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手戻りを起こさない要求仕様の書き方と品質向上策

目次
はじめに:製造業における「手戻り」の本質
製造業に勤める多くの方が、手戻り作業に頭を悩ませているはずです。
生産工程のどこかで不具合や仕様漏れが発覚し、工程を巻き戻すことで時間もコストも失われます。
この「手戻り」は、単なる現場作業者のミスとして片付けられるものではありません。
実際には、調達・設計・生産・品証に至る全てのプロセスで、要求仕様の不明瞭さや認識のズレによって発生しているケースが大半です。
この記事では、20年以上の現場経験をもとに、アナログ文化が根強い製造業でも実践できる “手戻りを起こさない要求仕様の書き方” と、品質向上の具体的な施策を、現場ならではの視点から徹底解説します。
バイヤー、サプライヤーの双方に役立つ情報も多数盛り込んでいます。
なぜ、仕様の曖昧さが手戻りを生むのか
手戻りの主因は「認識ズレ」
どれほど熟練したオペレーターや設計者が揃っていても、手戻りゼロは実現不可能です。
特に多くの製造業現場では「言わなくても分かる」「いつものやり方で」「経験則で…」といった暗黙知に頼りがちです。
結果、設計者・バイヤー・現場・サプライヤーの間で“何をどう作るか”の認識にズレが生まれてしまいます。
そのズレが原因で
– 仕様と異なる部品・製品が納入された
– 過剰な品質要求でコスト増
– 使用目的と合致しない材料・工程選定
などが発生し、重大な手戻りを招くのです。
高齢化・人材不足が問題を深刻化
昭和・平成から続く「ベテランの現場力に依存するアナログ構造」は、今や現場の高齢化や人手不足で崩れつつあります。
技能伝承が進まないにも関わらず、要求仕様は口頭伝達やFAXによる手書きのまま。
これでは新しい世代にも正確に意図が伝わらず、ますます手戻りリスクが高まる一方です。
手戻りのない要求仕様:絶対に押さえたい5つのポイント
1. “誰が読んでも同じ結論になる” 書き方を意識する
納入仕様書や図面記載のコメントは、必ず読み手が「解釈を間違えない」表現にしましょう。
「特に指示がない限り、付属品は同等品可」や、「外観品質は目視でNGとなる欠陥のみ対象」など、あいまいな点は全て明文化します。
バイヤー・サプライヤー双方の新人にもすぐ理解できるよう、冗長でも構いません。
2. 「前提条件」「適用範囲」を必ず明記する
全体仕様か一部仕様か、従来品/新設計品どちらに適用か、使用環境・納品先など条件ごとに切り分け、冒頭で明記します。
例えば「屋外使用を前提とした場合の防水グレード」など、使う目的に応じて必要十分な仕様を決めておきます。
3. 定量化・共通単位化を徹底する
「できるだけ」「なるべく」などの主観表現、「A社の標準工程厳守」など曖昧な指定はNGです。
寸法や公差、強度、温度といった数値を必ず明示。
材料の規格もJIS規格番号や型番により共通理解を図ります。
これにより、どこの工場・どのサプライヤーが見ても“同じ品質”が再現可能です。
4. チェックポイント・検査方法まで盛り込む
出荷検査の方法(全数目視・抜き取り・外観/寸法/機能…)や判定基準も必ず盛り込みます。
現場の混乱を回避するため「△△検査は納品前までにメーカーが実施、判定結果は検査報告書にて添付すること」のようにプロセスごとに指示しましょう。
5. イレギュラー・緊急対応ルールも明文化する
納期遅延時や代替部品採用時、緊急連絡の窓口や決裁フローなど、「もしものとき」の対応策や判断基準も仕様書に加えておきます。
これにより、手戻り発生時のダメージを最小限にできます。
バイヤー・サプライヤー目線で考える「要求仕様」の重要性
バイヤーは「守れない要求」を出していないか?
