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供給拠点が分散要求され物流コストが増大する問題

目次
はじめに:供給拠点分散と物流コスト増大の現状
ここ数年、製造業界では「供給拠点の分散化」が加速しています。
その背景には、地政学リスクや自然災害、さらにはパンデミックなどによるサプライチェーンの混乱といった要因が重なっています。
企業は安定調達のため、特定地域への依存状態から脱却し、複数の地域に供給拠点を分散させる動きが顕著です。
一方で、この分散化の流れに伴い、物流コストの急激な増大が深刻な課題となっています。
工場長や調達購買担当者、さらには工場の現場リーダーにとって、供給拠点の分散がもたらすメリットとデメリットのバランスをどう取るのかが戦略のカギとなっています。
供給拠点分散の背景
グローバルリスクとサプライチェーンの脆弱性
近年、米中対立やウクライナ情勢など、世界的な地政学リスクがサプライチェーンへ重大なインパクトを及ぼしています。
以前はコストを抑えるために中国や東南アジアへ集中生産するモデルが主流でしたが、リスク分散の必要性から、日米欧、ASEAN、インドなど多拠点生産体制に移行する企業が増えています。
顧客要求の多様化と短納期化
エンドユーザーからの要求は、かつてないほど多様化し、製品のカスタマイズ化や短納期対応が求められています。
そのため、顧客に近い拠点で生産を行うことで、迅速な納品とサービスを実現する動きも拡大しています。
災害・パンデミックによるロックダウンの影響
2011年の東日本大震災、2020年のコロナ禍での工場封鎖などの経験から、一極集中の調達や生産は企業存続に直結する脅威となりました。
BCP(事業継続計画)対応として拠点分散は避けて通れない経営課題となりました。
分散化がもたらす物流コストの増大要因
輸送ルートの複雑化
拠点を複数に分散することで、従来の「最適化された大量一括輸送」ではなく、複数ルート・小口分散輸送が常態化します。
これにより、長距離や国際輸送の回数増加、積載効率の低下、混載・積み替えによるコストアップが避けられなくなります。
在庫・倉庫コストの増大
各拠点毎に安全在庫を持たざるを得ず、全体として過剰在庫、倉庫賃料・維持管理コストの増大につながります。
拠点間での横持ち(拠点間移動)も発生し、無駄な物流コストが膨らみやすくなります。
輸送リードタイムの管理難易度アップ
供給拠点や調達先が分散すると、従来より多様なリードタイムのコントロールが必要になります。
製造予定・納期管理が煩雑化し、万一の遅延が多段階の物流費増大を引き起こします。
現場のリアル:昭和的アナログ業界ならではのジレンマ
なかなか進まない物流のデジタル化
昨今DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれてはいますが、製造業現場においてはEXCEL、FAX、電話といった昭和的アナログ手法が根強く残っています。
複雑な輸送ルートや複数拠点の在庫情報を、各現場担当の「手作業マスタ管理」でカバーしている企業も少なくありません。
情報がバラバラで、イレギュラー発生時の対応も非常に属人的になりがちです。
現場目線でのコスト圧力
購買部門はグローバルで低コストを追求しようとしますが、工場現場から見ると作業量の増加や柔軟な現場調整の限界に直面しています。
各地に分散された小ロット部品の受入・梱包作業、出荷のための人員確保、さらには現地ごとの法規対応など、コストに反映されにくい“隠れたコスト”がかさみます。
バイヤーと現場の視点のギャップ
調達部門のバイヤーは全体最適を考えて拠点分散やコストカット提案をしますが、工場現場や物流担当は日々増える業務負荷に悲鳴をあげています。
サプライヤー側から見れば、取引企業のバイヤーがなぜ拠点分散を要求するのか、その理由を正しく理解できていないことも多々あります。
ラテラルシンキングで考える革新的解決アプローチ
1. “物流を黒子化”するアウトソーシング改革
一部の製造業では、従来の「自前主義」の枠を越えて、第三者ロジスティクス(3PL)やフルフィルメントサービスの活用が進んでいます。
供給拠点毎に最適な物流会社を選定するのではなく、「物流全体の設計・管理」そのものをロジスティクスのプロに委託する発想です。
これにより、複雑な輸送ルート・倉庫管理・在庫最適化まで一貫して外部に任せることで、現場人員の負荷とコストを減らす事例も出てきています。
2. 需要地近傍生産とグローバル同時立ち上げのハイブリッド
コストやリスク分散だけではなく「どこで何をどれだけ作るか」を戦略的に見極めることが求められます。
最新鋭のIoT工場や、自動化されたモジュール生産ラインにより、需要地に近い小規模拠点の高付加価値化も現実味を帯びています。
またグローバルで同時に新製品ラインを立ち上げ、部品標準化を進めることで、拠点間融通や、物流コストの平準化も期待されています。
3. 情報連携+ローコードDXによる現場効率化
大掛かりなERPやSCMシステムの導入は資金・人材の壁が高い一方で、現場レベルで利用可能な「ローコードアプリ」や「クラウド在庫可視化」からスタートする企業も増えています。
デジタル化により、拠点や在庫をリアルタイムで「見える化」し、余剰コスト発生を予防することが現実的な第1歩となるでしょう。
4. 物流網のシェアリングエコノミー化
オープンイノベーションの1つとして、物流リソースのシェアリングも拡大しています。
同業他社・異業種間でも、空きトラック・倉庫スペースをネットワーク化し、無駄のない共同物流体制を作るケースが出てきました。
柔軟な発想と協業こそ、今後の物流コスト抑制に必須の要素です。
サプライヤー視点:バイヤーの本音と交渉術
サプライヤーとしては、なぜバイヤーが供給拠点分散や小ロット分納、納期短縮を求めるのか、その背後にある“リスク分散”や“顧客対応”へのプレッシャーを理解することが極めて重要です。
価格面だけでなく、物流対応力や緊急時の調整力など「現場力」そのものが新たな競争軸になりつつあります。
バイヤーは単に安さを追求しているのではなく、サプライチェーン全体の「安定性」や「最終顧客への納期責任」まで見据えたうえで調達条件を出しています。
サプライヤー側もその本音に応え、自社の物流・在庫管理の工夫や納品柔軟性を積極的に提案できれば、新たなビジネスチャンスにつながるでしょう。
まとめ:ラストワンマイルの現場力が企業競争力を決める
供給拠点の分散要求とともに物流コスト増大という課題に直面している今、製造業の現場には従来の枠組みを超えた“新しい物流設計”の発想と、アナログとデジタルを融合した「現場力強化」が求められています。
今後もグローバルリスクや顧客要求の変化は止まりません。
持続可能なサプライチェーンを構築するためには、現場のリアルな声に根ざした実践的な改善と、革新的な仕組み作りの両輪が必要です。
バイヤーを目指す方、現役バイヤー、現場リーダー、そしてサプライヤーの皆様もぜひ、一度自社の「物流・供給のやり方」を 問い直してみてください。
変化の時代こそ、現場に立脚したラテラルシンキングが、次世代のものづくりを切り拓くはずです。
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