- お役立ち記事
- 現場の要望を一枚に集約するDX提案シートの書き方
現場の要望を一枚に集約するDX提案シートの書き方

目次
はじめに 〜なぜ今、「DX提案シート」が必要なのか〜
製造業の現場では、日々多くの課題が浮かび上がります。
設備の老朽化、納期短縮要求、人手不足の深刻化、そしてDX(デジタルトランスフォーメーション)推進への圧力――これらの現場課題は、一つひとつが重くのしかかります。
ところが、現場の要望は生のままだと断片的で、経営層や外部パートナー、ITベンダーに正確に伝わらないことがよくあります。
この「意思疎通の壁」を突破するために、私は現場目線で現実的な「DX提案シート」の重要性を痛感しています。
本記事では、20年以上の現場経験を基にして、昭和のアナログ文化が根強い製造業でも活用できる、実践的な「DX提案シート」の書き方を解説します。
バイヤーや購買担当者、サプライヤーの皆さま、また現場のリーダー層にも役立つ内容となっています。
DX提案シートとは何か? 現場と経営、サプライヤーをつなぐ道具
曖昧な要望が招く失敗事例
「現状の作業を自動化したい」
「ペーパーレス化したい」
「もっと効率化できるツールが欲しい」
現場から挙がる要望は、たいていこのように抽象的です。
このまま上長に上申したり、サプライヤーにRFP(提案依頼書)として渡したりしても、「何をどう改善すべきか」がぼやけ、曖昧な提案や過剰投資に陥りがちです。
なぜ“1枚”にまとめるのか?
「簡潔にまとめ切る」ことで、全員が日常業務の合間でもパッと理解でき、各部門・経営層への説明やレビューもスムーズになります。
特に紙文化や根回し文化が根強い現場ほど、“1枚もの”は合意形成の武器になります。
DX提案シートの基本構成
DX提案シートに絶対に盛り込みたい6つの項目
- 課題・現状の把握
- 理想像・目標状態の定義
- 改善対象の業務・範囲の特定
- 求める機能・要件の整理
- 現場が考える導入効果(定量・定性)
- 現象に基づく裏付けデータ・現場証拠
この骨組みをA3用紙1枚か、パワポ1スライドで完結するようにまとめていきます。
1. 課題・現状の把握 〜“生”の現場データを重視〜
安易に「業務が大変」「負荷が高い」と記述しがちですが、これだけでは説得力に欠けます。
- どの工程で、どんな無駄(例:歩行・待ち時間・データ転記)が発生しているのか
- 頻度や時間、影響範囲(例:月50時間、2名分の残業)
- 属人的な作業やベテラン頼みの実態
など、現場観察や現場データを基に、写真・作業フロー・数値を盛り込むことでリアリティが増します。
たとえば、
「検査結果を手書き→Excel転記→印刷→上長押印→PDF化→メール送信 までに1ロット10分以上を要する。日次30ロットで5時間分(2名)を消費している。」
このレベルまで具体化することで、現場の切実さが伝わります。
2. 理想像・目標状態の定義
現状から「どうなれば嬉しいのか」を定義します。
これは、単なる自動化やシステム化だけではなく、
・人為的なミスゼロ
・即時でデータ集計・可視化
・設備停止時のアラート自動通知
など、現場側が「ありたい姿」を具体的に書くことが重要です。
併せてKPI設定(例:「転記時間ゼロ化」「作業標準化率95%」)ができれば、提案後の定着検証にも役立ちます。
3. 改善対象の業務・範囲を特定する
製造現場の多くは、多重工程と多重管理で構成されています。
全部を一度にDXで刷新するとコスト・混乱が極大化します。
そこで、まず
「今回の対象業務・ライン・担当者」
「関連する上流・下流工程はどこまで?」
「管理部門、現場、生産技術部門など関与範囲は?」
を線引きし、“小さく始めて早く回す”スコープを提示しましょう。
できれば運用フローの図解を入れて、「ここをこう変えたい」というイメージの統一を図ると、外部サプライヤーにもイメージが伝わりやすくなります。
