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倉庫間の横持ち輸送が想像以上にコストを生む仕組み

目次
はじめに:横持ち輸送に潜む“見えないコスト”とは
工場の現場や調達・購買業務に携わっていると、つい「横持ち輸送」は些細な業務、あるいは調整のための“一時的な措置”と見なされがちです。
ところが、この「倉庫間の横持ち輸送」こそが、現代の製造業が抱える隠れたコスト、いや“ムダの温床”になっていることを、どれほどの担当者が実感しているでしょうか。
昭和時代から続くアナログな現場運営や、物流を「経費」としてのみ捉えている企業体質が、今も多くの工場に根強く残っています。
しかし、物流コストの最適化こそがサプライチェーン全体の競争力を左右し、海外とのコスト競争を生き抜く決定的なポイントとなっていくのです。
この記事では、長年現場を見てきた管理職の視点から、横持ち輸送がなぜこんなにもコスト高になるのか、そのカラクリと具体的な対策まで実践的に解説します。
横持ち輸送とは?意外と理解されていないその実態
定義と発生するシーン
横持ち輸送とは、主に同一企業・取引先間、あるいは関連倉庫間で在庫を移動させる物流のことを指します。
たとえば、A倉庫に過剰在庫がある一方で、B工場では同じ品目が不足している。
そのためAからBへ在庫を運び、「均す」ためだけにトラックを手配——こうした“倉庫間輸送”が日常的に行われています。
一見、製品の「回転率」向上や出荷の安定化のために合理的な手段と思えるでしょう。
ですが多くのケースでは、工場ごと、倉庫ごとに管理がバラバラなため、「根本的な需給管理の甘さ」が横持ちを常態化させている、という事実に目を向ける必要があります。
なぜ日本の製造業に横持ちが根付いてしまったのか
日本の製造業では「現場最優先」、いわゆる“現場の都合”や“現物至上主義”が今なお根深く残ります。
短納期への対応、急なオーダー変更、品質問題による仕切り直し……。
どうしても先回りして在庫を持つ傾向が強く、それが偏在を生み、横持ちを誘発する要因となっています。
一方で、過去の“経験と勘”に基づく「在庫コントロール」が現在もまかり通っている職場も少なくありません。
ERPなどシステム導入が進んでも、横持ちという“アナログ運用”が現実的な手段として生き残っているのです。
数字で紐解く横持ち輸送:どこにどれだけムダが潜んでいるのか?
直接コスト:輸送・人件費・荷役費
横持ちするたびに、新たにトラックをチャーターし、運転手を手配します。
例として、片道50kmの距離を標準的な2tトラックで平日に輸送した場合、ざっと2万~3万円のコストが発生します。
これが月20回発生すれば、年間で500万円以上が「横持ちのためだけ」に消えていく計算になります。
加えて、「コレは自社便だからコストがかかっていない」と誤解されがちですが、社内便であっても運転手の人件費・燃料費・減価償却費は当然発生します。
さらには積み下ろしのために倉庫スタッフの工数も奪われます。
間接コスト:機会損失とリードタイムの延長
横持ちには、表面化しにくい“間接コスト”が付きまといます。
例えば、
・本来出荷すべき製品が間違って別倉庫に送られてしまい、再輸送で納期遅延
・荷役作業のために本来の検品作業が遅れる
・スペースが専有され、バッファ在庫が増える
こうした事例により「機会損失」「人的リードタイムの延長」が起きるのです。
更に、横持ちの発生が常態化すると「属人的な調整」に現場が慣れ切ってしまい、データやシステムを活かした在庫管理・物流最適化への改善提案が生まれにくくなります。
見逃しがちな“環境コスト”も無視できない
現代の製造業において、物流の最適化とカーボンニュートラルは切っても切り離せません。
無駄な横持ちが増えれば、その分トラックの走行距離が増え、環境負荷も増していきます。
温室効果ガス排出量やSDGs目標へのプレッシャーが年々高まる中、横持ちの削減は今後“経営戦略上の重要課題”となっていくでしょう。
なぜ横持ちは減らないのか?製造業における5つの“構造的原因”
原因1:在庫情報の分断と見える化の遅れ
多くの工場や営業拠点では「自分のところの在庫だけは把握している」が、「他部門、他倉庫の在庫状況はわからない」というサイロ化が依然発生しています。
個別最適の在庫コントロールが、全体最適化を阻害する最たる元凶です。
特にアナログ書式やエクセル管理が主流の現場では、「今日どこに・何が・いくつあるのか」という即時把握が難しく、バランス調整のための横持ちが増えます。
原因2:需要予測と調達計画の不一致
営業部門と生産管理・調達部門のシステム/情報連携が弱いほど、「急に出荷が増えた/減った」「想定外のオーダーが来た」という場面で全体調整が間に合わなくなります。
