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部材ごとの交換周期を誤るとコストが増える理由

目次
はじめに:部材交換周期の最適化はコスト競争力の源泉
現場で「交換周期なんてメーカー推奨通りにしていれば問題ない」と考えている方は意外と多いかもしれません。
確かに、メーカーのマニュアルに従うことは機器維持の基本ですが、部材ごとの最適な交換タイミングを見誤ると、実際には目に見えない無駄コストが発生していることが少なくありません。
この記事では、調達購買や生産管理・保全の現場で培った知見と、現場独特のアナログ文化が今なお根強く残る製造業の背景を踏まえつつ、部材交換周期を最適化しないことでなぜコストが膨らむのか、そのメカニズムと実際の対策までを詳しく解説します。
部材交換の現場あるある:なぜ交換周期は曖昧になりがちか
「昔からこうしてきた」文化の影
長年にわたり現場に染み付いた「慣習的な交換周期」。
たとえば、ある部品は毎月の点検ごとに、また別の部品は年に1回一斉交換する、というやり方です。
こうした方法自体は一見合理的に見えますが、根拠が「なんとなく」や「前任者からずっとそうやってきた」場合、本当に適切かどうかは疑問が残ります。
交換サイクルが「短すぎる」と、まだ使える部材まで廃棄することになります。
逆に「長すぎる」と、不具合やトラブルによる突発停止が起こり、ダウンタイム損失や修理コストが一気に増大します。
保守部品の現場ストック主義もコスト増の温床
「万一のために」と保守部品を過剰に在庫している現場は少なくありません。
この余剰在庫の維持費は、そのままコスト増加要因です。
さらに、部材の劣化や経年変化により、在庫しているうちに使用期限を迎えてしまう場合もあります。
部材ごとに見極めたい「最適な交換周期」とは
交換周期の最適化とは何か
最適な交換周期とは、「トータルコストが最も小さくなるタイミングで部材を交換する」ことです。
この考え方は、
①交換自体にかかるコスト(作業工数、部材費用)
②突発停止時のコスト(生産損失、緊急手配費用、信用失墜コスト)
③ストック維持コスト(保管、廃棄、減価償却)
の三要素のバランスを意識して設計します。
RBI(リスクベースド・インスペクション)の発想
近年は、RBI(リスクベースド・インスペクション)という考え方が台頭しています。
これは、部材の故障確率や影響度をもとに、リスクが高い部材は頻繁に点検・交換、リスクが低ければ周期を長く設定する「メリハリ型」メンテナンスです。
デジタル管理ツールを使い始めている現場もありますが、昭和から続く現場感や経験も加味しつつ、合理的に交換周期を決めていくのが今後の潮流です。
部材ごとの適切な交換周期を誤るとコストが増える理由
1. 交換タイミングの「前倒し」は部材コストのムダ増加
例えば、ポンプベルトやパッキンなどを、寿命の半分で定期交換しているケース。
まだ使用できる部材を廃棄し、新品を調達するため、純粋に部材コストが倍かかってしまいます。
また、余剰に発注することで、購買ボリュームが増加し、キャッシュフローにも影響が出ます。
2. 遅すぎる交換は「突発コスト」と機会損失を招く
一方、「限界まで使ってから交換」の現場主義が根付いている場合。
突発のトラブルで生産ラインが止まり、修理部品の緊急注文や、特急納品費用が発生します。
なにより、多くの製造業では生産が停止することで、数十万・数百万円の損失が瞬時に発生します。
これは「作業者の空き時間」「顧客納期遅れによる信頼低下」など、目に見えないコストに直結します。
3. 適正在庫管理ができないことで「棚卸ロス」も増加
部材の交換周期が根拠なく曖昧だと、「何を」「どれだけ」ストックすべきかの基準が分からず、余剰在庫を抱えがちです。
結果として、使われないまま経年劣化した部材の廃棄や、定期の棚卸業務への負担増など、間接的なコストがボディブローのように効いてきます。
現場でありがちな失敗例
歴史ある製造業の現場では、次のようなことが現実に起きています。
・部署や担当者ごとに部材の交換基準が異なる(属人化)
・「とりあえずマニュアル通り」が常態化し、見直しされない
・交換サイクルが不明確なため、急なトラブル時に責任の所在が曖昧
・年度末など「予算消化」目的で一斉交換し、無駄にストックが増える
こうした属人的な管理こそが、コスト増の最大要因となります。
交換周期を最適化する仕組みとベストプラクティス
1. 部材ごとの「寿命データ」の見える化
まず着手すべきは、主要な消耗部材ごとの「実際の寿命」データを記録し、見える化することです。
日々の点検記録や、トラブル発生履歴から、平均的な寿命や、どのタイミングで故障が起きやすいのかを集計します。
2. 交換周期の根拠を「共通言語化」する
ベテランの経験をマニュアルに反映し、交換タイミングやリスク評価をブラックボックス化させず、現場で「なぜ今交換するのか」を共有します。
部門や担当者を問わず、共通に使える「早見表」やデータベースを整備することが重要です。
3. 予兆保全とIoT活用への歩み寄り
最新のIoT技術を使えば、稼働状況や振動、温度などから部材の劣化を予測できる時代になってきました。
「まだまだ昭和から抜け出せない」と言われる現場でも、簡易センサーやクラウド管理を活用することで、突発停止を未然に防ぐことが可能です。
部材交換周期最適化のためにバイヤー・サプライヤーが考えるべき視点
バイヤー側:交換周期起点でのTCO(総保有コスト)把握
「部品価格が安いからOK」ではなく、「どのタイミングで、どれだけの作業・在庫コストがかかるのか」というTCO(Total Cost of Ownership)の視点が不可欠です。
また、交換周期に合わせたジャストインタイム納品や、余剰在庫の圧縮提案が求められます。
サプライヤー側:現場の運用実態まで深堀するヒアリング力
サプライヤーが製造現場目線でどこで・どんなタイミングで部材が使われているのかを知れば、納品タイミングや過剰在庫を抑える新しい提案も可能になります。
「ただカタログ通り売る」のではなく、「現場の課題」を理解した上で、一緒に最適サイクルを設計する姿勢が重要です。
結論:部材交換周期の最適化が、製造業の原価競争力を左右する
部材交換周期の最適化は、「見えないコスト」を徹底的に炙り出し、最小化していく経営の知恵です。
これまでの「ベテラン任せ」「マニュアル一辺倒」「曖昧な現場ルール」では、もうコストダウンは頭打ちです。
購買、生産管理、品質管理、設備保全部門が一枚岩となり、データに基づいた合理的な交換周期を設定・運用していくこと。
この積み上げこそが、サプライチェーン全体の競争力や現場力強化に直結します。
これからの製造業において、「どこよりも部材交換周期にシビア」な会社だけが、グローバル競争の主役となります。
一歩ずつ、現場からその意識改革を始めていきましょう。
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