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改善が“イベント化”して日常業務に落ちない根本課題

目次
はじめに~製造現場の「改善活動」への違和感
製造業の現場では、長年にわたり「改善活動」という言葉が至るところで飛び交っています。
カイゼンの精神や5S活動、QCサークル、TPM、IEといったキーワードは業界人であれば聞き飽きるほどですが、現実には「改善がイベント化して日常業務に落ちない」という問題が、いまだ昭和の時代から抜けきれずに根深く残っているのが実態です。
この記事では、私が現場で感じたリアルな課題感、バイヤーやサプライヤーといった多様な立場から見える問題点、その背景や根拠を深く掘り下げながら、いかにして「改善」を“イベント”から“日常”へと昇華できるのか、その本質と対策を現場目線で追求していきます。
なぜ「改善」はイベント化するのか?~現場あるあるの本音
そもそもの「改善活動」とは何か?
日本の製造業における改善(カイゼン)活動は、従来のやり方を絶えず見直し、現場のムダや不具合を潰し込むことによって品質・コスト・納期(QCD)を追求しようとするものです。
一般的には、改善案を現場やチームで発表し「当月の改善実施件数」「提案数」「達成率」などのKPIを週次・月次で管理するスタイルが長らく定番となっています。
「集中的イベント」の構造的な問題
ところが、これらの活動が「イベント化」してしまう理由には、以下のような現場ならではの事情があります。
– 年度初めや期の中間に合わせた「改善発表会」の開催
– 改善提案用の専用フォーマットや発表資料の作成がタスク化
– 日常業務とは切り離されたプロジェクト的な運営
– 期末に向けてだけ数合わせで帳尻を合わせる
– トップダウン型の指示で“やらされ感”が強まる
現場でよく聞かれる声を拾うと、「紙の提出物ばかり増える」「結局、改善より普段の“納期対応”が優先」「形だけ整えてもその後が続かない」「評価されるのは“数”だけ」といったものが多く、これでは本質的な改善文化は根付きません。
“昭和型アナログ”現場が「改善イベント」から脱却できない理由
プロセス思考 vs. 結果重視文化
日本の製造業では、長年「結果」や「数字」を強く意識する風土が根付いています。
そのため、「改善そのものがどれだけ業務に染み込んでいるか」よりも「何件提案したか」「どんな成果が出せたか」といった“目に見える指標”に偏りやすくなります。
その裏には、「現場の声や動きを拾い上げて仕組みに回す」ボトムアップ型の文化が十分に根付いていないことや、「抜本的な工程変更には手を付けづらい」といった現場の保守的気質も影響しています。
DX・自動化の波と現場感覚のギャップ
現在、工場ではIoTやAI、RPAなどデジタル技術を積極投入した“スマートファクトリー化”や自動化が急速に進められています。
一方で、現場担当者の多くが「デジタル活用は一部の特別な事例」「自分たちの改善には当てはまらない」と感じているケースも少なくありません。
結果として、「紙ベースでのチェックリスト転記」「目視や手書きによるミス発見」「現物現場での改善検討」といった“昭和的アナログ”な文化だけが強く残り、改善活動が“日常業務を横断的に見直す”ものとして定着しづらいのです。
購買・サプライヤー視点で見た「根本課題」
バイヤーから見た改善イベントの“限界”
調達・購買部門は、工場内だけでなくサプライヤーに対しても「VE提案」「コスト低減活動」などの改善要求を出します。
しかし、実際の現場では「年度の予算消化」「一時的なリバースエンジニアリング」「見積競争で短期成果を求める」といった“数合わせイベント”に終始する例も多いです。
バイヤーの倒錯した評価基準や、期末の「案件捻出」では根本的なサプライチェーン体質改善には繋がらず、サプライヤー側も「納入単価引き下げを言われて終わり」「一時的な応急処置に過ぎない」と諦めの声が上がるのが現実です。
本当に大切なのは、「現場が地に足つけて継続できるリアルな改善」を供給者と一体で進めることです。
サプライヤーから見える“生きた改善”のヒント
私の経験上、サプライヤー工場の現場力は、しばしば調達元メーカー側の“形式的な改善”に刺激され、独自の改善文化が生まれることがあります。