多くのバイヤーは、自社都合や顧客への“やり過ぎ要求”をそのままサプライヤーに押し付けがちです。
その結果、本質から外れたコスト増や工程複雑化を招き、品質よりも「全員大変」な状況が発生します。
そのため、バイヤーは
– なぜその仕様が必要か(Why)
– 本当に守るべき最重要ポイントは何か
– 「QCD(品質・コスト・納期)」どこを優先すべきか
といった根本を整理し、相手に求める“譲れないポイント”をシンプルに伝えることが重要です。
サプライヤーは「言われた通り」だけでなく目的を読み取る
一方、サプライヤー側も「図面通り・仕様通り」一辺倒では手戻りを防げません。
例えば、新規品で明らかに納期短縮を意図している時は、「現状の工程だと最短何日後か」だけでなく、「なぜここまで急ぐのか?代替案は?」と背景に立ち返り、バイヤーに提案する柔軟性が不可欠です。
また、過剰品質・過剰な工程抜けの危険など、自ら“品質の番人”となり指摘・改善を働きかけるべきです。
業界のアナログ慣習を打破する要求仕様管理のアイデア
1. 「要求仕様レビュー会議」の定例化・第三者チェック
現場とオフィス、設計・バイヤー・品証・生産…など部門横断で要求書をレビューし、抜けや漏れを徹底的に洗い出しましょう。
可能であればローテーションで他部署のメンバーも参加し「なぜこの仕様が必要なのか?」と疑問を多角的に投げかけれる運用がおすすめです。
2. 要求仕様テンプレート・用語標準の採用
口頭やメール、FAX、さまざまなフォーマットで交わされる仕様書を、各部門共通のテンプレート・用語集で一本化します。
たとえば「NGワード集(例:“たぶん”“できるだけ”“20μ前後”など)」を設け、「ルール化された書き方」への意識づけが習慣化すれば、手戻り発生率は劇的に下がります。
3. DX(デジタル化)推進で履歴・トレーサビリティ強化
従来のエクセル・紙・メール添付から、クラウド管理や要求仕様管理システムへの移行も検討しましょう。
誰が・いつ・どの内容を・どんな合意で策定・変更したか、すべて履歴を共有しやすくなります。
サプライヤーもオンライン上で最新版仕様を即時参照でき、認識ズレが段違いに減ります。
要求仕様を書く人・運用する人が意識すべき「対話」と「巻き込み力」
「最初に時間をかける」ことが最大の時短に
手戻りゼロ=最初の要求仕様を完璧に書くこと、と誤解する人も多いですが、完璧を目指して100時間も1ヶ月もかけてはいけません。
重要なのは「初期段階で現場・サプライヤー・営業・企画…全関係者を巻き込み、目的と最短ゴール像を合意する」そのプロセスです。
たとえば3時間の対話で皆の目線が合えば、後の1ヶ月・数百万円単位のロスを防げます。
逆に「とりあえず仕様を回して、後は現場で合わせよう」と走ると、数倍の手戻りが起こります。
意見が合わない=品質向上の最初のサイン
会議や商談の場で「そこは違うのでは?」と意見が分かれることを“面倒”と思ってはいけません。
むしろ、この段階で認識ズレに気付き是正できる現場は、手戻りが起こる前に強力な品質壁を立てられる理想的な状態です。
まとめ:現場を知っている人だからこそできる、実践的な「要求仕様力」
昭和・平成以来のアナログ業界でも、「手戻りを起こさない仕様」を書くためには、
– 曖昧さゼロ&定量化
– 目的・背景の合意
– デジタル化・共通化
– 利害関係者との巻き込み・徹底対話
が最重要です。
単に「現場のミス」や「設計の書き漏らし」と捉えるのではなく、全体工程における“コミュニケーションと仕組み作りの問題”と位置づけましょう。
現場の経験者として、誰もが「要求仕様を制する者が品質もビジネスも制する」——この意識で日々の業務に臨んでいただければ、手戻りを最小限に、そして品質を最大化する新たな地平が必ず拓けるはずです。
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