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紙ストローの耐水性を高める多層巻きと接着剤塗布量の制御

目次
はじめに:紙ストローの耐水性が問われる時代
一昔前の昭和の時代、飲み物を飲むためのストローは樹脂製が常識でした。
しかし、近年は脱プラスチックの潮流が世界的に加速し、飲食業界でもサステナブルな取り組みが求められています。
その中で注目されているのが「紙ストロー」です。
紙ストローは地球に優しいエコ製品でありながら、実際の現場では耐水性やユーザー体験など、旧来の樹脂ストローと同様の品質を要求される厳しい現実があります。
この耐水性をどう高めるかは、製造現場において最重要テーマの一つです。
本記事では、多層巻きや接着剤塗布量の最適化などの技術的視点と共に、ベテラン工場長・購買担当者・サプライヤーという三方向からの現場目線を織り交ぜて、紙ストロー製造のコアとなる耐水性向上の実践ノウハウを深堀りします。
紙ストローの耐水性とは何か?その製造業的解釈
紙ストローの耐水性とは水や飲料に接触した際、一定時間崩れたり、柔らかくなったり、味やにおいを移したりしない特性を指します。
品質管理の現場では「耐水時間○分以上」「飲料変質なし」「使用感の変化なし」など厳しい指標が設定されます。
これを実現するには
・紙素材自体の選択
・多層巻き
・接着剤(糊)の選定と塗布量の最適化
・表面コーティング
・巻取り圧(巻き密度)
など、一つ一つの工程・条件に現場力が問われます。
多層巻きが実現する耐水性向上メカニズム
なぜ多層構造が耐水性を高めるのか
紙ストローの多層巻きとは、複数の紙シートを螺旋状に重ねて巻く工法です。
これにより、液体の浸透路が長く複雑になり、耐水時間が格段に向上します。
1枚薄紙のストローは、わずかな時間でシワが寄り、外形保持も困難になります。
しかし、2層・3層と重ねるごとに、各層の接着と密着が“バリア層”となり侵入経路をシャットアウトします。
また、異なる繊維密度や紙質のシートを使い分けることで、最表面は滑らかで中間層は厚みや硬さを担保できるなど、現場流の“多層設計ノウハウ”が蓄積されています。
多層巻きの具体的な条件設定例
現場では例えば以下のように管理しています。
・外層…高平滑度・コーティング紙(厚み40〜60μm)
・中間層…耐水紙ないし中質紙(厚み70〜100μm)
・内層…「直飲み」なのでにおいや味の移行が少ない中性紙
これらを2〜5層重ねることで、目的に合わせた強度・耐水性を調整します。
多層巻きによる現場課題
多層巻きには、厚み増によるコストアップや巻取り時の芯ズレ、エア切れ(内空間内の空気圧抜けによる潰れ)といった問題もあります。
機械保守や検品の工夫、工程設計上の工夫が現場判断のカギとなります。
接着剤塗布量こそ耐水性のカギ
紙ストローに最適な接着剤とは
ストローの紙層同士を密着させるのは、主にデンプン系や合成系の水溶性接着剤です。
しかし、単に接着力で選ぶだけでなく「濡れ性」「硬化速度」「浸透抑制」「食品安全性」「糊ムラ」など、極めて多様な要件を満たさねばなりません。
現場では前工程の糊の調合・撹拌・温度管理・固形分調整、加えて糊ローラーの粒径管理・糊付け速度制御が生産品質の死活ライン。
購買やバイヤーの目線も、原材料選定の安定化・価格変動への耐性という観点で熟慮されています。
塗布量が左右する耐水性とコストのバランス
塗布が少ないと隙間が生じて液体浸透しやすくなり、ライン止まりの原因となります。
逆に多すぎると層間にはみ出した糊が飲料に移りやすかったり、乾燥に時間がかかり生産性低下のリスクが高まります。
現場では、塗布ムラ・不足防止のため定期的に試作・断面観察や冷水耐性テストを実施し、連続生産中にも塗布量モニタリングを怠りません。
