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人間中心設計と感性の計測人間の認知面からみたヒューマンエラー車載情報機器におけるヒューマンインタフェース

目次
はじめに:自動車業界の変革とヒューマンインタフェース
自動車産業は、かつてないスピードでデジタル化・自動化が進みつつあります。
カーナビやディスプレイオーディオ、さらに先進運転支援システム(ADAS)など、車載情報機器の高度化によって、ユーザーインタフェース──いわゆるヒューマンインタフェース(HMI)の重要性が日増しに高まっています。
しかし一方で、昭和時代からの“アナログ的な思考”や「職人技の継承」といった文化が深く根づいている現場では、ヒューマンセントリック(人間中心設計)や感性工学といった新たな潮流への対応が決して容易ではありません。
この記事では、20年以上製造現場に携わった経験から、現場感覚に根ざした「人間中心設計」「感性の計測」「認知心理に基づくヒューマンエラー」そして「車載情報機器のヒューマンインタフェース設計」について、実践的かつ最新の業界動向を踏まえた視点で解説します。
人間中心設計がなぜ必要か:技術進化と安全・快適性のジレンマ
従来の製造業、とりわけ自動車業界では「性能・耐久性・コスト・生産性」がものづくりの主眼でした。
しかし、デジタル化とともに使い勝手や感性品質が消費者の購買行動に大きな影響を与えるようになりました。
人間中心設計(Human-Centered Design)は、「使う人」起点で開発・設計し、ユーザー体験(UX)を最優先する考え方です。
特に車載情報機器のように、運転者が即座に操作・判断を求められるシステムでは、
– 誤操作(ヒューマンエラー)をいかに低減させるか
– 直感的に理解できる画面・操作体系か
– 運転中でも注意力が分散せず本来業務(運転)に集中できるか
が、ユーザー満足度と安全性の両立に大きな意味を持ちます。
この観点が現場で実感され始めたのは、カーナビ・車載ディスプレイが普及し、ソフト/ハード双方のつくりこみが求められるようになった2000年代以降でしょう。
感性品質と感性の計測:指標化が“職人の勘”を進化させる
日本の製造業では「お客様の期待を超える品質(感動品質)」が常に標榜されてきました。
かつては「職人の勘」や長年の経験則で曖昧に語られがちだった“感性”がデータ化され、科学的に計測・分析できるようになった現在、ものづくりは新たなステージに入りつつあります。
感性の計測とは何か
感性の計測とは、たとえば下記のような「人が機器に触れた時の主観的な満足感」や「使いやすさ」を数値化し、設計・評価の基準とすることです。
– 操作スイッチを押したときの“カチッと感”
– 音声案内の聞きやすさ
– ディスプレイの視認性
– 操作ミスの発生頻度や原因解析
近年では生体情報(脳波、心拍変動、瞬き、皮膚電位など)の計測や、ユーザー行動のビッグデータ解析、官能評価+機械学習アルゴリズムの活用も進み、感性品質は「再現性ある設計指標」に進化しました。
感性計測の現場での活用事例
現場では「お客さまアンケート」や「モックアップによる体験会」だけではなく、下記のような定量化手法が根づき始めています。
– 記録カメラを用いた操作行動トレース
– ボイスレコーダーによる音質評価会(満足度アンケート連動)
– スイッチ圧力感度測定装置による、最適押下力値の設定
– HMI設計時のUIレスポンスタイム(反応遅延)の定量評価
これはバイヤーの立場でも、仕入先サプライヤーへの「要求値」として用いることが可能です。
将来的には、AIと感性計測技術を組み合わせ、より高度な“パーソナルフィット”を実現するインタフェースも登場すると予想されています。
ヒューマンエラーはなぜ起こるのか:認知心理学の現場応用
製造現場のみならず、車載情報機器の誤操作や設計ミスも「人間の心理的特性」から生じることがほとんどです。
ヒューマンエラー低減のためには、認知心理学の知見を設計・運用ノウハウに落とし込むことが最重要です。
