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飲食店が製品づくりを始める前に理解すべき衛生基準と食品法規

目次
はじめに:飲食店と製品開発の新たな挑戦
飲食店がスイーツや弁当、スパイスミックスなど自社ブランドの製品づくりを始める動きが活発になっています。
テイクアウトやEC販売の拡大、食に対する多様なニーズの高まりなど、市場が大きな可能性を見せているからです。
しかし、飲食店が店内提供だけでなく、「販売用製品」を生産するには、これまで以上に厳格な衛生基準や食品法規への対応が不可欠です。
大手の製造業で長年工場運営や品質管理に携わってきた経験から、飲食店が陥りがちな落とし穴や、業界の“昭和的な”慣習が今も根強いことまでひもときながら、実践的なノウハウをお伝えします。
製品づくりと飲食業の現場:根本的な違いとは何か
「飲食提供」と「流通用製品」は法律も基準も違う
飲食店での調理と、量産して流通にのせる「製品開発」では、守るべきルールが大きく異なります。
飲食店では食品衛生法上「飲食店営業許可」で運営していますが、市販目的でパッケージ商品を作るには「菓子製造業」や「惣菜製造業」など、別の許可や基準が課されるケースがほとんどです。
なぜなら、持ち帰り・物販で製品として販売される食品は、「時間経過」や「温度変化」によるリスクが増すからです。
消費者は商品発売後、どの環境でどれくらい保管するか読めません。
そのため、製造側には、製造日から販売・消費までのすべてのフェーズを見越した管理レベルが求められます。
現場目線で重要な「手順と記録」
大手製造業では、原材料のトレース(追跡)、作業手順書の整備、衛生工程の記録が徹底されています。
求められるレベルは業種や規模によって違いますが、「誰が、どんな手順で、いつ製造したか」を記録し、不具合発生時には即時原因を追跡できる仕組みが基本です。
飲食店営業の感覚のままでこれに取り組むと、「忙しいときは記録を省略」「誰でも何となく作業する」など“昭和時代的”な慣習が出やすいものです。
実際、改善指導を求められる現場でも、この違いを理解せずトラブルにつながる例が多いです。
衛生基準の基本と落とし穴
必ず押さえておきたい衛生管理のポイント
衛生管理は、主に「人」「設備」「工程」の3つで成り立っています。
1.人の管理
従業員の健康確認、手洗いや手袋着用、清潔な作業着など、ヒューマンエラーの原因を最小化します。
アルバイトやパート含め、全員が分かる形式で教育を行い、抜き打ち点検や手順の見直しも必要です。
2.設備の管理
調理器具、まな板、包丁、トング、充填機器…調理器具ごとの消毒方法や、洗浄頻度を明確にします。
また、製品の保管・出荷用の冷蔵・冷凍庫、作業スペースの温度・湿度管理もポイントです。
3.工程の管理
調理→冷却→充填→包装→保管…各段階で「危害要因(汚染や異物混入)」がないか工程ごとに点検します。
HACCP(ハサップ:危害分析重要管理点)手法の導入が推奨されており、“危険ポイント”を見つけて重点管理するのが今や標準です。
過去事例から学ぶ失敗パターン
店の人気メニューをそのままパッケージ商品にしたとき、「製造量の増加に現場の衛生管理が追いつかない」「いつ誰がどんな異物チェックをしたか記録が残っていない」といった理由で、後々のクレームや回収トラブルが発生しています。
また、原材料の産地偽装や保存料の未表示といった不正が起こりやすい構造も、現場でマニュアル化・教育が足りないことに起因しています。
食品法規制のポイントを理解する
原材料表示とアレルゲン管理の実務
食品表示法により、原材料名やアレルゲン、保存方法、消費期限、製造者情報などがラベル記載義務とされています。
表示方法を誤ると行政指導や売り止め、最悪の場合は損害賠償案件に発展します。
特に、アレルゲンの「含む/含まない」「コンタミネーション(微量混入)」の説明は最新の注意が必要です。
サプライヤーからの仕入先変更、仕様変更、仕込みレシピのマイナーチェンジが表示変更を要するケースも多く、書類管理・変更履歴が疎かにならないよう社内ルール整備が重要です。
製造許可の重要性と取得プロセス
製品製造には、必ず所轄保健所への届出と許可取得が必要です。
たとえば菓子・パン・惣菜・漬物など業種ごとに規定が異なり、設備や衛生レベルの要件も変わります。
これを無視して“無許可製造”をすると、業務停止のみならず、社会的信頼失墜につながります。
また、近年は「シェアキッチン」や「委託製造」など第三者利用の仕組みで製造許可を得る事例も増えましたが、最終的な「製造責任者」が誰か(表示責任をどちらが負うか)は曖昧な場合があり、契約書や責任分担の確認が不可欠です。
現場で根付く昭和的アナログ管理をどう変えるか
「紙で記録」「目視頼み」の習慣をアップデートする
食品衛生・品質管理において、今もなお「手書き」「口頭伝達」「ベテランの経験」だけに頼る現場が多く存在します。
これらの昭和的マネジメントでは、トラブル発生時の追跡や、従業員の入れ替わり、行政指導対応が極めて困難です。
現場に根付いた古い文化を、“記録を残す・見える化する”デジタルやICT活用へ移行しましょう。
具体的には、温度記録や製造工程のタブレット管理、異物混入チェックリスト、ラインの写真記録など、導入コストが低いツールから取り組むことで負担感を減らせます。
多様化する消費者ニーズとリスクコミュニケーション
ヴィーガン、グルテンフリー、オーガニック、ハラール対応など、ターゲット別の商品展開が当たり前となりました。
消費者は高い情報感度と期待値を持ちながら、何かあればSNS拡散も一瞬です。
開発時には「お客様がどう使い、どう保存し、どんな誤解をするか」を現場スタッフ全員で想像し、説明書やFAQも用意しましょう。
これは製品リスクだけでなく、ブランド信頼を守る“リスクコミュニケーション”の根幹となります。
まとめ:安全・安心な製品開発に挑戦する心構え
飲食店が自社製品づくりを始めるには、
・衛生管理(人・設備・工程)
・記録・トレースの仕組み導入
・食品表示法、許認可の正しい取得
・現場職人技から標準工程への進化
これらを地道に積み重ねる姿勢が欠かせません。
現場感覚と業界伝統(昭和的アナログ管理)の“良いところ”は丁寧に活かしつつ、法規制遵守とデジタル化で新しい付加価値を追い求めていく。
製造業バイヤーや食品サプライヤーの視点を持つことで、飲食店発・新ブランドの成功確率は大きく高まります。
小さな店から始まった製品が、大消費地の食卓を変えていく。
そんなワクワクするものづくり文化の担い手として、ぜひ次の一歩を踏み出していただけたらと思います。
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