また接着剤コスト・在庫管理効率とのバランスを、部品表(BOM)レベルで管理します。
自動化による塗布量制御とデータの活用
最近では糊付けユニットと画像センサー・重量センサーを連携させて、塗布量をミクロンオーダーでリアルタイム監視、品質トレンド分析につなげる動きも始まっています。
ここにIoT化やDX(デジタルトランスフォーメーション)、AI画像解析が現場に根づきつつあるのです。
昭和アナログからの脱却:自動化・標準化の動向
紙ストローの製造は元来、手作業や半自動巻きが主流で、職人の目や指先の感覚に頼る面が多くありました。
特に多層巻きや糊付けの加減は暗黙知として現場に蓄積されていました。
しかし近年は
・巻取り工程の力加減や速度調整の自動最適化
・糊付け部の非接触厚みセンサー
・検査工程の自動カメラ判定
など、工程ごとにデジタル化・標準化が進んでいます。
この変革は人手不足や技術伝承の難しさの克服にも直結し、再現性の高い耐水性品質を安定的に量産するための必須条件となりつつあります。
バイヤー視点からみた耐水性と製造現場の攻防
バイヤーは「どの紙ストローサプライヤーが本当に安定した耐水性を提供できるのか」を判断するため、サンプル評価だけでなく、実際の工場監査・工程ヒアリングにも踏み込みます。
・多層巻き設計の根拠
・接着剤の材料選定・調達難易度
・塗布工程の自動化率・管理指標の有無
・試験データのトレーサビリティ
・突発不具合時の現場対策能力
これらを細かく見ています。
表面の見栄えや短期耐水性だけでなく、「連続生産」「急な形状・材料革新」「リードタイム短縮」など、サプライヤーの現場力・課題発見力・提案力まで総合的に評価して発注先を決定する時代です。
サプライヤーの現場力が試される瞬間
もし耐水試験で不良率が上がった場合、現場では「多層巻き比率の変更」「糊の粘度改良」「巻取り圧調整」など、ライン単位で小さなパラメーター変更を即断即決します。
その際、工程ごとのデータ管理・現場スタッフの理解度・顧客(バイヤー)への技術報告スピードが、サプライヤーとしての信頼性を大きく左右します。
一方、サプライヤー側からバイヤーに「耐水性向上の開発提案」を持ち込むことで、大量受注や共創企画に発展するケースも増えています。
現場発のラテラルシンキング、すなわち「今までになかった工程組み替え」「他社がやらない紙・糊材料の新提案」がこの分野では強みとなります。
今後の進化:紙ストロー製造現場の新たな地平線
今後は完全バイオマス系接着剤やリサイクル紙の活用、さらには独自の多層化パターンの開発による「長時間耐水性ストロー」など、イノベーションが期待されます。
また業界を挙げての生産性向上・標準化のREQ(品質要求事項)化が進むことで、国内外サプライチェーンにおける“製造現場力”の差がより明確になるでしょう。
工場長クラスやサプライ管理者としては、現場・人・技術全体を俯瞰しつつラテラルな思考で変革し、これまでなかった高付加価値な耐水ストローを世に送り出すチャンスです。
まとめ:紙ストロー耐水性向上の本質と製造業の未来
紙ストローの耐水性向上は、多層巻きと接着剤塗布量の細やかな工夫なしには語れません。
現場起点のアナログ感覚と、デジタル自動化・データ標準化による安定生産。その両輪を回し続けることが製造業の底力です。
サプライヤーもバイヤーも、単なる材料スペックや価格優位性だけでなく、「現場での解決力」「課題発見力」「変化対応力」が今後ますます重要になるでしょう。
環境価値とユーザー体験を両立させる紙ストローの進化。その新たな地平線を切り拓くのは、現場に根ざした実践的ラテラルシンキングに他なりません。
業界の発展は、私たち一人一人のチャレンジ精神と現場改革の小さな積み重ねから生まれるのです。
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