4. 求める機能・要件の整理〜「現場あるある」な導入失敗防止策〜
意外と落とし穴なのが、「きちんとした要件定義」の不足です。
「こういう機能があれば助かる」「この帳票は絶対に外せない」「現場ネットワークは有線限定」など、現場目線とITベンダー目線のすり合わせを前提とします。
例えば、
・非ITユーザーにも直感的なUI
・現行手順から大幅なオペレーション変更が生じない
・現場での運転中でもデータ障害が生じない
・規格・法規制(FDA、ISO等)をクリア
などの条件は、事前共有が極めて重要です。
5. 現場が考える導入効果と期待値
ROI(投資対効果)や業務効率指標など、定量的な効果は図表化したいところです。
一方、「現場負荷・心理的負担の低減」「事故・異常対応力の向上」など定性的なメリットも必ず記入しましょう。
例:
「作業時間50%短縮、人的ミス激減」「突発設備停止時の早期対応」「若手育成のスピードアップ」
期待効果をあらかじめ宣言することで、その後の効果検証や追加改善サイクル(PDCA)にも連動しやすくなります。
6. 現象に基づく裏付けデータや証拠の添付
現場が粘り強く記録した「手書き作業ログ」や、「改善前後の動画・写真」「帳票サンプル」など、裏付けとなる現場証拠を添付することで、取引先や経営層にインパクトを与えます。
口頭説明や数値だけでなく、目で見える情報を根拠として揃えることが、「現場の声」を丸ごと伝える最短ルートとなります。
“昭和のアナログ業界”でも成功するDX提案シート活用術
現場リーダー・班長の巻き込み方
いきなり「DXだ!」と叫んでも、現場はなかなか動きません。
リーダーや班長レベルで「現場共感」を得るには、小さな定量データや動画撮影、5分間の現場ヒアリングなど、“着実な事実収集”と“小さな成功体験の積み上げ”が近道です。
調達購買・サプライヤーに求められる視点
バイヤーや外部サプライヤー側は、DX提案シートを「現場課題の本質を見抜くパスポート」として活用しましょう。
安易なパッケージ提案よりも、実際の課題に寄り添うオーダーメイド思考で“現場目線”に立ち返り、提案の質を高めていくことが長期的な信頼につながります。
【実践例】A社工場のDX提案シート事例
—
課題:
「設備停止時の原因報告が紙台帳記載のみ。時系列で集計できず、真因分析に数日かかる」
—
目標:
「自動で停止データが履歴化。現場パネルの2操作で報告完了、管理側はリアルタイム一覧確認」
—
改善範囲:
「成形ライン5部門」「作業員25名」「既存SCADAとの連動」
—
要件:
・既存HMIのボタン・警報とデータ連携
・記録漏れ時のリマインド
・多拠点展開可能な拡張性
—
効果:
「分析時間が1日→15分に短縮、現場作業量が週15時間削減」
—
現場証拠:
「手書き台帳写真」「Excel集計結果」「現場作業のビフォー&アフター動画」
—
このように「課題発見→現場証拠→実装イメージ→効果定量化」の流れが一本筋になっていることがポイントです。
まとめ:DX提案シートで“現場の痛み”を本気で可視化し、動かせ
昭和から続くアナログ文化が残る日本の製造業現場こそ、現場事実の集約・整理、そして「それを誰にでも直感的に伝えられる見える化」が必須です。
DX提案シートは、そのための「現場の声を経営やサプライヤーに届ける突破口」となります。
煩雑なレポートにせず、A3用紙1枚にこだわり抜き、シンプルな言葉・写真・データでまとめてみてください。
現場・調達・サプライヤーの立場に関係なく、いずれも「何のためにDXを導入するのか」の原点に立ち戻ることが、これからの日本製造業DXの命運を握る鍵となると私は確信しています。
あなたも、まずは「現場の痛み」「現場の真実」に向き合う1枚のDX提案シート作成から、変革の一歩を踏み出してみてください。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)