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遮熱部材の板厚選定ミスが放熱不良を招く理由

目次
はじめに:製造業現場で見落とされがちな「遮熱部材の板厚選定」問題
製造業の現場では日々多くの課題に直面しますが、遮熱部材の板厚選定ミスという一見地味な失敗が大きな放熱不良や設備トラブルの原因となることは、あまり知られていません。
特に昭和時代から連綿と続く「設計の常識」や「この厚みで十分」という慣習が、実は現代の複雑化した製品や生産現場において足かせとなっているケースが目立ちます。
この記事では、実際の工場現場での事例や理論的な根拠をもとに、なぜ遮熱部材の板厚選定ミスが放熱不良を招くのか、その背景や対策について、バイヤーやサプライヤー双方の目線から深堀りします。
遮熱部材と放熱機構の基本知識
遮熱部材の役割とは
遮熱部材は、高温部品からの熱を遮断し、熱影響による周辺部品の劣化や温度上昇を抑えるために用いられます。
金属やセラミック、特殊樹脂など、各種材料の特性を活かし、冷却面・安全面・品質面で重要な役割を担っています。
遮熱と放熱は一見相反する働きですが、部材一枚の選び方一つで、冷却効率も大きく変わるため、設計初期段階から知見を取り入れる必要があります。
放熱不良とは何か
「放熱不良」とは、設計・運用上想定したほど熱が機器外に逃げず、機器温度が上昇してしまう現象です。
部品の寿命短縮や異常発熱による不良、操業停止リスクにつながり、場合によっては人命にかかわる事故にも発展しかねません。
板厚選定ミスがなぜ敬遠されがちなのか
伝統的な「勘と経験」による設計判断
長らく部材の板厚は設計者の「勘と経験」に依存してきました。
「昔からこの厚みで大丈夫だった」「コスト重視で薄い板にしている」といった理由で、科学的な熱シミュレーションや実負荷試験を省略するケースも珍しくありません。
現場は常にコストダウンと納期短縮の圧力を受けており、“前例踏襲”や“保守的設計”が温存されやすい風土が根強く残っています。
コスト圧力と板厚のジレンマ
板厚を薄くすればするほど材料コストは安くなります。重量も減り、運搬や組立の効率も高まります。
一方で、遮熱材の機能不全・経年劣化や放熱異常といったリスクが高まり、トータルコストではむしろ高リスクとなる場合が多いのです。
遮熱部材の板厚選定と熱伝導の関係性
板厚が及ぼす熱伝導のメカニズム
素材による熱伝導率はもちろんですが、「厚さ」も熱伝導効率に直接影響を与えます。
物理的には下記のような式が成立します。
Q = λ × (A/Δx) × (T1 − T2)
Q:熱流量、λ:熱伝導率、A:断面積、Δx:厚み、T1・T2:温度差
板厚Δxが増えるほど、熱は通りにくくなります。過剰な板厚は熱遮断効果を高めるものの、冷却も妨げてしまいます。
最適板厚の「二律背反」
遮熱が目的なら厚いほうが良さそうですが、放熱(冷却)が必要なら薄くするのがセオリーです。
設計課題としては「どちらを優先するのか」「両立させる材料や設計はないのか」というコンフリクトが存在します。
そのため、アプリケーションごとに求められる最適板厚を見極めることが、設計段階での“腕の見せどころ”でもあります。
現場で実際に起こる板厚選定ミス事例とその影響
事例1:部材厚み最小化による焼損トラブル
ある自動車部品工場で、遮熱部材の厚みを従来品より0.4mm薄くしたところ、隣接する端子やハーネスが高温で溶損する事故が発生しました。
原因は、遮熱部材自体は強度・剛性面でクリアしていましたが、高熱源からの輻射熱を十分に遮断できず、余分な熱が周辺部品に伝わってしまったこと。
「薄くすればするほどコストも下がる」と安易に判断したことが裏目に出、「現場で焼け焦げ臭がする」「製品保証対応が必要」と大ごとになってしまいました。
事例2:厚すぎる板厚で冷却不良に
