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設計品質の向上と高付加価値設計への応用

目次
設計品質の向上がもたらす製造業の革新
設計品質は、製造業の根幹とも言える重要な要素です。
どれほど優れた生産ラインや先進的な自動化設備を導入しても、元となる設計に不備があれば、最終製品の品質向上は望めません。
設計品質を高めることは、納品後の不具合低減、顧客満足度の向上、さらにはサプライチェーン全体の効率化にも直結します。
現在、多くの日本の製造現場、とりわけ昭和からの流れを色濃く残すアナログな現場では、「現場対応」「場当たり式の改良」に頼る企業文化がいまだ根付いています。
しかし、設計段階で品質と付加価値を高めることは、製品の寿命を伸ばし、次世代への技術継承にも貢献します。
本記事では、設計品質の本質に迫り、その向上策と高付加価値設計(VAVE: Value Analysis/Value Engineering)への応用可能性について、現場目線で具体的に解説します。
設計品質とは何か
設計品質とは、製品やサービスが目的を十分に達成するために、設計段階で求められる品質のことを指します。
そもそも「品質=規格通りにつくられている」だけでは不十分です。
消費者は規格品以上の「使いやすさ」や「安心・安全」、「長寿命」「保守のしやすさ」も求めています。
これらは全て設計フェーズで織り込まれるべき価値です。
設計品質が低い場合、量産時の不良発生や、フィールドでのトラブル、余分なコスト増につながります。
一方、設計品質を高めれば、製造現場においても作業効率向上、不良品率低減、納期厳守、さらには他社との差別化が実現します。
従来型製造業における設計品質の課題
多くの現場では、設計部門と生産現場が分断され、設計者が現場の実態を十分に理解していないことが往々にしてあります。
また、アナログな企業風土の中では、「前例踏襲」や「過去の図面の流用」が常態化し、結果的に設計上の不具合や時代遅れの設計思想が改善されないまま引き継がれています。
さらに、設計変更管理の徹底不足や、設計意図が現場やサプライヤーに伝達しきれていないといった「伝言ゲーム型ミス」も珍しくありません。
設計品質向上に必要な手法と考え方
設計品質の底上げには、単なる「図面精度の向上」では不十分です。
次の視点が現場目線では極めて重要となります。
1. 現場起点の設計・製造一体化
設計者が定期的に現場に足を運び、「なぜこの不良が出るのか」「どうすれば現場作業者の負荷を減らせるか」といった生の声を吸い上げることが不可欠です。
ノウハウ伝承や現場力の強化、および現場フィードバックの設計反映をシステム化する取り組みが、設計品質向上の突破口となります。
2. 設計審査(DR: Design Review)の徹底
開発の各節目ごとに、関連部門(生産課、資材課、品質保証部、調達課など)を巻き込んだ設計審査を習慣化することで、「設計側の思い込み」や「見落とし」を洗い出すことができます。
これはコスト増・納期遅れ・フィールドクレーム対策として、きわめて効率的です。
3. 標準化とモジュール化
独自仕様にこだわり過ぎる設計は、品質ばらつき・コスト増・納期遅延の温床となります。
標準部品の採用やモジュール設計(部品・工程の共通化)による、安定した供給・部品品質の均一化が現場負担を大幅に軽減します。
4. 品質機能展開(QFD)の活用
顧客ニーズ(VOC:Voice of Customer)を設計仕様へブレイクダウンし、QFD手法によって「どの機能をどこまで高めるべきか」を数値で見える化します。
これにより、自己満足的な設計や無駄なスペック競争から脱却できます。
5. 設計FMEAの実践(故障モード影響解析)
設計段階で想定しうる故障モード(FM)を洗い出し、それが発生した場合の影響・頻度・検出可能性を評価します。
潜在的な設計リスクを事前に可視化・低減する絶好のツールです。
高付加価値設計への応用
ただ単に不良率を下げる、規格品合格点を取るだけでは、もはや競争力を維持できません。
顧客が本当に求める「価値」を具現化し、市場で優位に立つためには、付加価値設計へのシフトが必須です。
1. VAVE活動によるコストダウンと価値創造
VAVE(Value Analysis/Value Engineering)とは、機能とコストのバランスを徹底的に見直し、不要なコスト排除と真の価値向上を図る手法です。
たとえば「従来のまま当たり前に使っていた部材」が、最新技術や他業界の事例から見直せないか、逆転発想の思考が求められます。
一例として、鋳物部品を樹脂化した事例や、組立工程を省略する一体成形化など、技術融合が高付加価値の鍵となります。
2. 顧客密着型設計とプロアクティブ開発
設計担当者が直接エンドユーザーやバイヤーと対話する機会を設けることで、「売れる商品」「使いやすい商品」の本質を掴むことができます。
将来の顧客ニーズを先取りするプロアクティブな視点を加味することが、次期主力商品の開発に直結します。
3. 持続可能性(サステナビリティ)を設計品質へ落とし込む
これからのモノづくりに求められる視点は、「社会や地球環境にどう寄与するか」にも移りつつあります。
再生素材の積極採用、省エネ設計、リサイクル容易な構造など、環境性能を設計品質の一部として明確化する動きも顕著です。
調達購買・サプライヤーの観点から見る設計品質
設計品質はサプライヤー評価にも大きな影響を与えます。
バイヤーにとっては、設計図面や仕様書の曖昧さが後工程のリスク源です。
発注前段階での設計情報の精度向上、変更履歴管理の徹底、見積依頼段階から現物サンプル検証を実施することが、調達購買部門の競争力につながります。
また、サプライヤー側も「バイヤーがどのような意図・品質観点を持っているか」を正確に理解することが重要です。
単なるコスト競争ではなく、「設計品質から一緒にものづくりをするパートナー」として、積極的にフィードバックや提案を行うことで、関係性強化にもつながります。
まとめ:設計品質向上で新たな価値創造を
製造業の未来を切り拓くには、地味で地道な設計品質の底上げがすべての土台となります。
現場の現実に寄り添い、サプライヤー・バイヤー・エンドユーザーと一体となった高付加価値設計を実現することが、アナログな業界風土でも確実にできる変革の第一歩です。
今こそ、「設計図面の向こう側」にいるすべての人々に思いを馳せ、ものづくりの現場力と未来志向の知恵を結集させていきましょう。
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