投稿日:2025年9月6日

ピック数削減のための部品配置と梱包設計で組立効率を向上

ピック数削減のための部品配置と梱包設計で組立効率を向上

はじめに:なぜピック数削減が今、重要なのか

製造業における現場の効率化は、永遠の課題と言えるでしょう。
その中でも組立作業の効率化を阻む最大の要因のひとつが「ピック数」の多さです。
組立作業員が部品棚やラインサイドに設置された箱から複数の部品を探し、集め、持ち運ぶ。
この“ピッキング”という行為は、一見単純ですが、工数や神経を非常に消耗し、生産性の大きなボトルネックになっています。

「部品配置や梱包設計の見直しによってピック数を減らす」ことは、まさに昭和から続く“アナログな組立現場”にも残された、今なお改善余地の大きい領域です。
また、近年の人手不足や多品種少量生産の加速によって、より効率的かつムダのない組立プロセスの構築が、経営の競争力に直結しています。

本記事では、生産現場の実態と、「ピック数削減」に向けた部品配置・梱包設計のコツと、業界動向も踏まえながら、現場目線・バイヤー目線の両方から具体的に解説します。

ピック数が組立作業に与える影響

多くの工場が“作業指示書通りに組み立てる”というプロセスに重きを置きがちですが、そもそも「部品の取り出しにかかる時間」「箱探しや部品探しのムダ」は、しばしば現場で見過ごされがちです。

組立にあたり、1台あたり50点の部品を20回に分けてピックする場合と、20点の部品を3回でピックする場合では、合計の“探す・運ぶ”時間に大きな差が生まれます。
また、多品種少量生産が進めば、部品種も梱包形態も複雑化し、現場の混乱を招く温床となります。

ピック数(ピッキングアクション数)を減らすことは、
– 組立時間の短縮
– 作業品質の均一化(ミスの防止・部品の取り間違い抑止)
– 作業者のストレス軽減と疲労防止
– ラインバランスの最適化

など、多岐にわたるプラス効果をもたらします。

業界の現状:昭和の仕組みに潜む“ムダ”

製造業の現場には、いまだに「とりあえず箱で送って並べておく」「部品棚はモノが多いほうが安心」という発想が根強く残っています。
サプライヤーにしても、「とにかく部品を出荷する」「指定個数通りに小箱に入れる」で、現場の組立効率まで考えが及ばない場合がほとんどです。

中には1つの組立品に対して、5つの棚、10種類の梱包箱から部品をバラバラに集める必要があるラインも珍しくありません。
特に、長年続くライン・工程では「昔からこうしている」「仕様書にそのように書いてある」という理由で、改善機会をみすみす逃していることもあります。

さらに、ピース売りが当たり前だった部品が、最近では「ワンパッケージ化(アッセンブリ化)」として現場でのピック数削減に大きく貢献していますが、その動きは未だ一部メーカーや欧米系工場にとどまっているのが実情です。

ピック数削減のためのアプローチ1:部品配置の工夫

部品配置は「どの部品が、どこに、どの向きで置かれるか」が本質です。
日本のアナログ業界では特に、つぎのような工夫が有効です。

作業手順を徹底的に観察・可視化する

まず、作業者ひとりひとりの“実際の動作”をストップウォッチ片手に観察します。
組立工程の動画・タイムスタディを使い、「どこで探しているのか」「どのルートで歩いているのか」「どの順に部品や梱包箱を開封しているのか」を徹底的に“見える化”します。

現場作業者へのヒアリングも忘れてはいけません。
現場のベテランほど「この部品、もっと手前にあればいいのに…」「AとBは一緒に取るのが決まり」といった“暗黙の工夫”を持っています。
これを集めて「組立作業の動線」「ピック順序の最適化マップ」を可視化します。

必要部品群を一箇所に集約・ユニット化

1台の組立に使う主要部品セットを、できるだけ“ひとまとめ”にして配置するのが理想です。
たとえば、
– 小型部品はカート内の引き出しに「組立工程順」に並べて収納する。
– 必要最小限の部品セット(特定ビスとワッシャー、Oリングなど)を組み合わせて「キット化」して組立位置に供給する。
– 仕掛り品と部品のセット供給(セル生産方式)によって、毎回部品棚やワゴンを往復せずに済む。

