ペット用アクセサリーOEMで重要な安全性試験と規格基準

ペット用アクセサリーOEMで重要な安全性試験と規格基準

はじめに：ペット市場の成長と安全への意識

近年、ペットを家族の一員として大切にする考え方が一般的になり、ペット関連市場は急速な成長を続けています。

特にペット用アクセサリー、たとえば首輪、リード、ハーネス、洋服、おもちゃなどの需要が拡大しています。

こうした需要の高まりの中、OEM（Original Equipment Manufacturer：相手先ブランド名製造）としてペットアクセサリーを供給するメーカーやバイヤーにとって、単にデザインや機能性を追求するだけでなく、「安全性の高さ」が製品の信頼を大きく左右する重要な要素となっています。

本記事では、20年以上の製造業現場経験をもつ筆者が、ペット用アクセサリーOEMにおける安全性試験と規格基準の実態、現場での取り組み、そしてアナログな業界が直面する課題も交えつつ、深くかつ実践的に解説します。

OEMで求められる“安全性”の本質

ペット用アクセサリーにおける「安全性」とは、単に壊れにくい、尖っていないといった単純な意味にとどまりません。

実際の現場では、ヒト用製品とは異なる独特のリスク、たとえば「ペット自身による誤飲や窒息」「強い引っ張りによる破損と脱走」「アレルギーや皮膚炎の原因物質混入」など、動物の習性や飼育環境ならではの危険が潜んでいます。

バイヤー目線でも、最終ユーザーである飼い主のクレームやリスク回避、防犯意識の高まりを強く意識しています。

サプライヤー側は、単なるスペック提供ではなく、「この製品なら安全だ」と言い切れる論拠＝各種試験データや実績の提示が必須となります。

主要な安全性試験の種類

ペット用アクセサリーOEMで一般的に実施・要求される安全性試験は、次のようなものがあります。

• 物理的安全性試験：耐荷重試験、耐引張試験、耐衝撃試験、部品の強度確認など
• 化学的安全性試験：有害物質（鉛、カドミウム、フタル酸エステル、ホルムアルデヒドなど）の含有分析、染色堅牢度試験
• 生物学的安全性試験：動物アレルギー検査、皮膚パッチテスト
• 摩耗・耐久性試験：繰り返しの引っ張り・屈曲・摩耗に耐えうるかのシミュレーション
• 製品全体としての事故防止試験：小部品の脱落・誤飲防止確認、先端部の角丸加工・バリ除去確認

特に取り扱う動物の種類（犬、猫、うさぎなど）や体格によって、求められる基準は大きく異なります。

安全性「規格基準」の具体例と最新動向

ペット用品分野における規格基準は、JIS（日本産業規格）やASTM（米国材料試験協会）などの公的規格が一部存在しますが、多くは自主基準や業界ガイドラインに基づいています。

たとえば、ペットフードでは「ペットフード安全法」があり一定のルールがありますが、アクセサリー関係は未整備な点も多々残っています。

そのため、OEM現場では「子供用用品」の法規制（玩具安全基準EN71やアパレル規格ISO 8124等）を参考にした基準設定や、北米・欧州向けではCPSIA（米国消費者製品安全改善法）・REACH（欧州の化学物質規制）などの準拠が実質的な標準となるケースが増えています。

国内に目を向けると、（公社）日本動物用医薬品協会や（一社）ペットフード協会が中心となりガイドライン作成を進めるなど、自主規制の強化が進行中です。

近年では、ペットと飼い主の生活への寄り添いを強調するブランド戦略の影響もあり、サステナブル素材や動物愛護への配慮、衛生面の強化といった点も規格・チェック項目に追加されつつあります。

