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海外工場と取引するための仕様書・技術資料の書き方

目次
はじめに:グローバル製造業の今と、「伝わる」技術資料の重要性
日本の製造業は長らく高品質・高信頼性を武器として、世界の市場で活躍してきました。
しかし、グローバル化が進む現代では、調達購買や生産拠点がアジア、新興国など海外に急速にシフトしています。
この変化の中で課題となるのが、現地の工場やサプライヤーとの「伝わる技術コミュニケーション」です。
現場で20年以上汗を流してきた経験から申し上げると、海外工場とのトラブルや納期遅延の大半は、「仕様書や技術資料の正確な伝達不足」や「ドキュメントの曖昧さ」が原因です。
特に、昭和の文化が色濃く残るアナログな現場ほど、「昔からこうやってきた」「伝わるだろう」という思い込みが摩擦のタネになりがちです。
本記事では、海外工場やサプライヤーと円滑な取引を実現するための、現場目線で役立つ実践的な「仕様書・技術資料の書き方」を、バイヤー・購買担当者目線、さらにサプライヤー側からも俯瞰しつつ、分かりやすく解説します。
なぜ仕様書・技術資料でトラブルが起きるのか
日本流“暗黙知”の落とし穴
日本では、長年の取引や現場経験の蓄積に支えられて「阿吽の呼吸」で業務が進むことがよくあります。
しかし、海外工場には「前例」も「阿吽の呼吸」も通じません。
未経験の現地ワーカーにとって、あいまいな表現や詳細を省略した仕様書は誤解の温床になります。
たとえば「特に指定がなければ従来通り」「一般的なJIS規格品」という記載は、海外現場には全く伝わりません。
翻訳ミスが品質リスクを生む
多くの場合、日本語で作成した仕様書を英語または現地語に翻訳します。
この過程で、重要なニュアンスや数値の単位、検査基準などが抜け落ちたり、意味が変質してしまうリスクがあります。
特に自動翻訳任せや、現場未経験者への丸投げは禁物です。
“やったつもり”が現場での混乱を生む
調達・購買側では「渡したからOK」という意識になりがちですが、サプライヤー側から見ると「資料の意味が分からない」「記載がない仕様はどうするのか分からない」といった現場の混乱に直結しています。
抜け・漏れ・曖昧さが品質事故や納期遅延の元凶です。
実践的な仕様書・技術資料の書き方 〜必須10ポイント〜
「分かりやすく、誰でも迷わず読める」技術資料の基本を、以下にまとめます。
これは海外サプライヤーへの発注時だけでなく、国内外問わず共通して必要な視点です。
1. 目的・背景を一文で記載する
まず「この部品・製品は何に使うのか」「なぜこの条件が必要なのか」を冒頭一文で書いてください。
これがないと本質的なミスが起きがちです。
例:「自動車用ブレーキのシリンダ部品として使用するため、高耐摩耗性が必要です」
2. 重要な数値はSI単位と表記ルールを徹底
メートル法・インチ、摂氏・華氏、トルクの単位などの抜けがトラブルの代表例です。
必ず「単位を明記」し、図面にもSI単位を併記しましょう。
3. 許容範囲・公差・合否基準を明文化する
寸法や性能に対して「±0.1mm」など、許容範囲を具体的に示します。
できれば合否判定の基準や、NG時の処置(例:再加工・返品)まで明記しましょう。
4. 使ってはいけない専門用語・曖昧な言い回しリストを作る
「通常通り」「一般的な」「高品質」「しっかり作る」…などは海外現場には全く通じません。
どうしても必要な専門用語は、その意味を注釈として加えてください。
5. 納入時の検査項目・頻度・判定方法を必ず添付
どの項目を測定し、どの頻度で、どの判定方法(例:JIS規格○○、自社独自基準、目視 or 測定器)で合否を判定するかまで必ず示してください。
6. 具体的な材料名・型番・グレードを記載
「鉄」「プラスチック」「アルミ」などではなく、「SUS304」「ABS樹脂(グレード:AB-1201)」など固有名称で記載します。
現地調達の可否も含めて確認しましょう。
7. 詳細な図面添付・分かりやすいイラスト併用
ミリ単位の寸法や穴位置・溶接指示なども、細かな点まで明記します。
手書きスケッチや写真、CADデータも活用しましょう。
8. 納期・梱包・表示ラベルまで明文化
「納品先・納期」「梱包仕様」「品名ラベル表示内容」までセットで必ず伝達してください。
日本の「暗黙知」は通用しません。
9. 質問窓口・緊急時の連絡先を明記
疑問点やトラブルがあった際の窓口、返信の期待時間、言語なども必ず記載します。
10. 翻訳は必ず“ダブルチェック”する
原文と翻訳文(英語・現地語)をクロスチェックします。
業界・製品知識のあるスタッフによるチェックプロセスを社内規定化すると、ミス防止につながります。
昭和的な「現場力」×「デジタル」の新融合
製造業の多くは、未だに現場作業者の「慣れ」や「頭の中の引き出し」に頼ることが多いのが現実です。
このため、デジタル化や標準化が叫ばれても、一朝一夕には進みません。
しかし、いまや新興国のサプライヤーの多くは「図面・仕様書があるから、指示に忠実に作る。指示がなければ作業できない」という文化です。
昭和の現場力としての「応用力」「経験知」と、グローバル標準である「決められたルール通り作る」文化を融合させることが強い現場への第一歩です。
たとえば、社内でも「図面を見れば全員が同じ解釈をする状態」を目指し、
・既存のベテラン社員による“現場ヒアリング”で想定できるミスを洗い出す
・定型的なチェックリストを導入する
・デジタル技術(クラウド、図面共有ツールなど)を活用しリアルタイムで仕様書を更新・共有する
こうした地道な取り組みが、世界基準のモノづくりを支える土台になります。
サプライヤーから見た「バイヤーの考え」も知ってほしい
海外サプライヤーは今や日本市場・欧米市場からの受注獲得に熱心で、品質要求も高まり続けています。
そんな中で「バイヤーの意図」「なぜこれほど細かい指示を出すのか?」を知ることも大事です。
バイヤー(調達購買)は、品質事故リスクだけでなく、リコールやカスタマーからのクレーム回避、さらに自社責任回避も考えて仕様書をつくります。
結果的に、サプライヤーの現場に負担がかかったり、ときには「杓子定規で融通が効かない」と思われがちです。
ですが、実は「良い仕様書」「正しい合意」は、サプライヤーの現場力や納期遵守にも直結しています。
分からないことは積極的に質問し、バイヤーとのコミュニケーションを深めるほど、双方での仕事の質は上がり、信頼関係も強固になります。
まとめ:グローバル時代の「仕様書力」があなたの武器になる
日本の製造業、調達・購買、サプライヤー、それぞれの立場で最も重要なのは、「情報と指示が正確に相手に伝わること」です。
昭和の経験知に頼るだけではグローバル競争には勝てません。
かといって表面的な形式主義やマニュアル偏重も、現場力を弱めるだけです。
現場のベテラン知見を生かしつつ、分かりやすい・誰にでも伝わる・誰でも間違いなく実行できる「仕様書」「技術資料」をつくることこそ、世界で選ばれる日本のものづくりの真の武器です。
本記事が、現場や調達部門で悩まれる方、バイヤーを目指す方、そしてサプライヤーの立場でバイヤーの考えを深く知りたい方にとって、現実的で実践的なヒントとなれば幸いです。
現場を知るプロフェッショナル同士、共に「グローバルで選ばれる現場」を目指していきましょう。
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