など、ピック数自体を大幅に削減できます。

ABC分析・パレートの法則を活用した配置

現場で使う部品の「使用頻度」「重要度」に応じて棚やラインサイドの配置を工夫します。
具体的には、80:20の法則を適用し、「全ピック数の80%を占める主要20%の部品」を最も取りやすい位置に配置します。
逆に、使用頻度が低い部品はやや奥や一段下に設置し、作業者の歩数・アクションを最小限にステージングします。

ピック数削減のためのアプローチ2:梱包設計の最適化

サプライヤーや購買担当者の立場から見ると、「部品種ごとの適切な梱包形態の追求」も重要です。
単なる“バラ”の箱詰めや、まとめすぎた大箱では、現場での2次ピック・3次仕分けの増加を招きます。

キッティング梱包の推進

複数部品(例:ビス・ナット・Oリング・シールなど)を「1台分ワンセット」や「工程毎セット」として梱包しラインサイドに供給する(キッティング)が非常に効果的です。
このとき、バーコードや色別仕切りで部品の取り違い防止対策も同時に行うのがポイントです。

たとえば、組立工程でA/B/Cという3品種を同時使用する場合、「A・B・Cの3点セットとして袋詰めし“3ピック→1ピック”に圧縮」することで、作業者のピック動作が激減します。
この「ワンパック・アッセンブリー梱包」は、欧米系サプライヤーや自動車業界で先行して導入されていますが、日本の中小部品サプライヤーでも十分実現可能です。

現場目線/バイヤー目線での最適梱包設計のヒント

– 「作業現場と出荷現場が密にコミュニケーションをとる」
– 組立現場からの「こうしてほしいリスト」を受け止め、積極的に梱包設計へ落とし込む
– SKU最適化(梱包単位を工数・工程・1台ごとに見直し在庫管理もシンプル化)

が、バイヤー・サプライヤー双方にとって効率的です。

また、パレットやカートンを現場導線ごとに分割したり、色やQRラベルで“工程毎・用途毎”に梱包を最適化する動きもあります。
特にエレキ部品や小物部品では、個包装のままラインに供給されることで、漫画のようなピック事故や部品ロスを大幅に減らすことができます。

紙一重の工夫が積もり積もれば大きな時間短縮に

現場でよく見かける「部品取り間違い」「ピック数過多」「部品在庫の過剰・欠品」などのトラブルは、部品の配置・梱包改善だけで劇的に減ることが何度も立証されています。
たとえば、
– 1日の組立ラインで「ピック回数1回減×50台分」で、“作業時間20分短縮”
– 同じ工程で同じように部品を探させるのではなく、作業者ごとの癖にあわせて配置するだけで、「探す時間10秒×数百回」で“月間人員1名分の作業量削減”

こうした地道な改善の積み重ねが、結果として生産性向上・現場力の底上げにつながります。

IoT・デジタル技術の活用による次世代ピッキング

昭和型アナログ現場でも、最近はタブレット・バーコードリーダーやIoT棚札などの導入が進み、「どこに・何が・いくつあるか」をデジタルで見える化する動きが加速しています。

例えば、
– ピック照合用のバーコードスキャン
– LEDやランプで“次に取る部品”を点滅表示する
– ピック記録データから最適配置をAIが自動提案

など、次世代型ピッキング支援技術がますます普及しています。
しかし、これらのデジタル化も「そもそもの部品配置と梱包設計が合理的でなければ真価を発揮できない」のが現実です。
“現場の泥臭い知恵”と“デジタルの力”を組み合わせることで、初めて本当の意味で持続的なピック数削減が実現できます。

まとめ:ピック数削減が現場を変える、バイヤーとサプライヤーも「組立効率」の本質を追求しよう

ピック数の削減は、現場の効率化・品質管理はもちろん、
– バイヤー視点では「仕入先選定・コスト競争力向上」
– サプライヤー視点では「取引先への付加価値提案・差別化」
– 生産管理部門では「スムーズな工程進行、人的依存からの脱却」

いずれにも大きな影響があります。

組立現場で日々感じる“モヤモヤ”や“イライラ”の正体は、意外にこうした「部品配置・梱包のズレ」からきている場合が多いものです。
ピック数削減は、現状の工程を一歩引いて見直すだけでも大きく前進します。
現場・バイヤー・サプライヤーが一体となり、「部品ピッキングの本質」を追求すれば、製造現場は必ず一皮むけます。

ぜひ、今日から自社の部品配置・梱包設計を見直し、効率的かつストレスフリーな組立ラインづくりにチャレンジしてみてください。

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