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投稿日:2026年2月10日

IEC 61508と機能安全|製造設備に求められる考え方

IEC 61508と機能安全|製造設備に求められる考え方

はじめに|製造業に迫る「機能安全」への対応圧力

製造業の現場では、毎日数え切れないほどの機械や設備が稼働し続けています。
一方で、それらの機械が突如として人命に関わる大事故を起こす危険をはらんでいることも事実です。
近年、IoTや工場全体の自動化が進む中で「ヒューマンエラー」や「予期しない故障」への備えなど、設備の安全に対する社会的な要請が急速に高まっています。

そんな現場課題への解答となるのが「機能安全(Functional Safety)」の考え方です。
グローバルスタンダードであるIEC 61508は、その実務指針で世界中の製造現場に大きなインパクトを与えています。
しかし、日本の多くの製造業、特に伝統的な“昭和スタイル”が根強い現場では、その意義や実践方法がいまだに十分浸透しているとは言えません。

本記事では、バイヤーや調達担当者、サプライヤーのみなさんにも役立つように、「現場に根付く機能安全とは何か」「IEC 61508への実践的な対応法」「時代を超える業界動向」などを解説します。

なぜ「IEC 61508」が製造現場で重要視されるのか

IEC 61508とは、シンプルに言えば「安全関連システムの設計や管理の国際規格」です。
現代の製造設備は、単なる機械制御から高度な電子システム、制御プログラム、ネットワーク連携まで進化しています。
トラブル発生時の挙動や安全装置の信頼性を、人的な「勘と経験」に頼る時代ではありません。

実際に、日本国内で起きた重大な労働災害の多くが「安全機器の機能不全」や「設計ミスによる制御不備」など、システム依存性の高いトラブルです。
たとえば、「非常停止ボタンが正しく反応しなかった」「フェイルセーフ機能が動作しない」など、設計段階から防げたはずの事故が後を絶ちません。

IEC 61508は、こうした課題に対し、設計フェーズから運用・保守・改修まで「どう安全を作りこみ、維持していくか」を科学的に定めています。
ヨーロッパやアメリカを中心にグローバルサプライヤーが導入を進め、今や国境を越えた調達・取引の“暗黙の前提条件”になりつつあります。

機能安全の基本的な考え方|リスクは「ゼロでは防げない」時代

従来の工場では、「人間の集中力で事故を防ぐ」「標準作業手順に従う」という、いわば“昭和的安全文化”が主流でした。
しかし、複雑化する現場環境や自動化の進展の中で、「人的スーパーマン」はもはや成立しづらいのが現実です。

機能安全の根本は、「装置やシステム自体が、期待通りの動作を保障できるか」というファクトベースの安全思想にあります。
ここではリスクを“ゼロ”にするのではなく、「正当な手順で許容できるリスクまで低減させる」ことを現実的な目標とします。

たとえば、
・センサーやモーターの故障を前提とした安全設計
・ヒューマンエラーがあっても被害を最小化する仕組み
・不具合検出から制御停止までの「安全関連機能(SIF)」をシステムに組み込む
など、多層的な防衛策を築きます。

その根底には「どんなに優れた技術も、必ず壊れる」というラテラルな(横断的・本質的な)視点が必要です。

IEC 61508の具体的な要求とは?|SIL(Safety Integrity Level)を理解する

IEC 61508が要求する最大の特徴が「SIL(Safety Integrity Level)」の導入です。
これは“安全関連システムの信頼性レベル”(0~4段階)を定量的に定めたものです。

SIL1(最低)~SIL4(最高)まで、例えば「どんな事象で、どれだけ頻繁に命や大事故に直結するか」を定量評価し、その数値目標をクリアする設計・運営が求められます。
多くの製造装置ではSIL2~SIL3が要求されるケースが増えています。

つまり、フェールセーフ機能を“何重にも”、しかも設計・開発・保守の全フェーズで書類や手順としてきっちり証明できる体制づくりが必須なのです。
従来の「事故のたびに現場で対応」から「事故につながる根本的なリスクを“作りこみ”で遮断」する時代への大転換が起こっています。