特に、作業員や現地オペレーターの「小さな違和感」を集約し、逐次、現場リーダーも巻き込んでPDCAをまわせている現場は、派手な数字よりも着実な品質・納期・コストインパクトを創出しています。
外発的な“イベント”ではなく、「日々の仕事の延長線で改善が個人・チームに根付くような場づくり」こそ、サプライヤーから学ぶべき点です。
「改善活動」が根付かない本当の理由~現場目線の深掘り
イベント化の奥にある“心理的要因”
多くの現場では「人の異動が多い」「毎日の業務量が逼迫している」「ミスや不良品の責任を問われるのが怖い」「新たなやり方を現場内で共有・定着させる仕組みがない」といった環境要因が影響しています。
こうした土台で進められる表面的な改善イベントは、「やらされ感」「惰性」「目の前のトラブル処理優先」という空気感の中で失速しがちです。
また、上層部や本社主導の目標数字が月に一度“降ってくる”スタイルでは、現場の主体性や納得感が生まれにくく、モチベーション維持にもつながりません。
“暗黙知”の活かし方が鍵になる
改善活動を「イベント」で止めてしまう組織と「日常」で根付かせられる組織の差は、現場に蓄積された“暗黙知”の活用力にあります。
作業者が持つ勘や体感、不満・苦労の声をいかに汲み取り、社内外にスムーズにシェアし、共有知化できるかが重要です。
にもかかわらず、「紙の報告書」や「フォーマットだけの改善提案」では情報が伝わりにくく、次の現場に知見が生かされません。
この“伝達と共創のひと工夫”が欠けることが、根本課題の一端だと言えるでしょう。
「日常業務への落とし込み」実践のヒント
1. 経営幹部・管理者の本気度シグナルを可視化せよ
改善を“日常”化するには、「数字の圧力」ではなく、「実際に現場で価値がある変化」を経営層が共有体験する文化が不可欠です。
管理職自身が現場パトロールや作業体験を通し、「現場目線」で課題や成果まで見つめる機会を増やすこと。
さらに「失敗も含めてトライを称賛する」体制や、優秀提案だけでなく“地味な改善”にも光が当たるようなダイアログを重ねることで、現場の腹落ち感が増します。
2. IT×アナログ両軸で「改善PDCAの見える化」
DXツールを活用し、タブレットやスマートフォンで改善進捗・課題を共有できる仕組みを作ることで「紙主義脱却」や「データ収集の自動化」が進みます。
しかし、重要なのは“現場で使いやすいシンプルさ”と“アナログの良さのバランス”です。
「朝礼」「現場ウォーク」「壁貼り」などアナログコミュニケーションと、動画や写真などデジタル共有を組み合わせることで、改善活動が「全員参加型」になりやすくなります。
3. サプライヤー巻き込み型で「双方向の改善」を
調達やバイヤーが主導する場合でも、サプライヤーを単なるコストダウン要員ではなく「改善パートナー」として対話型の関係を作ることが決め手です。
双方で“現場を訪れる・見せ合う・小さな変化を一緒に議論する”といった協業文化を醸成すれば、「見積数字合わせ」では進まない本質的な改善案件が日常的に生まれます。
4. 教育・キャリアパスとセットで「改善人材」を育てる
改善経験が「現場昇格」「人事評価」「多能工化」と直結する設計があれば、現場全員にとって「改善」が日常的なスキルとなります。
また、「現場改善ワークショップ」や「社内外の交流イベント」「ベテランOJT」により、改善ノウハウの暗黙知化・形式知化がスムーズに進みます。
まとめ~“ラテラル思考”で新しい改善文化の地平を切り拓く
これからの時代、「改善」はもはや付加的イベントではなく、「変化する日常そのもの」として再設計する必要があります。
AIやIoTなどのハイテク活用だけに走るのではなく、一人ひとりの現場作業者やサプライヤーのリアルな声にしっかり耳を傾ける。
管理職やバイヤーも巻き込んで“数字・形式”だけでなく“肌感覚・共感・現場共創”に投資する。
昭和から続くアナログ文化の良さも新しいデジタルの知見も受け入れ、時間軸・空間軸を横断する“ラテラル思考”で、より本質的な「改善の地平線」を切り拓いていくことが、持続的な製造業成長のための最大のカギだと私は確信しています。
現場の皆さん、サプライヤーの皆さん、バイヤー志望の皆さん、「イベント」が「日常」の文化に昇華するために、今日から新しい一歩を踏み出しましょう。
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