投稿日:2025年10月18日

プリント後のブロッキングを防ぐ搬送温度と風量制御の改善

はじめに:プリント後のブロッキング問題が製造現場にもたらす影響

プリントや塗装などの表面処理工程は、製品の見た目や品質を左右する非常に重要なプロセスです。
特に、製造業の現場で問題視されるのが、プリント直後の製品同士がくっついてしまう「ブロッキング」と呼ばれる現象です。
このブロッキングは、外観不良だけでなく、手戻り作業や顧客クレームの発生、さらには納期遅延にまでつながることがあります。

生産現場のロス削減やクレーム予防の観点からも、搬送時のプリント後ブロッキング対策は重要な品質課題です。
この記事では、現場で培った実践的な知見をもとに、従来のアナログ的アプローチとデジタル・自動化の最先端ノウハウを融合させながら、搬送温度と風量制御の改善について解説していきます。

プリント後ブロッキングのメカニズムを知る

発生の主な要因

プリント後のブロッキングは、主に以下の要因によって発生します。

– プリント面同士の接触による粘着
– 塗膜やインクが完全に乾燥・硬化していない状態での搬送
– 高湿度環境や温度が高い場合の、表面の軟化
– 未適切な搬送方法での製品の重なり・圧力
– 乾燥工程の不均一さ・設定ミス

昭和的な製造現場では、「まあこれくらい大丈夫だろう」という経験則や慣習だけで運用されがちです。
しかし、市場要求の高度化や品質要求レベルの上昇を背景に、上記リスクは必ず数値で管理しなければならないテーマとなりました。

従来の改善アプローチとその課題

多くの現場では、「風量を強くする」「ライン速度を遅くする」「製品をしばらく寝かせて様子を見る」といった経験則に頼った対応が主流でした。
ですが、それだけでは原理原則以上の本質的な再発防止ができません。
なぜなら、常に生産条件は変化するからです。
季節や材料、塗料やインク・印刷方式、工場構内のレイアウト変更など、あらゆる要素で乾燥特性が変わります。

本質的対策:搬送温度と風量制御の最適化

温度制御の重要性

プリント後の乾燥工程において、設定温度は非常に重要なファクターとなります。
低すぎれば乾燥不良・ブロッキング、逆に高すぎれば塗膜のひび割れや、材料の変形・エネルギーロスが発生します。
ポイントは、「材料特性」「塗膜厚」「搬送速度」といった諸条件に合わせて、適切な温度カーブを設計・運用することです。

近年では、遠赤外線ヒーターや熱風循環式オーブンなど、高精度な温度管理機能を持つ乾燥装置の導入が進んでいます。
ただし、その現場環境に最適な温度プロファイルを一度決めたら終わりではありません。
定期的な温度分布の測定や、サーモカメラによるリアルタイム監視、定量データのフィードバックが欠かせません。

風量制御の最適化

風量は、乾燥の均一化とブロッキング防止に直結します。
ここで大切なのは、「強すぎる風」は表面だけの急乾燥につながり、逆に製品内部まで水分が残る“表面乾燥”現象をもたらすということです。
この状態だと、表面が乾いたように見えても、実際はプリント面が次工程でくっつきやすくなります。

一方で、風量が弱すぎれば当然ながら乾燥速度が遅れ、全体のリードタイムに影響します。
特に最近多い多品種少量生産ラインでは、切替や段取りのたびに「風量自動最適制御」が求められます。

現場管理者としては「現状把握」と「即時レスポンス」が最重要です。
計測機器やIoTセンサーを活用し、「いま、どこで(何品種で)、どれくらいの温度・風量で運転しているのか」が、一目でわかるシステム化が本質的改善となります。

昭和の現場をアップデートしよう:よくある失敗と反省点

共感できるあるある事例

・なぜか毎年「梅雨時だけ」ブロッキング不良が増える…
・若手が乾燥機の調整に慣れておらず、定量化されていない“感覚”で運転し続けている…
・「先月の製品は問題なかった」と現場が言い張るが、実際は乾燥工程パラメータの記録がなく、原因追究不能だった…

これらはすべて、アナログな現場運営・属人化した管理・記録不備が根底にある共通課題です。
逆にいえば、ここを定量管理・可視化・デジタル化することで生産性と品質は大きく向上します。

現場改革のポイント:人・しくみ・技術

温度・風量の定量管理

– 各工程で温度、湿度、風速をIoTセンサーなどで常時記録し、異常値を検知したらすぐにアラート
– 定期的に温度プロファイル、風量分布の点検会を実施する
– 学習用の標準化マニュアルを整備し、若手・ベテランを問わず「なぜその設定・確認が必要なのか」を教育する

生産スケジューリングと連動した最適運転

– 多品種多工程には、「レシピ管理機能つきの自動調整乾燥機」を用導入し、品種ごとに最適化パラメータを組み合わせる
– 工場全体の「ヒトの手間」を最小化し、本当に重要な工程(検査、試作対応など)にリソースをシフト

現場改善とデジタル技術の融合

– 異常の未然防止には、AIによる異常予兆監視や、PLCデータのクラウド管理が効果的
– 缶詰にならず、日常点検を現場パトロールやヒヤリハット受付など、現場課題の“見える化”に積極参加する

サプライヤー・バイヤー視点からのブロッキング対策

サプライヤー:納入時の品質保証強化

サプライヤーの立場では、「ブロッキングによる不良返却・検品コスト」の最小化が底流にあります。
以下の点に気をつけましょう。

– 出荷前の『仮乾燥チェック』『搬送時検査基準書』『サンプリングによるブロッキング付着試験』の徹底
– 顧客納入先で必ず「仮受入テスト」と「現場確認」を実施し、現場バイヤーに安心感を訴求

バイヤー:サプライ品評価と現場との共働

バイヤーは、単なる価格交渉だけでなく、現場品質を見抜く「目利き力」も重要です。
– 「搬送温度」「風量・湿度」「乾燥機の計測方法」など技術的裏付けをサプライヤーと共有
– 製品によるバラつき発生時のデータ化、現場レビュー会、現品の現物再現トライに現場責任者も交えて「現場×バイヤー」の協力体制を持つ

業界の最新動向:昭和から令和へ、進化する製造現場

2020年代以降、製造業界全体でDX化(デジタルトランスフォーメーション)が加速しています。
大手メーカーでは、一極集中型の巨大設備投資から、より現場密着型の「小型IoTユニット」「AI分析」「完全無人化対応」など、小気味よい現場アジャイル開発が主流です。

また、多品種少量時代を迎え「誰が触っても、変なトラブルが起きにくい工程管理」が競争優位性となっています。
温度・風量の最適制御も、「人だけ」「自動機だけ」でなく、その両方を柔軟に融合させたハイブリッドな現場運営へと進化しています。

まとめ:ブロッキング防止は改革の起点

プリント後のブロッキング対策は、単なる現場のトラブル対策ではなく、現場力・品質・納期のベースとなる重要なマネジメントテーマです。
搬送温度・風量の適正制御を、データ管理と現場ノウハウの両方で追求していくことが、業界全体の競争力強化や次世代人材の育成にも直結します。

「温度・風量ごとき」と侮らず、現場発で改革の一歩を踏み出しましょう。
その先に、より安全・安心かつ高効率な現場環境と、顧客満足度向上の実現が待っています。

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