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投稿日:2026年1月26日

人事DXでデータは揃ったが判断できなくなった話

はじめに:人事DXがもたらす「見える化」の功罪

令和の時代に入り、製造業でもDX(デジタルトランスフォーメーション)の波が押し寄せています。

とりわけ人事領域は、これまで「経験」と「カン」に依存しがちだった昭和的な現場からの大きな変化が求められる分野です。

多くの企業が人事DXに取り組み、従業員の勤怠データ、スキルマップ、異動履歴、エンゲージメントスコアといった様々なデータを「見える化」してきました。

ところが――です。

「データは揃った。だが、どのように判断すればいいかわからない」

実際に現場で人事DXを推進し、管理職として人材配置や評価に携わってきた私が、最近よく耳にする悩みです。

この記事では、製造業現場に根付く昭和的マインドと、データドリブンの現代人事がぶつかりあう最前線で直面する課題について、業界歴20年超の経験も交えながら解説します。

人事DXで「データ」は集められたか?

製造業の現場では、従来は紙とスタンプでやりとりしていた業務を、システム化・デジタル化することが人事DXの第一歩となりました。

これにより、以下のような多様な人事関連データが一元管理できるようになりました。

  • 勤怠打刻、残業時間、休暇取得状況
  • 資格・技能・免許・熟練度
  • 業務ごとの作業履歴・教育履歴
  • 人事考課、360度評価
  • エンゲージメントサーベイなど意識調査

そして「ダッシュボード」「BIツール」「HRデータベース」といったキーワードの下、多くの現場は「全メンバーの状況が一覧でき、誰がどういう特性を持っているかを定量的に把握できる」ようになったのです。

なぜデータが「判断の妨げ」になるのか?

1. データの「使い方」がわからない現場

人事DXによって、現場リーダーや管理職にも膨大な情報が渡されます。

たとえば、「Aさんはリーダーシップ研修を受け、B+評価を取得。過去の工程での不良率は社内平均より5%良好。自己啓発型で高いエンゲージメントスコア。残業時間は上限ギリギリ…」

このような人材情報を「一覧」で見せられても、現場の判断基準が昭和的な「人柄」「根性」「顔色」「酒場トーク」に根ざしてきた場合、混乱は避けられません。

どの情報に重みを置けばよいか、どのような配置が最適なのか。

過去の感覚が通用しなくなり、選択に迷うリーダーが増えています。

2. データが「判断」そのものの代替ではない

人事DXは、「正しい人材評価・適材適所配置が自動的にできるのでは?」と思わせます。

しかし実際には「データは単なる情報」でしかありません。

AさんとBさんのどちらに新規ラインのリーダーを任せるか――
過去の実績・スキル・エンゲージメント・周囲の評価、それぞれはデータとして提示されますが、それらすべてを並べても「最終判断」をどこに置くべきかは示されません。

現場は「何を重視し、何を割り引き、どの妥協点で決めたか」を説明できないプレッシャーを感じています。

3. 「昭和式」の意思決定と「データドリブン」の衝突

多くの管理職・現場リーダーにとって、意思決定や人材評価の基準は「上司の価値観」や「長年の勘・経験」に依存してきました。

データによる可視化は、素早く多様な人材を拾い上げるチャンスが広がる一方、「どのデータを、どう選ぶべきか?」と新たな悩みの種にもなっています。

定量データと定性感覚のギャップが徐々に浮き彫りになってきているのです。

他社に学ぶ「人事DX」と判断軸の再構築

1. データを「チェックリスト化」せよ

ある自動車部品メーカーでは、DXの初期に直面した「判断できない問題」に対し、シンプルなアプローチをとりました。

「人事異動会議で使用するデータを、必ず全員が『チェックリスト形式』で確認すること」
つまり、人材配置を考える際に、

  • スキル面:必要な資格・熟練の有無
  • リーダーシップ:評価履歴
  • 働き方・エンゲージメント傾向
  • 最近の体調・出社状況
  • など、判断軸をシンプルに並べ、まずは「点数化」せずに重要と感じる要素に丸をつけていく。

    これにより、「どれを重視するべきか?」が浮き彫りになり、現場間のコミュニケーションも活発化しました。

    2. 「現場の価値観」×「経営視点」の対話促進

    データ活用の迷いは、しばしば現場と経営の考え方の間違いに起因します。

    工程ごと、支店ごとに評価基準・期待値は異なり、ローカル文化とDXで導入した共通評価指標が齟齬をきたしやすい。

    そこで「現場主導型のデータ評価会議」を定期的に開催し、

    • どの指標が現場では最も効くのか
    • 会社方針と現場実情の擦り合わせ
    • データで測れない定性面の補足説明

    を必ず討議テーマとしたといいます。

    「データで測れないが、現場として伝えたい内容」こそが、現場目線・データ目線の融合にカギを握ります。

    3. AI・アルゴリズムに委ねすぎない「最後の判断」

    最近では「AIによる最適配置提案」「アルゴリズム評価」という言葉も耳にします。

    しかし、データに導かれるまま人事判断を機械的に行えば、「納得感のない現場」「反発するベテラン」という別の問題が発生します。

    最終決定プロセスには、必ず「現場リーダー自身の納得」、「説明可能性」を持たせることが重要です。

    一人ひとりの背景や思いを「データ外」の要素として残しておくことを忘れてはいけません。

    現場の納得感と人事DXの「歩み寄り」

    人事DXのゴールは「判断の自動化」よりも、「現場と経営をつなぎ、納得感のある意思決定を支援すること」にあります。

    朝礼やQC活動、職場内パトロール、1on1面談。

    昭和的な手法が全く時代遅れかと言えば、決してそうではありません。

    データで補完し、データでエビデンスを示しつつ、「現場の想い」とぶつけ、徐々に判断軸を再構築していくことが最も重要です。

    「データを集めたことで、逆に決められなくなる」現象を感じた現場こそ、今が踏みとどまる好機なのです。

    製造業バイヤー・サプライヤーにも通じる「人を見る目」

    ここで視点を広げ、製造業のバイヤーやサプライヤーにとっても、人事DXの現象は決して他人事ではありません。

    サプライヤーから見れば、「バイヤー企業の人事評価が不透明」「何を見て発注・評価を決めるのかわからない」という不安。

    一方、バイヤーにとっても「サプライヤーの現場・技術担当者の本質」を数値だけで判断すれば見落としも生じます。

    人事DXの混乱を反面教師に、「数値・エビデンス×現場目線」を両立する視点は、取引先選定・調達戦略にも応用できる教訓となるでしょう。

    まとめ:人事DX、「判断軸の再構築」が未来を作る

    人事DXによって、「見える化」は確かに前進しました。

    しかし、「データは揃った、でも判断できない」――これは製造業に根深い昭和的判断文化に、新たな地平線が突きつけられている証です。

    この時代、必要なのは「データに基づく根拠×現場の納得感」の両立。

    チェックリスト化や現場主導のコミュニケーション、AIを「判断支援」にとどめる運用、そして「データ外の人間的要素」を大切にする仕組み。

    一歩ずつ、データと現場の「歩み寄り」こそが、判断力のアップデート、そして昭和から令和への進化につながります。

    バイヤーやサプライヤーも含めた製造業界全体の「人を見る目」の進化こそ、人事DXのその先にある本質といえるでしょう。

    現場から経営まで、この記事が新たな判断軸を見つけるヒントとなることを願っています。

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