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カタログ合成で買う設計を増やす外販部品活用戦略

目次
はじめに:製造現場に迫る設計プロセス改革の波
日本の製造業では、「設計=自製品の専用部品」という認識が長く根強く残っていました。
設計者がゼロから部品を起こし、調達部門が個別見積もりや金型手配に追われる。
この昭和型モデルは品質と独自性に優れつつ、リードタイム増やコスト高、サプライチェーン硬直化など多くの課題を抱えています。
昨今では「外販部品(カタログパーツ)」を「合成(組み合わせ)」して設計する動きが加速しています。
特にコストダウンやQCD(品質・コスト・納期)の最適化を求められるバイヤーやサプライヤー、現場設計者から注目を集めている設計手法です。
本記事では、20年以上の現場経験に基づき、「カタログ合成で“買う設計”を増やす外販部品活用戦略」について現場目線で掘り下げます。
なぜ今「カタログ合成」なのか?時代背景と課題意識
オーダーメイド偏重に潜む3つのデメリット
自社専用品(特注品)のみを許容する設計思想は、見方を変えれば「思考停止」です。
以下の課題が顕在化しています。
・一品一様で設計や調達負荷が高い
・サプライチェーンが属人的で、リスクやコストが高騰
・納期遅延、調達先依存によるトラブルが絶えない
コロナ禍や国際摩擦、原材料高騰といった外的要因で、部品一つで生産ラインが止まるケースも多発しました。
カタログ部品の進化とデジタル化の波
一方で市販パーツ・カタログ部品は、以前よりも精度・仕様・展開力ともに格段に向上。
WEBで即座にスペック、価格、納期情報の確認と入手ができるよう進化し、「なければ作る」から「あるものを最適に使う」へ業界のパラダイムが移り始めています。
設計・製造の現場には「設計の標準化=工数短縮」「カタログ合成によるバリューチェーン全体の効率化」が求められているのです。
カタログ合成設計とは何か?現場流の定義・考え方
カタログ合成設計とは、「市販の標準部品(外販部品)を、あたかもレゴのように自在に組み合わせ、“自社仕様”のシステムやモジュールを短期間・低コストで仕立てる設計手法」です。
部品同士を組み合わせて機能・性能を満たす形に仕立てることから、「合成設計」と呼ばれます。
端的に言えば、
・特注品:1 ⇒ 1
・カタログ合成:A×B×C ⇒ 自社独自機能
のイメージです。
自社の生産設備、装置、ラインの中核・強み=“核技術”だけに自社開発リソースを集中し、それ以外は市販モジュールで効率的に設計する。
この考え方は、開発も現場生産もDX時代を勝ち抜く製造業の「新しい常識」へと変わりつつあります。
カタログ合成による設計・調達・製造プロセスの革新
設計部門で得られる主なメリット
第一に「設計工数の圧縮」。
新規開発時にいちいち図面作成や公差検討、個別強度検証……という昔ながらの作業を大幅に削減できます。
部品点数の削減・標準化はメンテナンスや後工程での不具合低減にも繋がります。
さらに、すでに実績ある信頼性の高い部品を使うことで、設計品質も向上しやすい。
バイヤー・調達部門にとっての本質的メリット
調達業務の効率化とサプライチェーンリスクの低減が最も大きいメリットです。
カタログ品であれば複数サプライヤーからの調達も容易。
価格交渉やリードタイム短縮、在庫最適化など購買戦略上の選択肢が圧倒的に増えます。
「モノが無い」「メーカー休止」といったトラブル時も、迅速な代替採用が可能になります。
生産管理や現場オペレーションにも波及する効果
標準化されたカタログ部品は、生産計画や工程設計にも好影響を与えます。
納期や在庫管理、品質安定化のしやすさなど「現場目線」での効果は計り知れません。
たとえば設備のレイアウト変更やライン増設時にも部品共通化による対応力が増す。
この柔軟性が、混流生産や多品種少量生産を強く求められる現場では特に大きな武器となります。
カタログ合成設計を成功させる具体的アプローチ
1. 設計思想の改革:部門横断の啓蒙活動
いきなり「明日から全部カタログ部品で」と言っても現場は動きません。
