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共同改善ワークショップで品質とコストを同時に上げる取り組み

目次
はじめに:共同改善ワークショップとは何か
製造業において、品質向上とコストダウンは永遠のテーマです。
現場の従業員、バイヤー、サプライヤーなど、様々な立場の人が頭を悩ませる課題ですが、これらを同時に達成するというのは簡単なことではありません。
その解決策として注目されているのが、「共同改善ワークショップ」です。
共同改善ワークショップとは、購買部門とサプライヤー現場、時には設計部門や品質管理部門をも巻き込み、同じテーブルの上で課題を見つけ、解決策を練る取り組みです。
日本の製造業が長年培ってきた「すり合わせ文化」と「現場主義」を活かしつつ、アナログからデジタルへの橋渡しを狙う重要な活動となっています。
本記事では、私の工場現場での実体験や最新の業界動向も交えつつ、共同改善ワークショップの有効性と導入のポイント、具体的な成功事例をご紹介します。
バイヤー志望の方、サプライヤーの方もぜひお読みいただき、実践のヒントを掴んでください。
なぜ今、共同改善ワークショップが必要なのか
業界全体に残るアナログ体質への危機感
製造業の現場には、今なお昭和から続く「職人の直感」や「紙と電話による管理」が根付いています。
たしかに、ベテランの暗黙知や経験は大きな資産ですが、コストや品質に直結する部分でブラックボックス化してしまう危険性も無視できません。
世界的なサプライチェーンの変動、原材料価格の高騰、取引先からの高度な品質要求など、私たちを取り巻く環境は年々厳しくなっています。
「去年と同じ方法」では、もう生き残れない。
この現場感をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
コスト低減にも限界が見えてきた現実
従来のコストダウン手法、たとえば単純な値下げ交渉や資材原価分析、工程短縮などはほぼやり尽くされた感があります。
しかし、それだけでは求められる水準に届かないケースも増えています。
高度な品質も維持しつつ、さらなるコスト競争力を持たせるためには、「現場を巻き込んだ本質的な改善=共同改善ワークショップ」の発想が不可欠なのです。
共同改善ワークショップの特徴とメリット
サプライヤーとバイヤーが垣根を越えて協働
従来の「価格交渉」だけに終始する関係では、互いに疑心暗鬼から本音を隠しやすくなります。
一方、ワークショップという形式で、お互いに現状課題を持ち寄り、顕在化した問題だけでなく背景まで掘り下げることで、「敵対」から「共創」への意識転換が図れます。
現場起点のボトムアップ提案
ワークショップの場では、実際にものづくりをしている現場リーダーやライン担当者の声も重視します。
これにより、従来見落とされがちだった細かなロスや、工具・治具の無駄、お客様には伝わりにくい工程内トラブルなど、「現場だからこそ分かる課題」を抽出しやすくなります。
品質・コスト・納期(QCD)を同時に最適化
共同改善ワークショップでは、一方的なコストカットに終わりません。
「この検査、二重でやる意義があるか?」「この工程の手待ちを標準化できないか?」といった話し合いを重ね、その場で品質リスクも検証しつつ、QCDをトータルで最適化するアプローチが可能です。
成功する共同改善ワークショップの進め方
参加メンバーの選定と巻き込み
まず重要なのは、組織の枠を超えて現場経験者や実務者を参加させることです。
バイヤーだけでなく、生産技術・品質管理・現場リーダーなど、多角的な視点を持つメンバーをアサインしましょう。
サプライヤー側にも「普段声を出せない現場スタッフ」を招いてもらえると、思わぬ知恵や課題が飛び出します。
テーマの明確化とゴール設定
テーマはできるだけ具体的に定めます。
「コスト削減」ではなく、「組立ラインでのリードタイム短縮」や「不良率2%削減」など、達成イメージが描ける目標を用意しましょう。
また、「コストダウン=値引き交渉」ではなく、「現場を変えて余白を作り、その一部をシェアする」発想での合意形成が大切です。
現場観察と数字の見える化
ワークショップでの大きなポイントは、「現場で歩いて本当に見る」こと。
製造現場では、会議室だけでは分からない現象が数多くあります。
実際に工程を歩き、現物・現場・現実(いわゆる3現主義)を徹底しましょう。
また、課題やロスは可能な限り数値化して共有します。
