投稿日:2025年8月28日

シール番号不一致が発覚したときの即時対応:共同サーベイと警察通報の判断基準

はじめに:シール番号不一致の重大性と現場対応の重要性

製造業の現場において、シール番号の管理は品質保証とトレーサビリティ確保の要(かなめ)です。

一枚のシール、ひとつの番号が持つ意味をあなどってはいけません。

万が一、シール番号不一致が発覚した場合、その場のリーダーや担当者は迅速かつ的確な判断を求められます。

特に、昨今の厳しいサプライチェーン管理やコンプライアンス遵守、そして製品の社会的責任の高まりを背景に、この問題対応はますます重要になっています。

本記事では、シール番号不一致の即時対応策として広く使われる「共同サーベイ」と「警察通報」の判断基準を、長年の製造現場での実体験と管理職としての目線を交えて解説します。

現場目線で実践的なアドバイスを盛り込みつつ、伝統的なアナログ思考から抜け出せない業界だからこそ見逃しがちなリスクについても、深く掘り下げていきます。

シール番号管理の基本と“ズレ”のリスクとは

なぜシール番号管理が重視されるのか

シール番号やラベル番号の管理は、製品や部材の入出庫履歴、ロット管理、不良品発生時の原因追跡に欠かせないものです。

これはISO9001はもちろんのこと、自動車業界であればIATF16949といった業界規格でも求められています。

事実、私が工場長時代に体験した品質監査でも、「なぜこの部品がここにあるのかを5分以内に説明できるか」が大きな指標でした。

シール番号管理を怠ると、万が一のリコール時に「原材料はどこから来たものか」「納品先はだれか」など、重要な情報が曖昧になり、社会的な信用を簡単に失います。

発覚タイミングとよくある“アナログ”トラブル

シール番号の不一致が発覚するタイミングとして最も多いのは、入荷検査や仕掛品棚卸しの場面です。

Excelや紙台帳と現物の突き合わせ作業で、「えっ、このロットだけ一致しない!」というケースが、昭和の現場では特に多発しています。

多くの現場が“発覚してから対策”せざるを得ない背景には、まだまだデジタル化やシステム化が進まない現実があります。

この時重要なのは、「ヒューマンエラーだろう」で済ませず“あらゆるリスクを洗い出す姿勢”を持つことです。

発覚時の即時アクション:現場が絶対にやるべきこと

1. 現場封鎖・二次流出防止

まず絶対にやるべきは、不一致シールの現物(製品・ロット)を他工程や他部署に流出させない「現場封鎖」です。

周囲にいたメンバーには「このロットの取り扱いはストップします」と明確に伝えましょう。

これを徹底しないと、不一致の根本原因の特定が困難になったり、重大クレームや製造責任が会社全体に波及する可能性があります。

2. 関連帳票・システム履歴の即時確認

管理台帳(紙、Excel)、バーコード等の履歴システム、受入伝票など“あらゆる記録”を手分けして確認します。

「どのタイミングから番号ズレが発生しているか」「他のロットへの波及はないか」を洗い出してください。

現場のベテラン作業者ほど「ああ、よくあるよ…」と簡単に流しがちです。

しかし、こうした油断が大事故に直結するケースを私は何度も見てきました。

3. 工程管理責任者・品質保証部門への速やかな報告

隠したり、ごまかしたりは絶対にNGです。

事実を即座に上司や品質保証部門へ報告し、「現状何が分かっていて、今後何が分からないのか」を一緒に整理します。

報告の際は、5W1H(いつ、どこで、だれが、何を、なぜ、どのように)を意識してください。

共同サーベイ(立会い調査)の意義と進め方

共同サーベイとは何か

「共同サーベイ」とは、社内の関連部門(生産管理・品質・購買担当・場合によってはサプライヤー含む)による、現地立会いで真相・事実を洗い出す調査プロセスです。

目的は、「現場の一人称の言い分」だけでなく、第三者の目線も交えた客観的な現状把握と再発防止策の策定にあります。

サプライチェーンが複雑化している現代では、“一人で判断しない・みんなで真実を掘る”ことが求められます。

サーベイ参加者と担当役割の実例

例えば、私が工場長をしていた自動車部品メーカーでは
– 生産現場の担当リーダー
– 品質保証の専門スタッフ
– 調達購買の窓口担当
– 必要に応じてサプライヤーの立会者
がセットで臨むのが一般的でした。

現場では互いに記録写真を撮り、工程図や設計図を広げながら「どこが通常と違うか」を丁寧に洗い出します。

調査のポイントと注意点

– 記録の改ざんや持ち出しがないことを証拠写真つきで確保
– 全ロット、全工程の照合作業を“抜き取り”ではなく“全数”で
– 関連者のヒアリング記録、現物証拠を確実に残す
– 「ここまでで分かったこと」「これから調査が必要なこと」を随時言語化して共有