実際の現場での設計・導入のポイント

製造業の現場がIEC 61508対応を進める際、カタログスペックだけで判断せず、現場実装に以下の視点が不可欠です。

・どこが“安全関連機能(SIF)”の境界かを明確にする(異常事態を検知→制御系が反応→安全状態へ移行)
・機器選定から設計時の“リスクアセスメント”を徹底する(本質安全設計とフェイルセーフ思想の両立)
・設計、運転、保守それぞれのプロセスに点検や検証手順を組み込む(書類や記録の証拠化も重要)
・あらかじめ“ヒューマンエラー”や“想定外の使い方”も洗い出して検討し、多重化・自動検知などで予防する

意外と盲点なのは、「認証部品を使えば“自動的に”SIL対応できる」と誤解してしまうことです。
大切なのはシステムとして全体最適、安全状態の証明ができるような設計思想を持つことです。

昭和的アナログ現場が変わるきっかけ|「SIL要求の引き合い」が示す世界の潮流

現実の工場現場では、「ISOやIECの安全規格は難しそう」「うちは伝統の職人技でやってきた」と導入に抵抗が根強いものです。
しかし、実際にグローバル大手バイヤーの引き合い、RFI(情報提供依頼書)やRFQ(見積依頼書)には、ことごとく「SIL要求の記載」が目立つようになってきました。

特に、自動車、化学、エネルギー、食品など大事故が人命や環境に直結する業種では、「SILの目標値」「適合証明書類」の提出が納入先から義務付けられます。
逆に、これらの対応力がないサプライヤーは新規取引から脱落したり、競合に競り負けたりするケースも増えているのです。

この動向は部品メーカーや装置設計だけでなく、「自社工場への内製化」「現場のメンテナンス体制の見直し」にまで波及しています。

バイヤー(調達担当)が機能安全にこだわる理由

バイヤーの現場常識も大きく変化しています。
単なる「スペック」と「コスト」だけでなく、「安全設計がグローバル基準で担保されているか」を重視したサプライヤー選定が加速中です。

背景には、
・納入品や設備トラブルが最終顧客の重大事故・製品リコールリスクになる
・グローバル大手調達部門は「安全保障」「責任追求」の社会的圧力に直面している
・国際調達で“非対応”だと事実上、相手にされなくなる
など、単なる“社内の人命保護”という枠を超えた時代の変化があります。

バイヤーはサプライヤーに対し、「人命損失の回避策」「設計根拠や妥当性のドキュメント」「運用後のトレーサビリティ」まで求める傾向にあります。

サプライヤーが押さえるべき現場視点のポイント

サプライヤー(設備・部品サイド)が今後取り組むべきポイントは、
・「SIL×◯対応」の認証取得や表示だけではなく、 実際の現場導入事例や成功/失敗ポイントの共有
・納入後も「変更管理」「ライフサイクル保全」の体制づくり(アフターサービス含む)
・現場からの声(使い勝手、想定外不具合、改善提案)を次モデル設計にフィードバック
・バイヤー調達部門に対して、技術説明やリスクアセスメントの支援提案を積極的に行う

「法令対応だから」だけではなく、「現場の安全文化と品質保証、企業価値そのものを高めるツール」というマインドセットチェンジが重要です。
昭和型アナログ現場に根付かせるには多少の時間と現場実証がかかりますが、これを“競合との差別化”と捉えて着実に投資・推進していくことが、未来の生き残り戦略につながります。

まとめ|令和時代の製造業にこそ機能安全が必須

機能安全=IEC 61508の導入と実践は、「グローバルで信頼される工場」への大きな近道です。
調達部門もサプライヤー側も、従来型の「コスト至上主義」や「場当たり的な安全管理」からの脱却が急がれています。

事故原因は常に人的なものとは限りません。
ヒューマンエラーや機械故障は必ず起きうるという前提に立ち、その上でシステム全体が「最悪のシナリオにも自律的に耐えうる設計や運用」を目指すことが、まさに機能安全の本質です。

今後ますますバイヤーからの要請、エンドユーザーの信頼確保のため、昭和的な“勘と経験”に基づく経営から一歩先へ抜け出しましょう。
IEC 61508への理解と実践は、現場力だけでなく、会社全体の競争優位性・差別化を強化する最強の武器となります。
安全で持続可能な製造業の未来をこれから一緒に築いていきましょう。

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