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OEM開発で軽視されがちな“配送仕様”の重要性

目次
OEM開発における配送仕様の現状〜なぜ軽視されるのか
OEM(Original Equipment Manufacturing)開発は、製品企画から設計、試作、量産まで多くの工程が絡む複雑なプロセスです。
この中で、品質要求・コスト・納期などは当然ながら注目されますが、その一方で“配送仕様”は軽視されがちです。
なぜ配送仕様が後回しになるのか。
その背景には、開発や生産現場ではどうしても「ものづくり」本体に意識が集中しやすい構造があるためです。
製品が規定の性能・コスト・納期で完成しさえすれば、その後の物流工程は“規定通りに流れるもの”という先入観が根付いていませんか。
これは、とくに昭和から続くアナログな体制が色濃く残る製造現場ほど強い傾向です。
しかし、グローバルなサプライチェーンが当たり前となった現代において、配送仕様の不備は重大なトラブルや損失へ直結するリスクを孕んでいます。
配送仕様が重要視されるべき理由
品質クレームや返品の温床となる
配送仕様とは、梱包・パレット積付・搬送形態・ラベリング・到着後の取り扱い条件など全てを含みます。
たとえば静電気に弱い電子部品なのに、導電性のない袋に裸のまま入れて発送した場合、納品後に高確率で不良(初期故障)が発生します。
目立たない小さな仕様ミスが、大量返品・損失のきっかけになるのです。
現場では「最終工程でできた品をそのまま箱詰めすればよい」と安易に判断しがちですが、取引先ごとに要求が異なるため慎重な検討が不可欠です。
下流工程・サプライチェーン全体の効率に直結する
配送仕様の設計は最終納品先の現場作業にも強く影響を与えます。
たとえばコンテナ単位で丁寧にパッキングされてきた部品が、現地工場では個装分解・再仕分けが必要な場合、手間と時間、場合によっては追加コストが発生します。
バイヤー(購買担当者)はこの「見えにくいトータルコスト」を常に気にしています。
自社工場や最終顧客にとって“真に使いやすい形”で納めてもらえるサプライヤーを高く評価することが業界スタンダードになりつつあります。
法規対応やエコの観点でも影響力が大きい
近年では物流に絡む法規制の強化(例:パレット材質の指定、危険物輸送規則など)、環境配慮の要求(リサイクル資材の使用、減容化など)が進んでいます。
配送仕様への配慮不足が結果として法令違反・環境クレームの発生要因となるケースは、もはや“あるある”の領域です。
よくある失敗例と実際の現場での対処事例
失敗例その1:梱包形態の誤認
設計開発サイドがサンプル出荷は丁寧な化粧箱、量産からは簡易なダンボールへ切り替えて出荷すると、初回の現場受入れ時に混乱が頻発します。
→対処:出荷仕様書を事前に購買・物流部門・ユーザー(三者)でレビュー。受け入れ後の保管・運搬フローまで確認を徹底します。
失敗例その2:パレットのサイズ不一致
欧州向け出荷の際、現地の倉庫エリア(EU仕様パレット)では日本規格のパレットサイズが搬入できない・棚に載らないなどのミスマッチ事例は頻発しています。
→対処:納品先の現場(現地工場、ロジスティクス担当)とオンライン接続・現地視察を通じ、受入れ条件を必ず実地確認させます。
失敗例その3:誤ったラベルや品番表記
同じ型式で微妙に異なるカスタム品を複数生産している場合、ラベル表記やバーコード仕様が合っていないことで誤混入や納品ミスが発生します。
→対処:第一に、ラベル仕様の標準化とシステム連携を徹底化します。第二に、サンプル運用・検証期間を必ず設けてから本番出荷へ切り替える運用ルールとします。
OEMバイヤー・サプライヤーは配送仕様をこう考えよう
バイヤーの立場:納品の“ラストワンマイル”こそ競争力の源泉
バイヤーの視点では、色々なサプライヤーから同スペック・同価格帯の部品を集めることは容易です。
実力の差がつくのは、他社よりトラブルなくスムーズに自社現場へ届く調達力です。
配送仕様の詰めが甘いサプライヤーは、現場混乱やクレームの温床となるため、結果的に優先順位を落とされやすくなります。
配荷形式、仕分け単位、ラベル一つまで「現場で手間なくすぐ使える」仕様提案ができるパートナーは間違いなく重宝されます。
サプライヤーの立場:配送価値そのものを売り込もう
単なるモノの供給だけでなく「届け方」にまで価値提案を意識しましょう。
初期検討段階から「貴社現場の運用負荷を最小化できる納品スタイルをご提案します」とアピールできれば、競合他社と大きな差別化ポイントとなります。
また、量産移行前に“仮納品(プロトパック)”を実施し、実際の現場受け入れテストを双方で行うことで、納品トラブルを未然に防ぐことも重要です。
双方に共通するポイント:現場同士の“対話”が最重要
配送仕様のトラブルは、机上のやり取りだけで決定された場合に起こりがちです。
サプライヤー・バイヤー双方の現場担当者が声を出し合い、物理的な現物や梱包写真を持ち寄って検討する「現場レベルの交渉」をセットすれば、多くのトラブルを予防することができます。
デジタル化時代のOEM配送仕様はどう変わるか
IoT・AI活用で“見えない課題”を可視化する
近年、IoTタグやAI画像解析を使い、実際の物流プロセス(揺れや衝撃負荷・温度変化・移動ルート等)の“データ化”が進んでいます。
この情報をOEM開発初期から組みこむことで、「想定外の故障リスクを予防」「運用最適化」の精度向上が可能です。
たとえば「輸送中の温度上昇傾向」「搬送角度のブレ」などは、現場では“感覚頼み”になりがちですが、データに基づく根拠を出せる企業ほど、設計段階からクライアントの信頼を獲得しやすくなります。
標準化と個別最適化の両立が大きな課題
グローバル展開が進む中では「共通配送仕様」と「顧客/エリア別カスタマイズ」の切り分けが大きな論点となっています。
一律の出荷パターンでは通用せず、納品先の特性へカスタマイズする力が求められますが、同時に標準化・省人化も進めなければコスト競争に負けてしまいます。
このジレンマにどう立ち向かうか——自動化設備導入やITシステム活用による「柔軟な配送仕様チェンジ設計力」が競争力の鍵となるでしょう。
まとめ:配送仕様の改善がOEM開発の未来を変える
配送仕様は、これまで「ものづくり」の陰に隠れた部分でした。
しかし、製造業の効率競争・グローバル化・品質経営の流れが進む今、配送仕様の設計次第でOEMビジネス全体の成否が大きく左右されます。
バイヤーを目指す方は、現場視点を持って本当の“価値供給者”になるために配送仕様ノウハウを身につけることを、強くおすすめします。
サプライヤーとしては、「作る」だけでなく「届けること」にも知恵と工夫を絞ることで、これまで競合に埋もれていた自社の存在感を劇的に押し上げることができるはずです。
現場の声・経験を生かし、OEM開発に“配送仕様”という新たな地平線を切り拓いていきましょう。
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