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ソフトウエア開発文章の難しさと記述ポイント要求仕様書における文章の書き方

目次
はじめに:ソフトウエア開発における文章の重要性
製造業は今、ソフトウエアによる自動化と効率化が急速に進展しています。
生産管理システム、品質管理システム、IoT対応の機器といった現場の「仕組み」においても、ソフトウエア開発は欠かせない要素となりました。
そのなかでも「要求仕様書」(あるいは要件定義書、仕様書とも呼ばれます)の役割は極めて大きいです。
これは単なる技術資料ではなく、バイヤーとサプライヤー、開発現場と経営層、現場作業員とエンジニアなど、あらゆる関係者の目線をつなげるコミュニケーション文書に他なりません。
しかし、ソフトウエア開発に関する文章を「分かりやすく」「誤解なく」「実行力のある形」で作成することは、実は非常に難しい作業です。
昭和時代から続くアナログ文化が色濃く残る製造業の現場ではなおさら、文章で要件と期待像を正確に伝えることの重要性は増しています。
本記事では、製造現場や調達・購買目線からみた「ソフトウエア開発文章」の書き方と、実践的なポイントを解説します。
なぜソフトウエア開発文章は難しいのか
1. 共通認識のズレが生まれやすい
工場現場とIT部門、あるいは調達部門とサプライヤーでは、使う言葉や常識、優先すべき価値観が大きく異なっています。
システム開発の「要求事項」を現場目線で伝えたつもりでも、IT担当やベンダーは「どう解釈してよいか分からない」「どの粒度で実装すれば良いか曖昧だ」と感じやすいのが現実です。
たとえば、
– 「作業の見える化をしたい」
– 「進捗状況が一目で分かるように」
といった漠然とした要求が記述されるケースが多く、そのままでは要件が抜け落ちたり、意図と違うシステムができてしまいがちです。
2. アナログ慣習が根強く残っている
昭和からの現場では口頭・手書き文化が主流で、必要に応じて修正・補完するという「あうんの呼吸」に頼りがちでした。
しかし、ソフトウエア開発では文書化されていない事項は「全て無いもの」と見なされます。
思い込みや慣例に頼れないため、文章化の習慣がない現場ほど、この壁が大きいのです。
3. 専門用語・業界用語が障壁となる
一方で、ITエンジニアはソフトウエア用語や開発工程の知識には長けていますが、多くの場合、工場現場や製造の「暗黙知」に精通していません。
逆に現場サイドも、ITパッケージや標準化用語を十分理解していないケースが多いです。
そのため、業界用語や略語、カタカナ語などの「壁」は想像以上に高いものです。
現場とIT開発の乖離を埋めるには
1. 利用者目線と実装目線を両立する
要求仕様書のコツは
– 「現場でどう使うか」
– 「システム上どう実装するか」
の2軸を意識して記述することです。
たとえば、
「工程Xでは、部品Yの検査結果をリアルタイムで登録し、管理担当者が即時に確認できるようにする」
という文にすると、「誰がどのタイミングでどんな操作をするのか」が明確になり、現場の期待する動きが伝わります。
2. 具体的な事例やシナリオを盛り込む
文章だけでは現実感が乏しくなりがちです。
「どんな時に、誰が、なぜ、その機能/動作が必要になるのか」という一連の流れ(ユースケース)や現場で起きがちな“困りごと”を具体的に交えて記載することが効果的です。
例えば、
– 「受入検査で発見された不具合情報は、その場でシステムに入力しなければ翌日の会議まで現場全体に共有されていない」
– 「棚卸し作業で数量を都度確認する手間を減らしたいので、一括インポート機能が必須」
など、「なぜそれが必要か」「直近でどんなトラブルがあったか」などの“背景”を明記しましょう。
3. 曖昧な表現を避ける
– 「なるべく」「できる限り」「状況に応じて」「効率よく」
こうした曖昧表現は、受け止め方に大きな差が生じます。
