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Excelで学ぶ誘導モータ設計と小型高効率化のポイント

目次
はじめに:なぜ今、誘導モータの小型高効率化なのか
製造業現場で使われる産業用誘導モータは、私たちのものづくりを支える重要なコンポーネントです。
電動機の中でも導入実績、ランニングコストのバランス、そしてメンテナンス性など、誘導モータの堅牢さは今なお多くの現場で重宝されています。
しかし昨今、「省エネ」「高効率」「装置の小型化」という流れは加速度的に進行中です。
昭和世代が作り上げた、大きくて堅牢なモータから、高効率・省スペースを実現する新型モータへのリプレイス需要も高まっています。
これに対応するには、単なるカタログスペックだけでなく、実践的な設計視点や評価ノウハウが求められます。
今回は、Excelを活用した誘導モータ設計の基本と、現場目線で掴むための小型高効率化のポイントについて網羅的に解説します。
誘導モータの基礎:原理から現場運用まで
誘導モータとは何か
誘導モータは、一次側(固定子)コイルに交流電流を流すと発生する電磁誘導により、二次側(回転子)が回転する仕組みです。
最大の特徴は、回転子部分に接点が不要なため可動部の摩耗リスクが少なく、構造が簡単でメンテナンスがしやすいことです。
また、他のモータ(例:同期モータ、DCブラシレスモータ)と比較して、コストバランスが良いのも魅力です。
誘導モータの主な活躍分野
工場のファン、ポンプ、搬送ベルト、圧縮機、鉄道車両の駆動など、生活インフラや産業インフラ両方で使われています。
大容量・高出力から小型の家電製品までレンジが広いのも特徴です。
Excelで始める誘導モータ設計:モデリングの第一歩
なぜExcelなのか
3DCADやシミュレーションソフトも有用ですが、Excelの手軽さ・可視化性は現場設計や試行錯誤には抜群です。
なぜなら、設計パラメータの変更→即計算→結果可視化→見積支援や報告書作成の流れがスムーズだからです。
また、ベンチマーク(他社比較表・コスト見積)作成にも向いており、これが昭和・平成生まれの現場でもExcelが愛用される理由です。
基本的なExcel設計シート構成例
1. パラメータ入力欄(入力セルの色分けで可読性UP)
– 定格出力(kW)
– 電圧(V)
– 周波数(Hz)
– 効率(%)
– 極数
– 許容温度上昇 など
2. 計算セル(ロータ・ステータ巻線計算、定格トルク、損失分解)
3. 主要寸法算出(直径・長さ・重量目安)
4. 損失表示(鉄損・銅損・その他)
5. 損失低減アイデアの仮説検証(後述)
このように、誰でも再計算でき、設計根拠も共有しやすい構成が鍵です。
設計に役立つ実践的計算式:現場で即使えるExcel活用テクニック
1. トルクの基本式を使いこなす
トルク[Nm]= (出力[W]) / (2π × 回転数[rad/s])
例えば、1.5kW、50Hz、4極(1500min^-1)モータの場合の定格トルクは次の通りです。
回転数=1500min^-1= 1500/60 = 25rps(1秒間に25回転)
トルク= 1500[W]/(2×π×25) ≈ 9.55Nm
このようにExcelで「=出力/(2*PI()*回転数)」とセルを組むことで瞬時に計算できます。
2. 損失分解と効率の算出
誘導モータの損失内訳は、主に
– 鉄損(鉄心の交番磁界による)
– 銅損(巻線の抵抗によるジュール損)
– その他(摩擦・風損、二次損失)
に分かれます。
各損失ごとに削減アイデアを投入する際、Excel上で「試算→仮説立て→もう一度計算」のサイクルが回しやすくなります。
3. 小型化のためのサイズ感・重量試算
モータ重量は出力・効率・冷却方法・使用材料で大きく変わります。
例えば、鉄心材質をハイグレード化(低損失電磁鋼板)した場合、効率アップ→発熱減→ケース小型化、と連鎖的にコンパクト設計が可能です。