電子機器のヒートシンク保護用遮熱板で、十分過剰な安全マージンを持たせて2mm厚を採用した例があります。
結果として、遮蔽は十分できたもののヒートシンク自体の放熱性が制限され、機器内温度が上昇。
夏場や連続稼働条件下で自動停止やセンサー暴走といった不可解なトラブルが続発しました。
「遮熱効果を最優先したつもりが、機器本体の冷却・放熱を阻害してしまった」典型例です。
板厚選定ミスがもたらすビジネスリスク
品質トラブルが次工程・顧客に拡大
板厚選定ミスによる放熱不良は、結果として“見えない品質トラブル”となって社内の後工程やエンドユーザーに伝播します。
原因究明に時間を取られたり、保証コスト・リコールにつながる“潜在クレーム”を生むもとになります。
量産段階での修正コスト高騰
量産開始後に板厚見直しが発覚すると、型の作り直し、部品手配遅延、生産ライン改造など、全体進行に甚大な影響を及ぼします。
このため「初回板厚は保守的に選定しがち」という守りの姿勢を取りがちですが、逆に言えば初期検討・解析・テスト工程をより重視すべきという教訓にもなります。
板厚選定ミスを防ぐために現場ができること
シミュレーション技術の積極活用
CAE(Computer Aided Engineering)、熱流体シミュレーションを活用することで、「どの厚みが遮熱・放熱バランス上最適か」を設計段階で安価に検討できるようになりました。
従来の“勘所”を数値で補正することで、板厚選定の科学的根拠を高め、意思決定の質を向上させることが可能です。
現物による評価とフィードバック強化
試作品段階で実機評価を必ず行い、温度分布測定・サーモグラフィ分析をセットで行うことが重要です。
図面通り・理屈通りにいかない部分を早期につかみ、現場目線の気づきを設計へダイレクトに伝える――“部門横断のフィードバック”がトラブル未然防止策となります。
協力サプライヤーとのコミュニケーション深化
バイヤーとしても「なぜ現場がその板厚を求めているのか」「現場の使われ方は実際どうか」を深く掘り下げる交渉姿勢が必要です。
サプライヤーも自社技術の提案や試験データの提供を積極的に行い、両者協働で最適解を追求する関係性を目指すことが現場力の底上げにつながります。
昭和型アナログ製造業が抱える“アップデート”の壁
「前例主義」と「ここまでで十分だろう」の落とし穴
業歴の長い現場ほど前例や暗黙知への依存が強く、設計レビューやPDCAサイクルが形式的になりがちです。
「減点主義」の管理文化下では新しい方法への挑戦より失敗回避に走りやすいですが、今後はAI・デジタル技術活用やオープンな意見交換が不可欠です。
DX(デジタルトランスフォーメーション)による設計思想の転換
熱設計や材料選定も含めデータ可視化・解析が当たり前の時代にシフトしています。
業界全体がデジタルツールを取り入れ、SCMや設計コラボレーションの質を高めることで、「板厚選定ミスからの脱却」も加速します。
現場・バイヤー・サプライヤーの三位一体による業界進化
現場の生きた知識と、バイヤーの顧客視点、そしてサプライヤーの最新技術――
この三者が腹を割って対話し、遮熱部材の課題に臨むことで、最適板厚の新たな常識が生まれます。
「こうあるべき」「これまではこうだった」を脱し、現場起点で“一つ上の設計・調達”を実現しましょう。
まとめ:遮熱部材の板厚、先入観を捨てて科学的に判断を
遮熱部材の板厚選定ミスは、見えない事故やコスト増につながる“地味だが重大”な失敗の一つです。
「勘と経験」「前例」に頼るだけでなく、理論・シミュレーション・現場評価・関係者連携をバランスよく活用することが、これからの製造業進化の鍵となります。
地道な積み重ねこそ、業界全体の信頼や品質向上につながる。
遮熱部材の板厚選定に一歩踏み込んだ“攻めの調達・設計”を、今こそ一緒に進めていきましょう。
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