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AIを活用した設備稼働率の向上を分かりやすく紹介

目次
はじめに:製造業に迫る“デジタル化の波”と設備稼働率向上の重要性
製造業はいま、かつてないほどの変革期に直面しています。
高度成長期の昭和から続くアナログ文化が色濃く残る一方で、AIやIoT、ビッグデータといった新しいテクノロジーがものづくり現場にも浸透し始めています。
日本の多くの工場では、いまだに紙と鉛筆、エクセルを駆使した業務が主流ですが、世界ではデジタルファーストな思考がスタンダード。
この両者のギャップこそ、日本の製造業の“伸びしろ”です。
なかでも「設備稼働率の向上」は経営層・現場双方にとって永遠の課題といえます。
設備を最大限に有効活用すれば、追加投資をせずとも生産量が増え、工数削減やコストダウンにつながります。
では、なぜいまAIが設備稼働率の向上に活躍するのでしょうか。
この記事では、20年以上現場に身を置いてきた筆者のリアルな視点から、AI活用の実情と具体的な取り組み内容を、見ても・読んでも“なるほど”と思えるレベルで解説します。
設備稼働率とは?昭和から続く管理方式の限界
設備稼働率の定義と算出方法
設備稼働率とは、設備が予定されていた稼働時間のうち、どれだけ実際に稼働できていたかを示す指標です。
一般的には、以下の式で求めます。
「設備稼働率(%)=実績稼働時間 ÷ 設備保有時間 × 100」
保有している装置を無駄なく動かしている“健康診断書”ともいえ、製造業全体の業績に直結します。
アナログ管理の弊害:ヒューマンエラー・属人化・リアルタイム性の欠如
従来の製造業では、紙の帳票や現場記録による設備管理が主流です。
「今日は●時から▲時までAライン始動」「●台目で異常停止」などを、人がメモし、エクセルに転記。
このプロセスこそがヒューマンエラー、記録の抜け漏れ、集計の遅れの温床となり、気づけば1週間前に止まっていた不具合なども“現場の記憶頼り”になりがちです。
また、担当者の経験や勘(いわゆる“カンコツ”)に依存する部分も多く、本質的な改善活動の推進を阻害してきました。
変化の波:現場データのデジタル化とAI分析の台頭
ここ数年、設備から直接データを取得するIoT技術が普及し、記録がリアルタイム化しています。
しかし、“データは集まるけど、分析と活用が追い付いていない”というのが多くの現場の実態です。
この状況の打破にAIが注目される背景には、属人化からの脱却と、生産現場を科学的にマネジメントしたいという強いニーズがあります。
まさに「見える化」から「わかる化」への時代の転換点です。
AIで何ができる?現場の課題をどう変えていけるのか
稼働データを自動収集・見える化
AIの第一歩は、設備からの稼働実績データを自動収集し、ダッシュボードで“今ここで何が起きているか”一目でわかるようにすることです。
各機械にIoTセンサーを取り付け、PLCやコントローラー経由で情報を吸い上げます。
従来は担当者が夜遅くまでエクセルをたたいて集計していたのが、ボタン一つ、あるいは“見るだけ”で把握できる世界へ。
これだけでも「いま何が問題か?」「どのラインがネックか?」のスピーディな判断が可能になり、改善サイクルが劇的に速まります。
異常検知と原因特定:AIならではの“パターン認識”
AIは学習能力が高く、過去の膨大な稼働データやトラブル実績をもとに、「異常が予兆として現れるパターン」を自動で発見します。
例えば、軸受けの温度上昇や振動数の変化、サイクルタイムのわずかなズレといった“人間では見逃しがちな予兆”も見逃しません。
また、人が漠然と「たぶんこれが原因?」と見当をつけてきたトラブル要因も、統計解析により根本的に可視化されます。
夜中の緊急停止や微妙な品質不良――こうした現場の“困りごと”の初動対応が格段に速くなります。
余力の把握と生産計画最適化
設備稼働率が伸びない主な理由は段取り替えやメンテナンスタイムの管理不足、そして突発対応です。
AIは取得した実績データから、各設備の「余力」や「非稼働・待機原因」まで細かく分析します。
そこから、現場リーダーや生産管理担当が、どこにどの順番で作業を振り分ければよいのかをロジカルに考えられるようになります。
とくに多品種少量生産の工場ではロット切替えや突然の注文変動が常。
AIのシミュレーション機能を活かして、「どのパターンが最も効率的か?」を瞬時に試せるのです。
現場でのAI導入ステップ:具体的な進め方と陥りやすい失敗
現状把握と“小さな成功体験”の積み上げ
AIツール選択やデータ基盤設計の前に絶対に必要なのは、まず現場の課題・ニーズ・業務フローの把握です。