実装時には“仕様の抜け・誤解”の温床となり、現場とエンジニアの「言った/言わない」問題が多発します。
可能な限り具体的な数値、要件レベル、発生頻度などをセットで記載しましょう。
例
NG:「棚卸作業を効率よくサポートする」
OK:「棚卸作業時、1台当たりの入力時間が現在の平均10分から3分以内となることを目指す」
良い要求仕様書に共通する記述ポイント
1. “誰にとっての何のための”開発かを明確にする
① 対象ユーザーを特定する
(例:製造現場作業員、品質管理部メンバー、購買担当者 など)
② 目的・課題を具体的に書く
(例:手入力ミスの削減によるトレーサビリティ向上、不良品発生源の可視化・迅速な是正 など)
③ 使って起きる変化、実現できる効果へ言及
(例:残業時間が減る、不具合情報の共有スピードが倍増 など)
2. 操作・機能の粒度をそろえる
要求仕様書は
– “操作単位”
– “処理単位”
– “画面・帳票単位”
で粒度がバラバラになると、後工程(画面設計、試験設計)での抜け・重複など不整合が発生しやすくなります。
「ユーザーが行う操作」ごとに大項目→中項目→詳細項目、とアウトラインをつくったうえで記述しましょう。
3. 例外・エラー時の動作も記載する
現場では必ず想定外のケースが発生しがちです。
– 登録データの不整合
– 入力ミス
– 通信切断
といった場面で、どんなアラートやエラーメッセージを表示するか、リカバリー方法はどうするかを明示します。
ここを省略すると、現場で「使えないシステム」「想定外のトラブルに弱い仕組み」になりやすいです。
4. 非機能要件も抜けなく記載
– レスポンス速度(例:主要画面表示は3秒以内)
– バックアップの頻度・手段
– セキュリティ要件(アクセス権限、操作ログ)
– 変更履歴の管理
など、“現場の当たり前”がシステムでは省略されがちなため、必ず盛り込みましょう。
アナログ文化からの脱却に必要な視点
1. “形式よりも中身”を重視する
多くの製造現場では「フォーマットに○○を書きなさい」と形式重視の文化が残っています。
しかし、本質は「社内外の誰が見ても誤解がない」「現場で本当に使えるシステムを作る」ための文章であることです。
必要に応じてフォーマットをカスタマイズし、現実の運用・人材レベルに合わせる柔軟さも大事です。
2. “引き算”思考で本当に重要な要件に集中する
「なんとなく全部載せ」で即席的に箇条書きするのではなく、現場の困りごと/改善効果に直結する要件に絞りましょう。
“Nice to have(あれば便利)”と“Must have(絶対必要)”とを整理し、優先順位を明記することで、システム規模や開発予算の無駄膨れを防ぎます。
3. “現場の声”に耳を傾け続ける
一度要求仕様書を書いたら終わり――ではありません。
現場で使いながら「ここが微妙」「この操作が意外と面倒」といった生の意見を集め、改善のための“アップデート”を続ける仕組みが製造業の発展に不可欠です。
そのため要求仕様書のなかに「定期的なレビュー・改善計画」も織り込むことが理想です。
まとめ:現場目線の文章が未来を動かす
ソフトウエア開発の成否は、「仕様書の文章」が現場・開発・経営といった多様なステークホルダーをつなげる“橋”になれるかどうかにかかっています。
難しさの本質は、“誰もが自明だと思い込んでいる現場の常識”が、文章化しなければ相手に伝わらないことにあります。
バイヤーを志すすべての人、供給者サイドでバイヤーの考えに寄り添いたい人は、「なぜそれが必要か」「現場でどう運用されるか」にまで遡って考え・文章にする力を習得してほしいと思います。
現場をよく知る人、そして新しい発想をラテラルに取り入れる人が書く文章こそが、アナログからデジタルへと進化する製造業の未来を切り拓くのです。
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