投稿日:2025年8月18日

項目の日本語ゆれを辞書化し検索ヒット率を上げるテキスト整備

はじめに:製造業における項目名の日本語ゆれが起きる原因とその影響

製造業の現場、特に調達購買や生産管理、品質管理といった部門では、同じ内容を指す用語であっても現場や部門、さらにサプライヤーごとに異なる呼び方をしていることが多々あります。

この「日本語ゆれ」は、情報共有・システム化・標準化を進める際の大きな障壁となります。
アナログ文化が根強く残る工場では、目で見て・声で伝えるコミュニケーションが今なお主流ですが、DXやスマートファクトリー化の流れに乗り遅れないためには、項目の統一と日本語ゆれの対策が極めて重要です。

本記事では、製造業に勤める方や、これからバイヤーを目指す方、サプライヤーとしてバイヤー視点を知りたい方々へ向けて、項目の日本語ゆれを辞書化し、テキスト整備することで得られる実際のメリットと、実践的なアプローチ方法を解説します。

現場で起きている「日本語ゆれ」の実例

部品名・工程名・帳票名…実はバラバラの表記

例えば「検査成績書」という書類一つをとっても、「合格証明書」「製品検査報告書」「検査結果票」など、同一目的の帳票に複数の呼び方が存在します。

さらに、「部品番号」ひとつでも、「品番」「パーツNo.」「製品コード」など様々な呼称が混在します。

現場ごと、サプライヤーごと、さらには過去からの伝承文化によって、呼び方がバラバラのまま使用されているのが実態です。

デジタル化の壁:検索時に成果が分散する

たとえば社内のファイルサーバを検索する場合、「検査成績書」と検索しても「合格証明書」の名で保存されているファイルはヒットしません。

これはエクセル管理のリストでも、ERPなどの基幹システムでも同様の問題を引き起こします。

このような「呼び方ゆれ」「記述ゆれ」こそが、製造業現場の情報資産の活用を大きく妨げているのです。

なぜ辞書化(シソーラス整備)が必要なのか

属人化の排除と効率化の基礎作り

現場経験豊富な方ほど、経験や勘に頼る傾向があります。
その結果、用語の解釈を人に依存してしまいます。

辞書化とは、「同じものを指す異なる呼び方(日本語ゆれ)」をまとめて一元管理し、業務や検索時に誰もが共通認識を持てる状態を作ることです。
これにより、属人化を排除し、現場の業務効率化・データ検索性向上、後工程での手戻り防止につながります。

DX・ペーパーレスへの布石になる

これから製造業界は急速にDXやAI活用が進みますが、その前提となるのが「データの整理整頓」です。
曖昧さを排除し、呼び方・記述の揺れを整備しておかないと、自動化・AI分析の効果が出ません。

日本語ゆれへの対応は、まさに“地味だが着実なデジタル化の一丁目一番地”といえます。

項目の日本語ゆれ辞書化・テキスト整備の進め方

1. 現場ヒアリング・現物収集からスタートする

製造現場や調達・品質部門で実際に使われている帳票、リスト、システム画面・サプライヤーとのやり取りメール等から、「部品名」「工程名」「帳票名」など、全ての呼び方を抜き出します。

現場担当者やサプライヤー担当者にも「普段何て呼んでる?」と積極的にヒアリングすることが大切です。

2. シソーラス(同義語集)の作成

抜き出した用語を
・標準名称(正規名称)
・別名(俗称、略称、異表記)
の二階層でまとめていきます。
(例)
標準名称:検査成績書
別名:合格証明書、検査報告書、品質証明書

ここが肝で、どの呼び方でも検索にヒットする辞書リストを作ることで、検索漏れやデータ分散を防ぐ基礎となります。

3. メンテナンスフローの構築

一度作って終わりではありません。
業務や製品構成の変更、新たなシステム導入ごとに名称が追加されるので、「辞書リストを常にメンテナンスする組織・担当者」を明確にし、都度アップデートしていく体制を作ります。

エクセルや表計算ソフトでも始められますし、社内Wikiやデータベース化もおすすめです。

業界動向:アナログ文化が根強い業界でも注目される

デジタル化先進企業が先行して推進

既に一部の大手自動車・電機・重工業メーカーでは、業界標準の項目名(JISやISO)、社内標準用語集を整備し、社内・グループ全体で運用しています。

リコールや品質問題のトレーサビリティ追跡にも役立つため、取引先に用語統一を要請する事例も増えています。

中小サプライヤーにとっても必須の課題に

取引先のデータ連携要求が厳しくなり、Excelから直接ERPにデータを送り込む際、用語ゆれでエラーが多発するケースが見られます。

サプライヤーも自社の「品番」とバイヤーの「品番」が違うと、納期遅延や部品の誤出荷にも繋がります。

辞書化した用語でコレポンやEDI、Web発注を行うことが求められる流れが強まっています。

バイヤー・サプライヤー双方の視点:業務品質と信頼向上

バイヤー(購買担当者)目線のメリット

・部品や書類、見積の検索効率が一気に向上
・ミスや漏れの削減(属人化・思い込みに起因する事故防止)
・新規調達先との円滑な情報共有
・将来的なAI活用(バーチャルバイヤー運用)の地盤整備

サプライヤー目線のメリット

・注文者が望む表記・フォーマットで迅速に見積・納品書を作成できる
・取引先ごとの名称違いによる混乱や再説明作業を削減
・品質証明書・部品証明など工場監査時の対応力向上

今すぐ取り組むべきアクション

現場主体で始める「小さな辞書化」

・自分の属する業務範囲でよく使う名称パターンの一覧を作る
・現場メンバー/サプライヤーと一緒に呼び方を洗い出す会議を開く
・社内イントラや提案箱に「気になる用語ゆれ」を投稿できるルールを作る

小規模なチームからでも始められる実践的な工夫です。

辞書化データの共有・活用

作成した用語辞書や表記ルールは、積極的にイントラネットやTeams・Slack等で共有し、現場全体に浸透させましょう。

さらに、将来的にはデータベース化やAIサポート、全文検索システムとの連携も視野に入れると大きな効果が見込めます。

まとめ:工場の文化を変える「地味だけど強い」基盤整備

製造業現場での日本語ゆれ辞書化・テキスト整備は、派手な話題ではありません。

しかし、デジタル化・標準化・AI化の基礎を固める「見えない競争力」となります。

アナログ業界だからこそ、今こそ一歩踏み出して、現場で培われた用語や言葉の壁を越えていくことが、これからのモノづくりで生き残る条件です。

辞書化の第一歩は、現場で「これは何て呼んでる?」と声をかけ、小さなリストを作ることから始まります。

今日からぜひ、項目名の日本語ゆれ辞書化に、現場目線で着手してみてください。

それがあなた自身の業務効率、そして製造業の未来を確実に変えていく地道なイノベーションとなるはずです。

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