共同サーベイで大事なのは、「責任のなすり合い」ではなく“事実確認に徹する姿勢”です。

社内だけでなく、サプライヤーとの信頼関係維持にもつながります。

警察通報が必要なケースの判断基準

業界常識とコンプライアンス意識のギャップ

“警察通報”は、現場では極端な対応にも見えます。

「そんなことまで必要なの?」と疑問を持たれるアナログ現場も多いものです。

しかし、業界全体を俯瞰してみると、通報すべきケースは明確に存在します。

– 意図的なシール貼り替えや偽造が認められた場合
– 重要部材や高額製品等、会社資産の不正な持ち出し・横流しが疑われる場合
– 社内、取引先いずれかにおいて、著しく悪質な行為(背任・窃盗等)の可能性がある場合

これらはいずれも、 社内規定や会社の判断で闇に葬ることなく、公的な第三者へ報告・相談する義務があります。

通報の判断フローと社内体制の整備

まずは、会社の就業規則や情報セキュリティ規程を確認すること。

多くの大手メーカーでは、「警察通報・法的措置の適用例」を明文化しています。

実際の現場では
1. 直属上司・品質保証責任者へ第一報を入れる
2. 管理職・法務部門で初動判断会議を開く
3. 証拠保全と被害状況(流出規模など)を整理する
4. 会社の最終方針として「警察通報が妥当か」を決める

この一連を迅速に回せる体制こそ、リスクコントロールの要です。

昭和的“穏便主義”への警鐘

「これは現場内の問題だから、上にはナイショで済ませたい」

「サプライヤーとの仲を壊したくないから、警察沙汰は避けたい」

よく聞く言い訳ですが、これは現代のコンプライアンス基準では通用しません。

一度発覚すれば、SNSや外部リークによって企業ブランドが一瞬で瓦解する時代です。

現場担当者ほど「報告・通報をためらわない勇気」を持つことが、業界の健全化・発展につながります。

現場とバイヤー・サプライヤー、三方よしのコミュニケーション術

不一致が繰り返される現場の“本音”

「またか…」「やってられないよ…」

現場でシール不一致が連発すると、どうしても“慣れ”や“諦め”が蔓延しがちです。

それでも、生産・調達・品質すべての立場で共通するのは「正しい情報が信頼の基盤」という事実です。

サプライヤーには「現場の声」を率直に伝えましょう。

たとえば
– 「今回なぜ発生したか一緒に分解してみませんか」
– 「追跡調査を通じて現場改善案も一緒に考えましょう」
– 「今後、同じ仕組みを仕入先にも徹底頂けますか」 といった協調スタンスが、長期的なバイヤー価値につながります。

バイヤーが知っておくべき“現場のリアル”

バイヤーの立場からすれば、
「一つのミスでサプライヤーの未来まで左右したくない」
「でも、自社の信頼や製品安全、法令順守は譲れない」 ジレンマを強く感じるはずです。

現場に深く足を運び、シール管理の手順や苦労の現場を見ることで“規格が形だけでない”という認識を持てます。

また、重大インシデントへの「警察通報も躊躇しない毅然とした姿勢」は取引先との信頼を高め、クリアなパートナーシップにつながるのです。

サプライヤーから見たバイヤーの“本音”を理解する

「なんでそこまでシビアに突いてくるんだろう?」
「単なるミスなのに…」サプライヤー現場でよくある声です。

しかし、バイヤー側の真の目的は「末端ユーザーまで安全・安心を保証すること」に他なりません。

発生事案を共有し、感情論で終わらせないためには、「なぜ、どこが、どこまで調べる必要があるか」を論理的に説明しましょう。

それが業界全体の品位向上と、強い信頼関係の礎になるのです。

まとめ:アナログ業界だからこそ、“透明性”と“即応力”を

シール番号不一致は、単なるミスや現場のヒューマンエラーで済ませるべき問題ではありません。

共同サーベイによる「原因追及と組織的対策」、 そして悪質なケースへの警察通報という姿勢が、 サプライチェーン全体の健全化と信頼維持に直結します。

昭和的な現場主義や隠ぺい体質が根強く残る業界だからこそ、“透明性”と“即応力”の徹底が差別化要因になります。

セーフティカルチャーは、今日では企業ブランドそのものです。

現場・バイヤー・サプライヤーが一丸となり、時に厳しい決断を恐れずに進むことで、 安全で質の高い日本のモノづくりを次世代へとつないでいきましょう。

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