いきなり壮大なシステムを構想せず、まずは“止まる回数の多いライン”や“無駄が多い工程”など、インパクトが大きい部分から始めましょう。
失敗例としてよくあるのが、「経営会議だけで計画を決め、現場とのすり合わせ不足」「高機能すぎて誰も使いこなせない」など。
現場メンバーの“納得感”こそ、成功と定着の最大条件です。
データ取得方法の決定とAIの“かしこさ”の調整
すべての設備に高額なIoT端末を設置する必要はありません。
まずはボトルネック設備から、安価な温度計・振動センサー・電流計などの“観るべきポイント”だけでも十分。
データを集めはじめたら、AIの学習用データ作りを地道に進めていきます。
AIの“かしこさ”とは、最初はあくまでシンプルなアラートを出すレベルで十分です。
現場と一緒に精度をチューニングしていき、「これなら役立つ!」となれば徐々に範囲や深度を拡げます。
失敗しないための“ラテラル思考”と昭和的アナログ手法活用
AI化は決して“ゼロからの全自動化”ではありません。
これまで、人海戦術・紙帳票など“前時代的”と思われる手法にも、実は現場特有の知恵が詰まっています。
ラテラルシンキング(水平思考)を活かし、「昔からやっているから」ではなく、そのやり方の本質を抽象化してAIにどう置き換えるかを考えましょう。
たとえば“安全確認”“手直しチェック”などは、人の目と感覚だからこその強み。
AIとアナログの“いいとこ取り”をすれば、現場文化を壊すことなく、着実にデジタル化へ進めます。
AI時代のバイヤーとサプライヤー:これから変わる関係性
バイヤー視点:設備状態のリアルタイム共有が評価基準を進化させる
従来の購買交渉は、「QCD」(品質・コスト・納期)中心でしたが、AI時代には「生産ラインや設備状況をどれだけ可視化できるか」も重視されます。
バイヤーは、サプライヤーがAIとデータを活用して“計画変更への対応力”“生産リードタイムの短縮”“工程内変動の早期連絡”などの能力を持っているかを見極め、信頼性や柔軟性で選ぶようになっています。
同じスペック、同じ価格のサプライヤーでも、「AIでデータ活用できる」会社が今後は選ばれる傾向が高まっています。
サプライヤー視点:自社のAI導入状況がビジネス拡大の切り札になる
サプライヤーにとっては、単なる製品提供だけでなく「生産工程の見える化支援」「改善提案力」といった付加価値が武器になります。
特にTier1やTier2のような下請けポジション企業こそ、AIを使った稼働率改善や設備の安定稼働実績をエビデンスとして提示できると、差別化になります。
この情報開示と提案こそが“選ばれるサプライヤー”への道筋です。
長期的なパートナーシップを構築するためにも、AI導入の過程や結果を積極的に顧客(バイヤー)と共有し、QCD以外の価値を訴求しましょう。
現場最前線のリアル:AIで変わる“人”と“仕事”の未来
作業者から“データを読む人”への転換
これまで「設備を動かすこと」が主業務だった現場作業者も、AIの普及により「データを解釈し、改善提案する力」が不可欠になってきます。
異常アラートの意味やトレンドの裏に隠れた“なぜ”を現場で考察し、メンテナンス計画やライン編成に生かす。
昭和の名人芸で支えられてきた日本の工場にも、論理的思考のエッセンスが着々と根付き始めています。
管理職・工場長がリードする“変革の旗振り役”
工場の自動化やデジタル化には、いまだに現場の抵抗感がつきものです。
「自分たちの仕事がAIに奪われるのでは?」「どんなスキルを身につければいい?」
こうした不安に丁寧に寄り添いながら、管理職・工場長が現場目線でメリット・デメリットを噛み砕いて説明し、小さな成功事例を積み重ねていくことが肝心です。
現場リーダー自らがAIツールを触り、「こんな便利なものなんだ」と実感することが変革の第一歩になります。
まとめ:AI時代の製造業は、“人とデジタルの融合”がカギ
AIを活用した設備稼働率向上は、単なるDXの一環ではありません。
“見えない無駄”を可視化し、“昭和の知恵”をデジタルで再発掘する、新たな製造業のイノベーションです。
現場・管理職・バイヤー・サプライヤー――関わるすべてのプレイヤーが、AIを上手に使いこなすことで、「人にしかできない創造性」へと役割がシフトしています。
今こそ、ラテラルシンキングで“業界の常識”を疑いながら、AIと現場ノウハウのベストミックスを追求するタイミングです。
ぜひ、この記事を参考に設備稼働率の“新しい地平線”を切り開いていただければ幸いです。
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