現場の実践：アナログ現場からの脱却ポイント

日本の製造業現場、特に中小のOEM工場は、いまだに「昔ながらの勘」や「前例踏襲」が根強いアナログ体質にあります。

事故の多くは、「過去に大丈夫だったから今回は省略」「発注者が求めていないから最小限で済ます」といった油断から生じます。

実際には、現場レベルで次のような意識改革・仕組みづくりが不可欠です。

• 設計段階で安全・規格審査を「最初から盛り込む」こと（後工程での手戻り防止）
• 試験データを一元管理し、バイヤーにいつでも開示できる環境・ルールづくり
• 現物サンプルや3Dデータを使い、バイヤー・設計・工場で事前シミュレーションを実施
• トレーサビリティ（原材料から製品への履歴管理）の強化
• 現場スタッフへの継続的な教育と危険感受性の向上訓練

特に、バイヤー担当者（調達・購買）が現場へ足を運び、実際のラインや検査場を自分の目で確認することは非常に意味があります。

また、IoTセンサーや画像認識技術を活用し、抜き取り検査から全数検査へと切り替える先進事例も増加しています。

バイヤーの視点：OEM先の選び方・交渉ポイント

バイヤーがOEM候補先を選ぶ際、「見積金額」「納期」「生産能力」だけでなく、今や「安全基準への対応力」「試験体制の有無」が決定的なファクターとなっています。

現役バイヤーに多い悩みの一つは、「言ったことはできると言うが、本当に試験・データ管理ができているのか？」という見極めの難しさです。

こうした不安を払拭するためには、
– 過去の事故歴／クレーム履歴の開示
– 安全試験データの第三者機関証明書面の提出
– 苦情対応マニュアルや製品リコール体制の説明
– 現場見学や品質監査の受け入れ
などを協議初期からしっかり求めましょう。

サプライヤー側としては、単なる「お受けします」だけでなく、自社の試験・検査・記録のフローをビジュアル化して提案できると、信頼アップに直結します。

よく見落とされがちな点は「仕様変更時の再試験」と「PE（プロセスエンジニア）や検査員の力量証明」です。

どんなに厳格な製造工程を整えていても、人が変われば品質トラブルの温床となりやすいため、工程監査の中で「人への依存度」「力量維持」の部分にも踏み込んだ交渉が有効です。

昭和からの脱却と先進現場のラテラル（水平）思考

従来の「やればいい」「規定どおりにやればOK」という縦割り意識では、複雑化する製品・市場ニーズには応えられません。

筆者が現場で痛感したのは、「現場（現物・現実・現認）」をベースにしつつ、調達・設計・品質保証・営業・マーケ部門が“壁”を越えて情報を紡ぐ、いわばラテラル（水平的）な連携の重要性です。

たとえば、ユーザーからの信じられない事故事例（「犬が首輪をかじって壊れた」、「装着したまま水遊びをして発疹が出た」など）は、従来の試験項目だけでは対応しきれません。

こうした事例を他部署・他社・異業種とも横断的に共有し、
– 「利用中にどんな環境変化があるのか？」
– 「動物の動き・習性はどうカバーされているか？」
– 「想定外の使われ方・二次被害は？」
と、徹底的に深堀りする組織マインドチェンジが求められています。

また、海外法規制の動向にも常にアンテナを張り、「まだ国内で義務ではないが5年後の標準になりそう」なルールへの先取り対応が OEMサプライヤーとしての大きな差別化ポイントになります。

まとめ：ペット用アクセサリーOEMの持続的成長のために

ペット用アクセサリーOEMにおける安全性試験・規格基準対応は、「コスト」ではなく「信頼とブランド価値の投資」となります。

どんなに品質基準が厳しくなっても、それを“現場の知恵”で乗り越える力こそ、今後ますます重要です。

OEMサプライヤーもバイヤーも、“事故がゼロになる安全”を真剣に追求し、アナログ体質からの脱却・情報水平連携によって、誇りある”Made in Japan”をさらに世界に広げていけるでしょう。

最後に、現場で働く全ての方々が、安全性への取り組みを単なる義務でなく「自分の家族にも使わせたい製品づくり」へと昇華していくことが、日本の製造業の発展の鍵だと私は確信しています。