Excelで材料変化係数を変数化し、「A材なら重量X、B材ならY」と即座に比較できるシートを作るとベンチマーキングが加速します。
小型高効率化の現場的アプローチ
コアロス削減と新素材活用
誘導モータの小型高効率化には、まず鉄心(コア)の損失低減が必須です。
近年は「超低損失電磁鋼板」や「アモルファス材」など新材料が登場し、各社で適用範囲が拡大しています。
従来は板厚0.5mmが主流でしたが、近年は0.35~0.27mm級の極薄鋼板の採用も進み、鉄損低減&サイズ縮小が実現。
ただし、「材料コスト増」「加工性ダウン」などのトレードオフもあり、部品調達や歩留まり管理の現場力が問われます。
銅損低減と巻線設計の最適化
もう一つの大きな柱が、巻線の銅損低減です。
例えば、
– 連続巻線方式による巻線抵抗の減少
– 高度なインバータ駆動での最適制御
– 冷却システム強化による銅線断面積縮小
などが現場でも導入されています。
巻線の自動化は日本でも近年活発化しており、手巻きからロボット巻線へのリプレイスと共に生産タクトの短縮も進みます。
冷却設計の刷新とケース設計
効率化=発熱減、これは冷却設計にも直結します。
小型ファン・ケースの熱伝導設計・風路見直しにより「同じ温度上昇制限でも、よりコンパクト」を実現可能です。
さらに、樹脂ケースやアディティブ(3Dプリンタ)パーツの採用で、設計の自由度自体が大幅アップし、従来発想からの脱却が図れます。
IoT・異常検知とメンテナンス設計
小型高効率モータは、高回転・高負荷になりやすいため、異常検知用センサー内蔵のニーズも高まっています。
たとえば、バイブレーションセンサーや温度センサーをケース内に設置し、IoTプラットフォームで稼働監視~予兆保全を実現するパターンです。
これも設計初期段階でExcelにコストやスペース見積を組み込むことで、後戻り設計リスク(レトロフィット工事追加コストなど)が激減します。
設計・調達・バイヤー視点から見る競争戦略
メーカー設計部としての差別化ポイント
現場では「どこまで小型化して、どれだけ効率を犠牲にしないか」「コストと納期を守れるか」がカギとなります。
技術戦略としては「他社より5%効率が高いモータ」「同サイズで20%軽量」など明快なスペック差別化が武器になります。
また、カスタム対応力が現場評価で重要視されるため、「Excelでパラメータ変更→即仕様提示」の迅速見積体制は受注競争力の源泉です。
バイヤーとしての着眼点
バイヤー目線では、
– 「新素材導入による値上げ分と、ランニングコスト削減メリット」
– 「高めの初期投資 vs トータルコスト」
– 「小型化による装置全体コスト(設置・保守性含む)の最適化」
などを多角的に評価します。
また、サプライヤーの開発力・安定納期を重視するため、設計プロセスを可視化できるExcel設計書は信頼構築にも寄与します。
サプライヤーから見た受注拡大策
サプライヤーの視点では
– 「他社にはない新材料・新工法」
– 「個別スペック対応力」
– 「工程自動化によるコスト競争力」
の3本柱が重要になります。
その上で、バイヤーが何を重視するのか(安全・納期・調達リスク・アフターサービス)をExcel設計シートで具体的に提案できれば、受注機会は大幅に増えます。
これからの誘導モータ設計者・調達者へのメッセージ
昭和~平成時代のアナログ的な現場対応力、現物限りの職人ワザも確かに大切です。
しかし、これからは「Excelを武器にする設計力+新素材&技術トレンド」というハイブリッド型が最強の現場力へと進化します。
今こそ、現場のノウハウとデジタル計算力を融合し、製造業の新しい地平線を切り拓いていきましょう。
あなたの次の挑戦に、この記事の視点が少しでもお役に立てば幸いです。
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