認知負荷(Cognitive Load)と車載機器
人間は「一度に多くの情報を処理しきれない」「注意力が分散しやすい」等の認知的制約を持っています。
たとえば、
– 画面に大量のアイコンや情報が表示されている
– サブメニュー階層が深く、直感的に操作できない
– 重要な情報が小さすぎて見落としやすい
– 操作時にハプティクス(触覚情報)がないため反応が分かりにくい
こうした設計はヒューマンエラー(誤作動・誤認識)を誘発しやすくなります。
ミスの“型”を知ることが事故防止の第一歩
ヒューマンエラーにはいくつか代表的な「型」があるとされています。
– スリップミス:うっかり間違ってボタンを押す
– ラップス(失念):手順を一部飛ばす、忘れる
– ルールベースミス:勘違いした操作フローで進めてしまう
– 知識ベースミス:知識不足や思い込みで誤った判断をする
これらは工場の生産現場だけでなく、車載機器利用者にも当てはまります。
「たとえば現場目線で考えた場合、“分かりきったつもり”で慣れた作業員が新しい手順を無意識にスキップして不具合を発生させた」という昭和時代からの教訓は、デジタルHMI時代にもそのまま活かすべき示唆を与えています。
現場で採用される“エラープルーフ”の工夫
実際に導入が進む現場目線でのヒューマンエラー低減対策例を挙げます。
– ユーザーの確認動作を必ず1段階入れる(例:ナビ目的地決定ボタンの2度押し)
– 色や形・大きさで情報の優先順位を自然に伝える
– 「戻る」「やめる」といった回避機能をわかりやすく配置する
– 物理的なフィードバック(音、振動)を意図的に盛り込む
こうした工夫は「その気はなくてもつい間違えてしまう」ことの発生要因をひとつずつ潰し、現場の声を生かした設計につながります。
車載情報機器のヒューマンインタフェース設計の最前線
現在、車載情報機器のHMI領域は著しい進化を遂げています。
ただし実際の購買現場や工程管理では、下記のようなギャップも依然として顕在化しています。
最新動向:大画面化・タッチパネル化と“感性”の課題
– ディスプレイが大型化し、複数画面/機能を統合(=インフォテインメントシステム)
– ボタン類の物理削減、タッチ操作が主流に
– ジェスチャー操作や音声認識など、新しいUI/UX体験の提案
一方で、
– 運転中の視線移動リスク
– タッチパネルの操作ミス、不正確な反応
– 加齢による視力や聴覚の変化に対応できていない
– 物理スイッチに比べ“感覚的な安心感”が劣る
といった課題も出ています。
アナログ産業の現場に根づく「現物主義」との融合
“昭和気質”の製造現場やオフライン品質管理部門では、
– デジタル化だけが進みすぎ、現場の声が反映されにくい
– 「百聞は一見に如かず」でモックアップや現場試作を重視
– 年配職人の感覚値や無意識的ノウハウも尊重
といった意識が依然として強いです。
実はこの“現物主義”の考え方こそ、ヒューマンインタフェース設計でも重要な原理です。
「熟練工が実際に手で触れ、使い勝手や異常を体で感じる」ことで洗練度が上がるため、デジタル評価+現場体験会を必ず組み合わせるプロジェクト運営が定着しつつあります。
バイヤー視点でも、この現物確認を“品質ゲート”として明確な評価基準に据える動きがトレンドです。
まとめ:人間中心設計の新たな地平線を開拓するために
自動車産業のみならず、あらゆる機器にヒューマンインタフェース設計と感性の計測は今後ますます求められます。
人間中心設計は「ユーザーは誰か」を問い続ける営みです。
感性品質の計測やヒューマンエラーの現象学的理解、現場の“アナログ的知恵”の融合によって、より安全で快適なプロダクト開発が可能となります。
この記事で述べてきた現場目線・バイヤー目線の視点を、ぜひ自社の設計・調達・品質管理に活かしてください。
人と技術が真に調和する「新たなものづくりの地平線」を、一歩ずつ切り開いていきましょう。
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