たとえば「手待ち時間5分/ロット発生」「検査工数1工程あたり3分」など、客観的なデータが議論を深めます。
課題抽出からアイデア創出へ
現場での観察結果をもとに、ロス、無駄、バラツキ、不合理な慣習を洗い出します。
この際、バイヤー目線だけ、サプライヤー目線だけに偏った議論は避け、双方の現場事例を出し合いましょう。
アイデア出しには、「なぜなぜ分析」や「魚骨図」などのQC手法活用も有効です。
昭和的なやりとりにこだわらず、デジタルツール(タブレットやホワイトボードソフトなど)も活用してみてください。
トライアル実施と効果測定
優先順位の高い改善策を決めたら、現場でトライアルを実施します。
このフローを「やってみて・測って・直す」のPDCAに落とし込みつつ、改善が定着するまで複数回繰り返すことが成功への近道です。
実際の現場での事例紹介
組立工程の共通治具化でコストを40%削減
ある自動車部品メーカーの例です。
購買・現場・サプライヤーが共同でワークショップを実施し、組立治具を共通化。
従来は品番ごとに個別治具を作っており、その準備や管理工数がかかっていました。
現場を回り、実際にどこで待ち・ムダが発生しているかを「見える化」。
標準工程を洗い出し、「本当に個別治具が必要なポイントは?」と議論し、全体の7割以上の工程を共通治具化。
治具製作費の削減、段取り換え時間の短縮、熟練度による作業バラツキの平準化も実現し、最終的にコストを約40%削減しました。
検査工程のデジタル化で品質不良を半減
品質部門と現場スタッフが協力し、「なぜミスがなくならないのか」を徹底的に分析。
従来の紙ベースのチェックリストから、タブレット管理へ切り替えることで作業ログの正確な管理とフィードバックが可能に。
人による見逃し・記入漏れがほぼ消滅し、納品品質不良も50%近く削減できました。
このような事例からも、ワークショップ形式で「現場主体」で改善を回す効果は明らかです。
アナログ業界でこそ活きるワークショップのコツ
ベテランの知見をどう引き出すか
「今さらよそ者に言われても…」という反発が生まれやすいのがアナログな現場の本音です。
しかし、ベテランの経験は「なぜ不良が減ったのか」「なぜ新ラインの立ち上げが早かったのか」といった“暗黙知”として蓄積されています。
ワークショップでは、こうした知見を「コツ」ではなく、「標準化・文書化」することを目指しましょう。
インタビューフォーマットを使ってヒアリングしたり、写真や動画と組み合わせて共有したりする仕掛けが有効です。
ITアレルギー克服のアイデア
いきなりフルデジタル化を目指すと現場は戸惑います。
まずは「紙+α」として手書きメモをスマホで集約したり、写真撮影してホワイトボード代わりに使ってみたりなど、小さな成功体験からはじめましょう。
「ITはついていけない」派のスタッフには、「あなたのベストなやり方をデジタルで真似させてほしい」と頼むことで、“自分の技術が次世代に伝わる”という動機が生まれ、巻き込むきっかけになります。
共同改善ワークショップの導入で得られる未来
ワークショップが継続していくと、「現場が変わる手応え」と「サプライヤーとの信頼関係強化」という2つのメリットを実感できます。
バイヤーにとっては、「単なる調達先」から「課題解決パートナー」としてのサプライヤーと付き合うことで、長期的な品質・コスト競争力を得られます。
サプライヤーにとっても、「値引き交渉」ではなく「自社の技術力向上や工場力強化」に投資でき、他社との差別化も図れるでしょう。
これはまさに、昭和の匠の技術と、令和のデジタル改革が共存・融合する“新しい製造業の在り方”といえます。
まとめ:製造業の現場力を共創する時代へ
品質とコストは、どちらか一方を優先して片方を犠牲にするものではありません。
「一緒に考え、一緒に気付き、一緒に改善する」共同改善ワークショップは、激変する製造業界において双方が成長できる最良の機会です。
現場の小さな知恵も、異なる立場からの視点も、「見える化」し共有することで新たな価値を生み出します。
皆さんの現場でも、ぜひワークショップを試験導入し、ものづくりの“真の現場力”を最大限に引き出してみてください。
これからの時代、他社との差は「共創力」。
今こそ、アナログの良さとデジタルの強みを掛け合わせて、新たな地平線を切り拓いていきましょう。
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