもらいたい」など、背景や狙い、期待する役割を明確にすることが肝心です。
2. 本命サプライヤの強み・期待点を明文化する
「貴社の技術Aには期待している」「納期対応力では圧倒的信頼がある」といった具体的なアドバンテージを伝えましょう。
特に「ここが競争相手にない貴社の強み」と伝えると、サプライヤは“勝てるフィールド”を意識して主体的な提案姿勢に変わります。
3. 数字だけ重視しない、提案競争で差別化を促す
昭和的な調達では「最安値=正義」でした。
しかし今は、納期短縮、品質保証、柔軟なカスタマイズ対応、海外展開サポートなど、“値段以外の価値”が企業競争力を左右します。
見積依頼の際、コストだけでなく「どうやれば課題解決につながるか」を投げかけます。
そうすることで「価格だけではなく全体満足度で判断する」ことを暗黙に伝えられます。
4. オープン性のある見積フォーマットと基準を設ける
提示条件を明確にし、すべてのサプライヤへ同じフォーム、基準で依頼しましょう。
「提示条件が不明確だからリスク込みで高めに出す」――この悪循環を断ち切ることで、より本音の価格を引き出せます。
5. “信頼を損なわない”フィードバックとクロージング
「受注できなかった際も丁重なフィードバック」を心掛けてください。
単なる価格勝負の引き立て役に終わったと思われては、次回から本気の提案や協力は得られません。
具体的な評価点や“あと一歩”の部分を共有することで、本命サプライヤとの関係が深化し、中長期でお互いが“本音”を出しやすい関係性を育てられます。
6. バイヤー側の“製品知識”と“現場理解”を見せる
「どうせ机上の安値交渉」と見られないよう、現場マターや製造工程、原価構造など現実的な会話ができる準備をしておきましょう。
鋭い質問や妥当性のある指摘(例:「材料費の高騰影響は?」)が交わされると、サプライヤ側も「あ、ちゃんと見ているな」と認識し信頼が増します。
7. “見せ球サプライヤ”も尊重することで自ずと本音が引き出せる
一見“引き立て役”のサプライヤも、将来的に大きなパートナーになる可能性を秘めています。
公平なプロセスと誠意ある対応を貫くことで、本命サプライヤへのプレッシャーも自然と高まり、より現実に即した価格形成が進みます。
業界動向:「相見積ありき」に未来はあるのか?
デジタル化・自動化時代の新しい“相見積”の意味
IoTやAI、RFQ自動化の進展により、これからは各サプライヤの見積だけを比較する単純作業は減っていきます。
「何にいくらかかるのか」をAIでシミュレーションし、事前に原価ベンチマークも取れる時代です。
その中で求められる調達担当者は、相見積のデータだけでなく、「なぜこの価格なのか」「どこに価値を置くか」を深掘りし、サプライヤと“共創する”タイプです。
本当のスマート購買=協奏と競争のバランス
昭和的な「買い叩き文化」から、「バリューを共に作るパートナーシップ」へ。
本命サプライヤにも「なぜ貴社を大切にしたいか」を語り、「ただの調達→戦略的パートナーシップ」へ進化するバイヤーが求められます。
競争=値引きではなく、競争=新しい提案・付加価値の競い合い、という発想の転換が現場に強く求められています。
まとめ:適正な価格は“本音の対話”でしか生まれない
安さだけを追い求める時代は終わりました。
相見積も従来の儀式的な“値下げツール”から、「本音の対話と信頼関係をベースに、真に最適な価格と提案を引き出す舞台」へ進化しています。
サプライヤとの健全な緊張感と、温かいコミュニケーションの両立が、次の製造業の成長ドライバーとなるでしょう。
バイヤーの皆さんは、業界慣習の“昭和的呪縛”から一歩抜け出し、現場知や人間味を生かした新しい相見積の進め方を意識してみてください。
サプライヤの立場を理解し、「一緒に新しい相場観・ビジネスモデルを作る」――そんな攻めの姿勢が、お互いにとって最良の価格・条件を引き出す近道です。
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