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HSコード分類を精度向上させ関税負担と通関遅延を同時に抑える実務テクニック

HSコード分類を精度向上させ関税負担と通関遅延を同時に抑える実務テクニック
はじめに ~HSコード精度がカギを握る製造業の未来~
製造業の現場では、部品や製品の国際調達が当たり前となりました。
グローバルサプライチェーンが広がるなか、HSコード(ハーモナイズドシステム・コード)の正確な分類は極めて重要です。
HSコードの分類ミスは、関税負担の増大や重大な通関遅延を招くだけでなく、最悪の場合はペナルティ(加算税や過去遡り徴収)を受けることもあります。
特に、昭和の時代から続くアナログ的な業務体質が残る製造現場では、「いつもこうだから」と根拠に乏しい伝承方式でHSコードが決定され、輸出入のトラブル原因となるケースが少なくありません。
この記事では、製造業で20年以上現場を経験した視点から、令和の時代にふさわしい実践的かつ現場目線のHSコード分類精度向上術を解説します。
これからバイヤーを目指す方、サプライヤーの立場からバイヤーの考え方を理解したい方も必見の内容です。
HSコードとは?分類ミスが製造現場に及ぼすインパクト
HSコード(Harmonized System Code)は、世界共通で定められた品目分類番号です。
原材料、部材、完成品、工具に至るまで、全ての輸出入品にコードが割り当てられています。
通関手続き時、税関はサプライヤーやバイヤーが申告するHSコードを元に関税率を適用します。
ここで分類ミスがあると、例えば「本来は無税・低税率なのに、高税率で課税された」「迅速輸入品なのに審査に日数がかかった」など様々なリスクが発生します。
また制度改正や通達の解釈違いで、事後的に数年前にさかのぼって追加課税がなされることもあります。
現場への影響は甚大です。
調達リードタイムが乱れ、工程計画が崩れ、最悪の場合生産ライン停止の危険性もあるのです。
なぜHSコード分類はこんなに難しいのか?
HSコード分類が「難解」とされる理由は主に3点あります。
1つ目は、モノによって要素が複雑なことです。
例えば、電子機器1つとっても、本体丸ごとか、基板単体か、組み立て済みユニットかによって分類が異なります。
コンプレッサー付き冷蔵庫はコンプレッサーとして?冷蔵庫として?部品として?…解釈が割れることも珍しくありません。
2つ目は、品名や仕様書の記載が抽象的または慣行的であることです。
現場では「A部品」「サブASSY」など通称で呼ばれ、正式な製品仕様書が無いまま申告される場合があります。
3つ目は、制度改正や各国税関の運用指針が目まぐるしく更新される点です。
HS2022やHS2027など数年おきの体系改正だけでなく、特定の品目についての引き上げ・細則追加も頻発しています。
このような背景から、現代の製造業ではHSコードをいかに正しく素早く判定するかが大きな課題と言えます。
ミスの温床を撲滅!HSコード分類現場のあるあるアナログ習慣
筆者が長年見てきた現場では、以下のような「昭和型アナログ業務」が今なお根強く残っています。
・以前使った伝票の写しから品目をコピペしている
・特定の担当者にしか分からない“暗黙知”でコードを決定している
・「多分これで大丈夫だろう」と根拠のない経験則で済ます
・サプライヤーへの確認はメールやFAXで、記録が残らない
・疑問が発生しても税関や専門家に相談する時間的余裕がない
これらの慣行は、ミスの温床です。
一時的に回避できても、数年後の税関調査やシステム監査でトラブルになるリスクが高まります。
精度向上のカギ1:本質を見極めるための「用途思考」
HSコード分類の基本は「何に使われる品物か」を深掘りすることにあります。
例えば、「鉄製ねじ」と一口に言っても、建材用か、精密機器用か、自動車部品かでコードが変わります。
現場だからこそ知っている“使用実態”を活用し、「完成品として使うのか」「どの工程で使用されるのか」「主要な機能は何か」を明確にしましょう。
大手メーカーでは、BOM(部品表)や技術資料、工程フローを基に「この品目は最終用途が明確だから○○類」といった使い方が有効です。
