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ステンレス蓋の印刷で静電吸着を防ぐための湿度管理とイオンブロア使用法

目次
はじめに:昭和から続く“アナログ”現場の課題と革新のヒント
製造業の現場ではいまだに昭和的なアナログ文化が根強く残っています。
中でも、ステンレス蓋の印刷工程はシンプルな“当たり前”の積み重ねで成り立ってきました。
しかし現場で20年以上経験を重ねてきた立場から言えば、時代の流れや顧客の要求品質が高度化するなか、従来のやり方だけでは通用しなくなっています。
ステンレス蓋印刷の現場で近年よく議論にあがるのが、“静電吸着”によるトラブルです。
「印刷シート同士がくっついてしまう」「ダストを呼び寄せるせいで印刷不良が多発」「工程ごとの歩留まりが安定しない」など、静電気が引き起こす課題は枚挙にいとまがありません。
本記事では、古くて新しいこの課題に、湿度管理やイオンブロアによる“昭和+α”の現場的ソリューションで切り込んでいきます。
ステンレス蓋印刷工程における静電吸着のメカニズム
静電吸着はなぜ発生するのか
ステンレス蓋の印刷工程は、製造ライン上で数十〜数百の蓋を高速で搬送し、シートごとにインクを転写します。
その過程で、素材が搬送ベルトやガイド、印刷機ローラー等と機械的に摩擦されることにより、電子の過不足が局所的に発生します。
この電子の蓄積、いわゆる静電気が極端なプラス/マイナスの電位差を生み、次のシートやダスト、インク成分等を“引き寄せて”しまうのです。
静電吸着がもたらす主なトラブルは以下の通りです。
・シートの重なりや貼り付きによる供給不良や二重供給
・ダストや繊維の付着による印刷ムラ、異物混入不良
・作業者の帯電による安全リスク(感電やトラブル発生時のパニック)
湿度管理と静電気の関係性
昭和の現場では「冬場は静電気が多いから注意しとけ」と口伝で済ませがちですが、その原因は“空気中の湿度”にあります。
空気が乾燥(=湿度が40%以下)すると、素材表面や作業者の皮膚に帯電した電気が空気中に逃げにくくなります。
逆に湿度が50~60%を超えると、空気中の水分が電気を逃す役割を果たし、静電気が溜まりにくくなるのです。
つまり、湿度調整は静電トラブルを根本から予防する最重要ファクターです。
湿度管理のベストプラクティス
現場の“肌感覚”を科学的に裏付ける
製造現場では「肌寒い季節ほどトラブルが多い」「指がピリッとした日は機械もおかしい」といった経験則がよく語られます。
これを数値管理・工程化することで、静電気問題の“体感頼み”から卒業しましょう。
具体的なポイントを紹介します。
推奨湿度と管理体制の構築
1. 最適湿度の設定
静電気対策には“相対湿度50~60%”が最適です。
この範囲を下回ると静電トラブルが急増します。
2. 湿度センサーによるリアルタイム監視
アナログな温湿度計だけでなく、データロガーやネットワーク型センサーを活用しましょう。
製造現場の四隅や工程ごとに細かく設置し、数値で可視化することで対策の“打ち手”が判断しやすくなります。
3. 加湿器・除湿器・エアコンを組み合わせた自動制御
最新機器の導入が難しい場合も、市販の大型加湿器を複数台導入し、“風の流れ”や“熱源”を考慮しながら手動でコントロールするだけでも効果があります。
工場全体の空気管理が難しい場合は、印刷・搬送工程ライン上に“スポット加湿”を設けると良いでしょう。
現場管理者のチェックリストの例
・始業前後、昼休憩後に湿度を必ず確認し、所定値を掲示
・異常時にはすぐ加湿・除湿指示ができるマニュアルを用意
・湿度変動の記録を残し、印刷不良やダストトラブルと関連付けて解析
これらを徹底することで、“感覚任せ”の現場から脱却し、安定した品質維持を目指しましょう。
イオンブロアの役割と正しい使い方
イオンブロアとは何か?