結果、「とりあえず余剰在庫を移そう」というアドホックな動きが増え、横持ちを常態化させてしまいます。
原因3:慣行的な運用と現場における抵抗
「昔からやっている」「現場の手足感覚を大事に」という、昭和型の現場志向が残る日本の製造業では、多少ムダが発生しても“現場の裁量”が優先されがちです。
横持ちの頻度・コスト分析を行う文化や手法が現場に根付いていないことが多いです。
原因4:コスト意識の不徹底
横持ちのコストを“事業全体”で捉えることができないと、局所的にプラス(出荷効率化)でも、全体で見ると大きなマイナス(コスト増)になる構造が認知されません。
管理会計やKPI設計上でも物流費が“損益計算書の一部”でしか捉えられず、改善インセンティブが働きません。
原因5:サプライヤー、バイヤー間の情報ギャップ
メーカーとサプライヤーの間で“生産・出荷の最新計画”がタイムリーに共有されないと、「直前になってから急な出荷要請」「特定倉庫へ在庫が集中」→結果として横持ちが増加、という悪循環が起きます。
実践的!横持ちコスト削減のために今日からできる5つの対策
1. 全社横断の在庫情報の一元化・リアルタイム化
各拠点・倉庫間で在庫情報をクラウド・ERPで一元化し、「何が・どこに・いくつあるか」をリアルタイムで把握できる環境を整えます。
必要なのは高価なシステム導入だけでなく、現場への「即時在庫入力・確認」の仕組み浸透です。
バーコード管理やIoTセンサーによる自動反映など、地道な現場支援が効果を発揮します。
2. 需要予測の精度向上とサプライチェーン全体での共有
営業・生産・調達・物流の壁を越えて、需要予測データをベースにした「計画立案」と「変更時の即時共有」が可能な体制を構築しましょう。
AIや機械学習を用いた新しい需要予測の仕組みも実用化が進みつつあります。
また、定例会議に「横持ち発生数」「過剰在庫・欠品リスト」を組み込むことで、各部門のコスト意識を高める工夫も有効です。
3. 横持ちコストの“見える化”とKPI管理の徹底
「どの倉庫間で、何回、どれぐらいのコストをかけて横持ちしているか」を、月次レポートで可視化します。
物流KPIの一つとして「横持ち回数」「横持ち費用」「横持ち比率(=全物流費に対する横持ち費)」を設定し、現場評価や改善インセンティブに組み込むと効果的です。
4. 拠点レイアウトや在庫配置の抜本的再設計
「そもそも同じアイテムを複数拠点に分散させて持つ必要があるのか」。
抜本的に拠点配置を見直し、集約化・専用倉庫化・越境配送(直送)体制の導入が検討できます。
定期的な「物流実地監査」を実施することで、“設計時の前提”と“現実”のギャップを埋めていきましょう。
5. サプライヤー・バイヤー間の連携強化と運用ルールの標準化
メーカーとサプライヤーの間で、毎日・毎週の出荷計画を共有し、できるだけ複数拠点への分割発注や突発注文を抑えることが重要です。
また、工場間での“在庫融通”が必要となった時も、現場担当が単独判断で横持ち手配するのではなく、購買・物流部門の承認ルールを設けることで、判断の質を向上させられます。
新たな地平へ:横持ち削減が製造業を変えるカギとなる理由
倉庫間の横持ち輸送に潜むコストと、その発生構造を深く掘り下げてきましたが、これは単なる“コストダウン”の話だけではありません。
「不要なムダを減らし、現場力とサプライチェーン競争力を引き上げる」ことが、日本の製造業がグローバル競争で生き残り、持続的成長を実現するための根本的な課題なのです。
デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する今こそ、横持ちの“闇”をあぶり出し、倉庫管理・調達購買・生産管理の現場全体で新たな地平を切り開く時です。
昭和のアナログ文化や慣行型オペレーションから一歩踏み出し、「現場と経営が一体となった全体最適」に向けてチャレンジしていきましょう。
まとめ:横持ち輸送改革は明日の現場を変える
横持ち輸送は、一見すると現場の“ちょっとした調整”ですが、その裏には想像以上に大きなコスト、そして現場力の停滞リスクが潜んでいます。
在庫情報の見える化、部門間連携の強化、KPIによる継続的改善——
今、この3つを「全社で」「徹底的に」進めていくことで、やがて横持ちのムダは確実に減少します。
今日からできる小さな改革こそが、工場の未来、ひいては日本の製造業の競争力を切り拓く“第一歩”となるはずです。
この知見が、製造業の皆さんや将来バイヤーを目指す方、またサプライヤーで“バイヤーの考えを読み解きたい”すべての方にとって、ヒントとなれば幸いです。
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