まず経営層・設計・調達・生産部門で「なぜカタログ合成なのか?どんな効果/リスクがあるのか?」を共有し、共通KPIを持って進めることが実践には不可欠です。
現場設計者に「守破離(しゅはり)」と同じく、「なぜそこだけはカタログ品で良いのか?」を納得してもらう土壌づくりが肝要です。
2. カタログ部品DBの拡充・自動化ツールの導入
最近の大手サプライヤー各社は、「WEBカタログ」「3Dモデル(CADデータ)自動生成」「在庫確認API」などIT化を推し進めています。
設計環境にこれらデータベースを組み込み、要件・仕様検索やCAD図面ダウンロードを高速・自動化しましょう。
部品ライブラリの充実が、設計現場の思考停止や特注依存から卒業する最大の鍵です。
3. “合成”しやすい業務標準・設計基準の再構築
いくら部品選定の自由度が増えても、「こんな場合はこの組み合わせ」という社内ルール(設計標準)がなければブループリント化は難しい。
例えば、
・基本構造や接続寸法の共通化
・インターフェース設計(規格ピッチ・結線方法など)の標準化
・「このターゲットコストならカタログ部品活用で」といった判断基準の策定
こういった業務基準を地道に整備しましょう。
4. 外販部品メーカーとの戦略的パートナーシップ
カタログ部品は「単品買い」だけではありません。
メーカーの技術窓口と一緒に最適な組み合わせ相談や新製品情報の収集も有効です。
必要な微細加工はサプライヤー側の標準アップグレードで対応できる場合も多く、部品メーカーと積極的に連携すれば、カタログ部品の限界値も日進月歩で広がります。
現実の壁:カタログ活用に立ちはだかる課題と工夫
「ウチの仕様じゃ使えない」に潜む思考の既得権益
長年の現場体質が災いし、「それじゃウチの品質基準が通らない」「設計が自由にならない」といった反発はついて回ります。
しかし裏返せば、設計要求自体が本当に“固有技術”に妥当だったか再検証し直す好機です。
「なぜ、そこだけ独自部品でなければならないのか?」を徹底的に“問い直すこと”。
これこそが設計現場に根付く「昭和的思考」から脱却する第一歩です。
調達先/品質保証など組織横断的な対応も不可欠
外販部品の場合、複数社からの安定調達や仕様確認、品質保証体制の見直しも同時進行で重要です。
部品の型番や仕様変更リスクに備えたバックアップ体制、トレーサビリティ確保、設計変更管理のルール化が必要。
さらに、外販部品メーカーとの技術的合意・品質契約も明文化しておくことで、「調達・設計・品質保証」が同じゴールを目指せます。
カタログ合成で輝く“次世代バイヤー像”とサプライヤーの視点
バイヤーに求められる新スキルセット
従来の「指定部品を安く買う」スタイルから、「自社製品構成の最適化=購買戦略」へとバイヤーの役割は激変しています。
・外販部品の技術情報収集力
・グローバルサプライチェーンマネジメント能力
・設計・現場での利用フィードバック分析力
こうしたスキルを武器に、全社的最適化を提案・牽引できるバイヤーは今後さらに重宝されます。
サプライヤー側から見た「バイヤーの思考」の理解
サプライヤー(部品メーカー・商社)にとっては、どんな困りごと/ニーズ/最適化案にバイヤーが関心を持っているかを的確につかむことが重要です。
「技術カタログの充実」「納期・支援体制強化」だけでなく、「バイヤーと設計現場両方にとってNo.1提案」を意識すれば、競合優位性も大きく高まります。
まとめ:昭和から令和へ、“買う設計”は最適経営の武器
外販部品を戦略的に活用し、設計・調達・生産全体を最適化する「カタログ合成設計」。
これは単なる“コストダウン施策”ではなく、今や製造業の競争力を根本から底上げする「経営イノベーション」なのです。
デジタル化、グローバル化、そしてQCD高度化の荒波を乗り越えるには、従来の常識を問い直し、“買う設計”を積極的に仕掛けていくことが鍵です。
バイヤー、設計者、サプライヤー、それぞれの立場から業務を見つめ直し、「最小の自製・最大のカタログ活用」により、製造業の明るい未来を切り開いていきましょう。
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