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価格だけで判断しろと言われるたびに感じる違和感

価格だけで判断しろと言われるたびに感じる違和感
はじめに〜なぜ価格が最優先されるのか〜
製造業の現場で長年働いていると、「値段が一番安いところに発注しろ」と上司や経営層から何度となく言われてきました。
確かに企業活動においてコストダウンは避けて通れない命題です。
それ自体には異論はありませんが、私は「価格だけ」を唯一絶対の判断基準にするやり方には、毎回違和感を覚えてきました。
現場の立場からすると、この一辺倒な考え方はむしろ企業全体の利益や持続的成長を損なうリスクがあると感じています。
この記事では、調達購買やサプライヤー選定において価格だけで判断することの危うさと、現場視点で本当に重視すべきポイント、そして昭和から続くアナログ志向がなぜ根強いのかについて深掘りしていきます。
価格だけの判断が現れる典型的な場面
価格重視の姿勢は、多くの場合、短期的な成果を求める経営姿勢からきています。
「今期のコスト削減目標を達成せよ」「同じ部品なら安いところから買えば利益が増えるはずだ」などの指示があからさまに下ります。
特に市場環境が厳しくなり、収益性が圧迫されると、経営層や購買部門は「見積もり競争で一番安い業者に決めろ」という短絡的な発注スタイルに陥りがちです。
コスト比較のためだけにサプライヤーを呼びつけ、「他社はいくらなのか?」としか聞かない会議が日常風景だった方も多いのではないでしょうか。
見落とされがちな”現場目線”のリスク
一見合理的と思われがちな価格第一主義には、さまざまな落とし穴があります。
例えば、以下のようなリスクです。
– 安い部品には品質リスクが潜む可能性が高い
– アフターサービスや納期対応が雑なサプライヤーに当たる危険性
– 必要な品質基準や図面通りの加工精度を持たないサプライヤーによる納品
– 連絡やトラブル対応のレスポンスが極端に遅い
– 不具合や仕様変更への柔軟な対応が期待できない
過去に、“金額が数%安い”ことを理由に発注先を変更した結果、生産現場で不良率が急増し、結局は大幅な手直し費用や納期遅延を招いたケースを何度も経験しました。
更に、現場がクレーム対応に割かれる工数やストレスは、数字になって経営陣の目に見えることは滅多にありません。
それどころか、現場担当者ばかりが「ミスをした」などと責任を被る構図になりやすいのです。
現場のリアル、本当の「コスト」とは何か
価格(単価)は、調達にかかるお金の一要素に過ぎません。
本当の意味での“コスト”とは、調達〜開発〜生産〜品質〜納品までの一連のプロセス全体を見たときに、総合的にかかるリソースや見えない損失も含まれます。
現場目線でのコストは、例えば以下のような要素で構成されています。
– 不良の発生率および手戻り・再作業コスト
– サプライヤーとの意思疎通にかかる無駄なコミュニケーションコスト
– 生産計画への影響や納期遅延による納期調整コスト
– 不具合、品質問題が顧客側に波及した場合のクレームや信頼低下リスク
– 部品仕様の微調整・変更対応への柔軟性
こうした「隠れコスト」は、発注前には見えにくいものですが、後工程や納品後のトラブル時に現場がもっとも強く負担を被ることを、現場経験者なら誰もが実感しているでしょう。
優れたサプライヤーが持つ真の価値
現場を知る調達・購買部門が業者選定で本当に重視すべきなのは、「問題発生時にも柔軟に伴走してくれる関係性」や「突発対応力」「将来的な技術力の伸びしろ」といった、価格以外に見逃せない価値です。
例えば、
– 要望や図面の曖昧さを確認し、提案や補足説明を自主的にしてくれる業者
– 柔軟に短納期対応が可能な生産体制
– 一緒に品質課題を解決し、新しい加工方法のアイデアを出してくれる技術力 など
こういったサプライヤーは、たとえ初期単価がやや高めでも、長期的には全体最適をもたらします。
なぜ昭和的アナログ志向が根強いのか
