上司の自己都合で振り回される部下の負担が増す問題

はじめに：なぜ今、部下の負担が増しているのか

製造業の現場では、上司の方針や指示が現場の動きを大きく左右します。
近年、働き方改革やデジタルトランスフォーメーションが叫ばれる一方で、特に昭和の時代からの意思決定やマネジメント手法を引きずっている職場も少なくありません。
その結果、「上司の自己都合」で現場が振り回され、部下の負担だけが増すという現象が顕著になっています。

本記事では、私自身が工場現場で感じてきたこと、そして業界全体で見られる傾向などを踏まえ、「なぜ上司の自己都合で部下が割を食うのか」「どうすればこの悪循環から抜け出せるのか」を現場目線で解説していきます。
サプライヤー・バイヤー両方の立場にも触れ、調達や品質管理、生産現場に携わる全ての方に現実的なヒントを提供します。

上司の自己都合とは何か？実態とその背景

自己都合による振り回しの典型例

自己都合とは、会社やチーム目標よりも、自分の評価や保身・こだわりを優先して下した意思決定や行動を指します。
現場では、このような上司の行動をよく目にします。

例えば、
– 急な方針転換を現場に丸投げする
– 数字合わせのためだけに生産スケジュールを無理に組み直させる
– 問題発生時、自分の責任を回避するために部下に原因を押し付ける
– お気に入りの部下だけに情報を流し、全体調整を怠る

このような行為が日常的に横行していると、現場は不信感に満ち、効率や士気も大きく低下します。

なぜ自己都合がまかり通るのか？アナログ業界の弱点

昭和的なマネジメントが色濃く残るアナログ業界では、「上司に逆らうな」「その場の雰囲気に流されるな」といった空気が支配的です。
データよりも「経験」「勘」「主観」が優先され、論理的な会話の基準が曖昧になりがちです。

また、評価指標（KPIなど）が曖昧な現場では、「上司の気分」が方向性を決めるケースも多発します。
責任の所在が不明確で、自分の保身だけを優先する自己都合型マネジメントが根付きやすい土壌になっています。

現場で増加中！部下の負担の中身とは

急な業務変更と調整負担の増大

自己都合で現場が振り回されると、最も打撃を受けるのは生産スケジュールです。
例えば、突発的な方針転換や無理な納期変更が発生すると、それを成立させるために現場担当者は取引先・他部署との調整に追われます。
その結果、本来やるべき業務が後手になり、自主性も失われがちです。

責任の押し付けと精神的負担

不良品が出た際やトラブル時、原因究明や対策を現場にだけ丸投げし、上層部は責任を取らないという事態も頻発しています。
部下は「どう収拾をつけるか」ではなく「どう上司の顔を立てるか」に頭を悩ませ、本来の改善業務や品質向上の時間が奪われます。

業務の属人化と成長機会の損失

自己都合で方針が二転三転すると、現場は応急的に仕事をさばくための「属人技術」を増やします。
マニュアル化や標準化が進まず、新しい人材の育成も後回しになります。
その結果、個々のスキルやノウハウが共有されず、組織全体のパフォーマンス向上が妨げられます。

現場目線で考える「負担を減らす」ためのアプローチ

データによる意思決定プロセスの導入

自己都合による振り回しを防ぐためには、定量的なデータに基づいた意思決定が有効です。
例えば、工程管理や在庫管理、品質指標などの数字データを全員で可視化し、方針転換時の根拠や見通しを明確にします。

「なぜこの納期変更が必要なのか」「どれだけの人手・コストが追加で必要なのか」
こうした具体的な数字が議論のベースになれば、「上司の気分」に左右されず、現場と共通認識を持って進めることができます。

オープンなコミュニケーションの場作り

日本の製造業では「言われたことだけをやる」文化が根強いですが、現場の声を定期的に聞く仕組みの導入が有効です。
例えば、現場朝会やIssue Tracker（課題管理ツール）、月例のミーティングで部下が自由に意見を述べられる環境が重要です。

上司の指示に「NO」や「疑問」を投げかけても良い雰囲気作りをすることで、一方的な自己都合の通用しない職場へと変わっていきます。

業務標準化とマニュアル整備

担当者ごとの属人的な運用を改め、できるだけプロセスや業務内容を標準化・マニュアル化することが急務です。
どの担当者が抜けても業務が回る体制を作れば、急な方針転換や他部署対応の時でも現場担当者の負担が最小限に抑えられます。

特に購買や生産管理など、サプライヤーとの連携や調整が多い部門は、誰が見てもしっかり運用できる業務フローが業務負担軽減のカギです。

昭和から抜け出せないアナログ業界こそ「自己都合」からの脱却を

慢性的な属人化文化、なぜ無くならない？

古い業界体質では、担当変更や人事異動があっても「とりあえず前任を見習え」「上司の言うとおりにしておけ」が強調されます。
なぜこうした文化が残るかと言えば、一見すると短期的には効率的に見えるからです。
しかし、その場しのぎの対応が続けば続くほど、抜本的な業務改善や現場力の底上げが困難になります。

なぜ今こそ現場力アップが必要なのか

2020年代以降、コロナ禍やサプライチェーンの混乱、グローバル競争の激化など、製造業を取り巻く環境は大きく変化しています。
この状況で「上司の自己都合」で現場を振り回すことは、企業の存亡さえ脅かしかねません。
現場の声や個々の負担削減を真剣に考えなければ、人材流出やコスト高騰、不良増加など、負の連鎖が止まらなくなってしまいます。