- お役立ち記事
- 日本企業が求める“実機確認”の重要性と対応策
日本企業が求める“実機確認”の重要性と対応策

目次
はじめに:日本の製造業に根付く“実機確認”とは
日本の製造業に関わるバイヤーや調達購買担当、あるいはサプライヤーの皆様にとって、“実機確認”という言葉は日常的に耳にするものかもしれません。
この“実機確認”というプロセスは、単に設備や部品をカタログスペックで選定するのではなく、実際の現場や工場でその機器や材料がどのように動作し、性能を発揮するかを自分の目で確かめ、体感することを意味します。
欧米や新興国と比較した時、日本企業がここまで“実機確認”に力を入れる理由には、いくつもの歴史的・文化的背景があります。
また、その一方で、DX(デジタルトランスフォーメーション)やグローバルサプライチェーンが進む時代において、昭和的な“実機主義”が時に非効率とされる側面も出てきています。
本稿では、現場のリアルな経験と業界の動向を交えながら、日本企業がなぜ“実機確認”にこだわるのか、そしてバイヤーやサプライヤーがどのように対応するべきかを深掘りします。
なぜ“実機確認”が重視されるのか
1. 日本の品質管理文化の影響
日本の製造業における最大の特徴の一つが「品質至上主義」です。
自動車、電子部品、機械装置など、どの分野にも共通するのは、「不良品を絶対に市場に流さない」「顧客からの信頼を最優先する」という強い責任感です。
図面や仕様書には現れない微細な違いや、現場独自の使い方によって生じるリスクを事前に排除するために、「机上検討」や「カタログスペック」だけではなく、必ず“実機確認”を挟みます。
現場の担当者、管理職、場合によっては経営層までもが自ら足を運び、動作確認や組み付けテスト、実際に加工・生産現場に投入してみるといった行動は、こうした価値観に根差しています。
2. 不測のトラブル回避=昭和から続く“リスクゼロ志向”
日本の製造業は、「現役で30年使う」ような設備や、「10年ノーメンテナンスでも誤動作しない」など、極めて保守的・堅実な運用設計を理想としています。
このため、「一見大丈夫そう」でも、“実機確認”を通じて想定外のトラブル(微細な干渉、静電気による誤作動、温度変化での膨張、現場作業員の負担など)を炙り出し、導入前に全てのリスクを潰しておく文化が昭和から続いています。
新しいモノ・サービスを導入する際も、現場レベルで試用し、不具合や未対応部分をドキュメント化して報告、場合によってはさらに追加検証し…といった丁寧なプロセスを経ます。
海外メーカーやベンチャー系ソリューションが「なぜ日本の工場はこんなに認証や現場テストが多いのか」と感じる背景には、この“リスクゼロ志向”があるのです。
3. 技術力と技能伝承の現場主義
日本の現場には、「百聞は一見に如かず」「使ってみなければ分からない」という職人魂が根付いています。
例えば、機械の加工精度や耐久性はカタログでは“±0.01mm”と表記されていても、実際に工場で回してみると基礎の据え付け精度や現場の騒音環境によって差が生じます。
生産管理や工程設計でも、「カタログ値100台/時」とあっても、実際の材料や人の動き、狭い通路での作業性など現場特有の問題が数多く出てきます。
こうした現実的な視点から、“現物を触ってみて初めて見えてくる”問題を軽視しないことが、伝統的な日本のものづくり現場では強く重視されているのです。
バイヤー・購買担当が“実機確認”を求める理由
法令・規格遵守とトレーサビリティ強化
ISO認証、JIS規格、RoHSやREACHなど各種の法令・業界標準に適合していることを証明するためには、ファクト(事実証明)が不可欠です。
文書やデータシート、メーカーの保証書記載だけではなく、バイヤー自ら“現場でのチェック・テスト記録”を保持し、取引先や監査の際にエビデンスとして提出する役割があります。
このエビデンス文化が、日本独自の“実機確認”徹底に拍車をかけています。
現場ニーズの深堀り=多様な関係者への配慮
生産現場、保全、品質保証、経理、経営層――調達プロセスに関与する関係者は非常に多岐にわたります。