ではなぜ、「価格だけで」判断するような旧態依然のやり方が、いまも現場に残り続けているのでしょうか。
最大の理由は、評価基準が「目に見える数字」に極端に偏る企業体質でしょう。
単価や見積もり金額は、数字で比較しやすい反面、上記のような“関係性”や“将的メリット”は評価しづらく、かつKPI化が困難です。
また、社内会議で説明責任を果たすうえでも、「一番安いところに決めました」といえば、上層部にとっても納得が得やすいという文化があります。
加えて、日本の業界は未だにFAXや電話注文、対面営業など、紙と口頭でのやり取りが標準な現場が多く、データ化やロジカルな分析が進んでいません。
この結果、「何となく安い方が正義」というムードがいまだに根強く残っているのです。
価格重視に潜む“成長阻害”という最大リスク
価格しか見ていないと、企業はどうしても目先の安さばかりを追い、将来的な成長のための投資やイノベーションを犠牲にしがちです。
例えば、以下が起こります。
– 各サプライヤーの技術力向上や共同開発のチャンスを失う
– 部品や材料の調達が“投資”から“消耗品”扱いになり、差別化が難しくなる
– 「いかに安く、短期間で」だけを追い続けると現場担当者は疲弊し、優秀な人材が育ちにくくなる
競合他社と差をつける“現場力”や“現場の知恵”が企業の最大資産であることを考えると、価格一辺倒の判断はかえって戦略的損失を招きかねません。
バイヤー(購買担当者・調達担当者)の真の役割とは?
本来の調達・購買担当者の仕事は、ただ安いものを見つけて買うことではありません。
現場や事業部門と一丸となって「最適なバリューチェーンを構築すること」、これが本質です。
そのためには、
– サプライヤーの現場を必ず視察し、実態や現場の考え方まで理解する
– 不明点があれば積極的に訪問・コミュニケーションをとる
– 単価交渉だけでなく、サプライヤーとの“共存共栄”の関係づくりに努める
– “品質力”や“信頼性”を正当な評価軸として意思決定に加える
こうした現場密着型バイヤーの努力が、実は最終的なコストダウンや品質向上、顧客満足度アップにつながっていくのです。
サプライヤー側からバイヤーの考えを知る重要性
サプライヤー側が生き抜くためにも「目先の単価」だけでなく、「バイヤーや現場が何を本当に重視しているのか?」を深く理解することが必要です。
– なぜその企業は急な納期短縮を依頼するのか
– なぜ細かい仕様変更や指示が続くのか
– なぜ見積もりが通らないのか
こうした背景には、現場や経営サイドが抱えている事情や課題が必ずあります。
バイヤーとの密なコミュニケーションや情報収集を通じ、顧客の課題に対して自ら提案する攻めの姿勢が、サプライヤーの価値向上につながるでしょう。
現場力を活かした“見極め”がこれからの調達には不可欠
AIやIoT、自動化ソリューションの導入が進み、製造業の現場も急速に変化しつつあります。
しかし、こうしたテクノロジーを最大限生かすには、「現場目線での真の価値判断」がますます重要になっています。
数値に現れない“信頼感”や“現場対応力”を含めた総合的な見極め力こそが、昭和的アナログ文化から抜け出し、持続的な成長を実現するカギとなります。
AIやデータ分析を活用する時代だからこそ、現場が培ってきた経験・暗黙知を融合させる“ラテラルシンキング”が必要なのです。
まとめ:「価格だけで判断」は、もう終わりにしよう
安ければ全てがうまくいく――この単純な発想を、そろそろ卒業しないと、製造業に未来はありません。
コスト競争力は確かに企業の競争軸の一つですが、それだけでは技術も現場も人材も伸びません。
価格だけに惑わされず、「品質」「対応力」「信頼性」など目に見えにくい価値も重視し、現場の知見を最大限に活かすこと。
バイヤー、サプライヤー双方が協力し、Win-Winの新しい関係性を築いていくこと。
これこそが、日本の製造業が世界と戦うための“新しい地平線”を創る第一歩だと信じています。
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