イオンブロアとは、放電針を活用し“プラス・マイナス両極のイオン風”を吹き付ける装置です。
素材表面の帯電量を中和し、静電気を瞬時に除去します。
従来の“アース線で静電気を逃す”方法よりも即効性が高く、搬送中のシート・部品へダイレクトに作用できるため、現場での導入が年々進んでいます。
イオンブロアの効果的な設置ポイント
1. 印刷前工程
ステンレス蓋が印刷機に投入される直前、搬送コンベア上での設置が鉄板です。
この位置にイオンブロアを設置することで、素材表面の帯電を取り、印刷面のダスト・ゴミ吸着不良を大幅に防げます。
2. 印刷工程内の補助装置
多くの現場では“印刷後”も静電問題が起こります。
特にUV硬化インクや排出ラックでの2次トラブル防止のため、印刷後・乾燥前工程での追加設置が有効です。
3. 作業台・検査台など作業スタッフと部品が接触しやすい位置
検査員やパート作業者の帯電による不良誘発を防ぐため、人と部品の動線にも設置を検討しましょう。
現場で陥りがちな失敗と“あるある”対策
「イオンブロアを導入したのに思ったほど効果が出ない」「オゾン臭が強い」「ホコリが逆に舞い上がった」などの声もよく耳にします。
その対策例は以下です。
・イオン風が帯電面に正しく届くよう、風向・風速・距離を微調整する
・放電針の清掃を定期的(最低週1回)実施し、性能低下を防ぐ
・一点集中でなく、複数台を組み合わせ“風の流路”が均一になるよう設計する
現場目線では「とりあえず設置」ではなく、実際の静電トラブルの出やすい箇所を特定し、正確に“当てる”ことが重要です。
また、エアーガン型の小型イオンブロアは、検査・梱包部門やサプライヤー側での“戻り不良対策”にも重宝します。
現場のアナログ文化と最新機器の“いいとこどり”を目指して
昭和的な現場文化では「体感」「勘」「ベテラン職人頼み」で乗り切る傾向が強く、せっかくの湿度管理やイオンブロア導入も形骸化しがちです。
しかし、技術は日進月歩で進みます。
たとえば統計的品質管理(SQC)、IoTセンサーによる自動監視、画像認識を活用した不良予知技術などです。
大切なのは、“現場目線の納得感”と“最新機器の科学的知見”を地続きでつなぐことです。
現場では、目視・触感・五感での気づきを記録に落とし込み、エビデンスとして機械設備や工程設計にフィードバックすることがSafer, Smarterな現場へと近づく第一歩です。
バイヤーやサプライヤーの立場から見た湿度・静電対策の重要性
製造業の“プロバイヤー”は、自社工場だけでなく、サプライヤーの工程も品質監査の対象としています。
静電気トラブルや湿度管理の不足は“見えないコスト”を招きます。
印刷不良による再生産、納期遅れ、リワークコスト、不良品による信頼低下、最終顧客へのクレーム等、多くのリスクが潜んでいます。
バイヤー目線では「この工場は湿度管理を実際にやっているのか」「イオンブロアはどの工程で使い、どのような記録・メンテナンス体制か」といった実態を知りたがっています。
逆に、サプライヤーとしては、こうした“見えにくい現場努力”を、数値や実績、工場見学時の取り組み説明等で自主的にアピールできる体制が信頼獲得の近道です。
まとめ:安定品質のカギは「湿度管理 × イオンブロア × 現場力」
ステンレス蓋印刷現場の静電対策――根っこにあるのは、人の体感から始まる“現場力”と、湿度管理やイオンブロアといった科学的/技術的な知見をうまくハイブリッド化する視点です。
現場のアナログ文化の良さも活かしつつ、デジタルデータと新技術を用いて“品質トラブルの未然防止”という次元にステップアップしましょう。
バイヤーやサプライヤー目線でも、こうした“見落としがちだけど本質的な努力”が、最終製品の品質・コスト・納期安定につながります。
昭和から続く現場の知恵に、現代の新しい武器を加え、ますます高度化する製造業の未来に貢献していきたいものです。
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