また、現物のサンプルを営業や技術部門と一緒に確認することで、「見た目は同じでも使い道が違う」ような判断を精緻化できます。
精度向上のカギ2:類似品・先例・国際間ギャップの調査活用
分類に迷う場合は、税関が公開する判例、他社の通関情報、梱包サンプル、輸入先国のFAQ・指針を総検索しましょう。
特に「類似しているが微妙にスペックが異なる先例」を探す癖を持つと、分類の精度が上がります。
その際、
・自社と他社の分類差
・中国でのHSコードと日本でのHSコードの差異
・関税協定やEPAによる免税対象の有無
など、多角的に比較することが重要です。
日本の税関WEBには「分類事例集」があり、機械部品・電気部品・化学品などの判例が多数公開されています。
また、海外現地法人や取引先と情報共有することで、「現地税関はこう見ている」「当局からこの質問が増えている」といった鮮度の高い現場情報を把握できます。
精度向上のカギ3:組織で支える「クロスファンクショナル・チーム」体制構築
HSコードの属人化を防ぐ最良の方法は、「技術・設計・購買・物流・法務」の多部門横断チームによる審査体制を整えることです。
たとえば
・技術が「材質や仕様のブレ」を説明
・購買が「納入タイミングやBOMとの整合」を管理
・物流が「梱包仕様や現地通関プロセス」を整理
・法務が「適用法律やリスク」を評価
このような情報を一元化し、誰が見ても分かる「分類台帳」として残しておきましょう。
議事録や意思決定プロセスをクラウドに記録しておくことで、担当者異動時やトラブル時にも過去の経緯をトレースでき、属人的リスクが激減します。
精度向上のカギ4:デジタル活用とAI分類ツール導入
近年、DX化の流れでHSコード自動判別AIや電子台帳システムが普及しています。
これは従来の「属人的な判断頼み」とは一線を画すものです。
代表的な活用法としては
・AIに仕様書・図面を投げると「推奨HSコード」をリスト化
・社内分類実績と照合し、類似品の取扱注意点を警告
・国際取引先とAPIで情報同期し、輸出入双方の申告精度UP
といった効率化が可能です。
もちろんAIの提示はあくまで参考値であり、最終判断は人間のレビューが不可欠です。
ただし、データベース過去問答やログを活用することで、属人的ノウハウの暗黙知を見える化できます。
精度向上のカギ5:税関・専門家との「日頃の相談関係」構築
最終判断で絶対困った時には、監督官庁(税関など)や専門コンサルタントに事前に相談しましょう。
税関による事前教示制度や、有料の分類アドバイスは非常に有益です。
現場でのリアルな疑問や将来の輸出入計画を逐次相談できる「顔の見える関係」があると、有事の際にも安心です。
工場監査なども積極的に受け、お互いの信頼関係を厚くすることで、万一の時の柔軟な対応が期待できます。
関税負担軽減と通関遅延抑止の実践テクまとめ
最後に、製造業で実効性のあったテクニックをまとめます。
1.輸出入品は「品名」「用途」「仕様」「工程」を明確に定義
2.税関HPの判例集・公開データベースを徹底活用
3.技術・購買・物流・法務間でのクロス部門チーム審査を推進
4.分類根拠をエビデンス付きでデジタル管理し、随時アップデート
5.AIやRPAツールも駆使しつつ、最終確認は目視徹底
6.監督官庁やコンサルとの定期コミュニケーションを実施
これらを地道に実行することで、税関検査頻度の低減、関税負担適正化、リードタイム短縮を実現できます。
まとめ ~バイヤー・サプライヤー両方の視点を持つことが強さになる~
HSコード分類の精度強化は、「コスト管理」だけでなく「生産リスクの最小化」「信用保持」そのものです。
昭和アナログ型から令和デジタル型へのシフトを急ぐことで、グローバル競争に勝ち残る“したたかな現場力”が強化されます。
現場のバイヤー・サプライヤー両方の工夫とコミュニケーションが、トラブルゼロのものづくりを支えます。
今こそ、ラテラルシンキングで部門や国境を越えた新たなサプライチェーン管理を目指しましょう。
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