バイヤーは単なるスペック適合を見極めるだけでなく、「現場の作業負荷は減るか」「品質不良が出ないか」「保守メンテ費用は増減するか」といった様々な利害調整役を担っています。
このため、取引品目の導入における“実機確認”は、社内外の調整やリーダーシップの発揮にも直結します。
取引先・サプライヤーへの要求の高まり
従来は日本の大手メーカーだけが“実機確認”にこだわっていましたが、昨今は中堅・中小企業でも「取引先に見せられるエビデンス」がなければ商談が進まない例が増えています。
このような背景から、バイヤー自身が「自社・顧客の厳しい“実機確認”基準を随時アップデートし、社内教育や外部コミュニケーションに活かす」動きが広まっています。
サプライヤーが実機確認にどう応えるべきか
“見せる工場”へのシフト
サプライヤーにとって「現場での実機立会い」「工場視察・監査」対応は、大きな負担である反面、自社の強みやこだわりをバイヤーに直接アピールできる絶好の機会でもあります。
生産ラインの導入工程や品質保証プロセス、IoTや自動化の取り組みなど、「見せる」体制を日頃から整えておくことがますます重要になります。
自社の現場を開示・可視化することで、信頼感や安心感アップはもちろん、「現場改善力」や「対応力の高さ」といった競争力にも繋がります。
エビデンス資料・検証記録の体系化
日本のバイヤーから求められる「検証データ」「評価試験」「作業手順書」「不具合発生時の再発防止策」などは、そのまま信頼関係の証明書となります。
検証内容を体系化し、「誰が見ても分かりやすい形式」でまとめておくことは、今や不可欠なサプライヤースキルです。
社内のナレッジデータベース化や、情報の標準化・見える化(写真や動画活用など)が信頼構築の基本となります。
リモート・デジタル活用の新潮流
コロナ禍や人手不足を背景として、現場での立会に加え、「リモート実機検証(オンライン立会い)」「動画レポート」など、デジタル技術を活用した新しい検証手段も急速に普及しています。
日本の“実機主義”も、この流れを受けて「現場でしか分からない情報」+「遠隔・デジタルの利便性」を融合した新たな段階に進みつつあります。
これからのサプライヤーは、現場実機確認対応力とともに、デジタルデータの即時提出対応など、複数手段を柔軟に組み合わせてバイヤーのニーズに応えていく必要があります。
昭和的“現場主義”からの進化:アナログ×デジタルの融合を目指して
“現場でしか分からない”“百聞は一見に如かず”――この価値観が日本のものづくりを高めてきたことは間違いありません。
一方で、過剰なアナログ文化が「RPA・AI化の遅れ」「サプライチェーン全体のコスト増大」といった課題も生み出しているのが現実です。
現代の調達・購買、バイヤーのプロフェッショナル、サプライヤーに求められるのは、
「現場主義で磨かれた高品質とリスク低減」
「デジタル活用による効率性とスピード」
この二つの最適なバランスを探りながら、より戦略的・持続可能なサプライチェーンを実現することです。
例えば、
・生産ラインのIoT化による“常時見える化&リモート実機検証”
・AI解析と現場技術者の判断力の組み合わせ
・トレーサビリティ管理システムと現場写真・動画の統合データベース構築
といった取り組みが今後ますます重要になっていくでしょう。
まとめ:“実機確認”の本質を理解した対応が競争力を生む
“実機確認”は、日本の製造業が長年にわたり培ってきた「現場重視の品質文化」の象徴であり、今後もバイヤー・サプライヤー双方にとって不可欠なコミュニケーションの場です。
単なるプロセスの一部と捉えず、
・バイヤーは現場の本音・ニーズを深く汲み取ったうえで調整力を発揮すること
・サプライヤーは「見せる現場」「体系化したエビデンス」で信頼を高めること
・アナログの良さとデジタルの効率を柔軟に融合させること
これらが日本の製造業がグローバル市場で輝き続けるための新たな地平線となります。
現場目線の実践知と技術革新、それぞれの経験や知恵を持ち寄りながら、日本発・世界標準のサプライチェーン最適化を共に目指していきましょう。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)