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箱サイズが最適化されておらず運賃が無駄に増える仕組み

目次
はじめに
製造業の現場では、製品だけでなく梱包や物流のプロセスも利益やコスト競争力に大きな影響を与えています。
中でも「箱サイズの最適化」というテーマは、現場のオペレーションに密接に関わりながらも、見過ごされがちなポイントです。
結果として、運賃が無駄に増えるといった非効率な現象が起きているのは、多くの現場で日常茶飯事ではないでしょうか。
今回は、製造現場で20年以上の経験を持つ筆者が、あらためて箱サイズが最適化されていないことで発生する無駄や業界の慣習的な背景、そして今後求められるアプローチについて、現場目線とバイヤー視点の両面から深堀りします。
箱サイズ最適化の必要性とは
箱サイズが利益に直結する理由
製品出荷に使う段ボールやコンテナのサイズは、単なる包材コストだけでなく、運賃や保管、さらには環境負荷にも直結します。
例えば、必要以上に大きな箱を使えば、
・運送会社が容積重量(サイズ課金)を適用し、実重量より高い運賃になる
・トラック、倉庫、パレットなどのスペースを無駄に消費する
・資材費がかさみ、梱包作業の工数も増える
といった複合的なコストアップにつながります。
逆に言えば、箱サイズが最適化されれば、1箱あたりの出荷コストが下がり、積載効率も向上、業務プロセスもシンプルになります。
現実にはなぜ最適化が進まないのか
しかし現場を歩くと、今なお「大は小を兼ねる」といった昭和的な発想で、実際の中身より明らかに大きな箱が使われ、運賃が無駄に高くなっている場面にしばしば遭遇します。
その一因として、以下のような要素が挙げられます。
・古い型の段ボール箱の在庫稼働を優先した結果、適正が合っていない
・箱の統一化や品番削減が品質管理や受発注管理の効率化と相反しやすい
・梱包作業者が臨機応変に箱を選ぶ裁量がなく、マニュアル通り固定サイズを使う
・過去からの取引先指定や慣習、「とりあえずこの箱で問題なかった」という惰性
製造現場では、コスト削減の打ち手として材料や工程改善には目が向いても、物流や包材の現場最適化は後回しになりがちです。
運賃高騰時代の箱サイズ戦略
なぜ箱サイズが運賃に響くのか?
運賃計算の多くは、実は「重量」より「容積」(=外箱サイズ)に着目して行われます。
特に昨今の宅配・路線便では「容積重量制度」が主流となり、例えば1kgの軽い部品でも、60サイズの箱に入れた場合と100サイズの箱に入れた場合とでは、運賃が2倍3倍になるケースも珍しくありません。
これは「物流キャパ不足・ドライバー不足」の中、トラック1台にどれだけ効率良く積めるか、を物流会社が重視するためです。
またグローバル調達が進むなか、航空便や国際宅配便では容積が更にシビアに設定されます。
つまり、梱包時に箱を1~2サイズ小さくできれば、送料単価そのものが大きく下げられる時代なのです。
現場業務と運賃コストの見えない壁
製造現場で箱サイズ最適化の議論が進まないもう一つの理由に、「運賃コストの権限と見える化のギャップ」があります。
生産や物流部門の担当者は「運賃コストそのもの」が自部署のKPIになっていないため、「とりあえず指定箱」「梱包の手間を最小化」という発想になりがちです。
経理や調達がコストを追いかけても、「現場の意識や習慣」を変える仕組みやインセンティブが欠けていることが多いのです。
アナログ慣習が根強い業界動向
「最適化より標準化」の深すぎる理由
製造業界、特に中堅・中小企業では、現場対応の柔軟性を担保するために、あえて箱サイズや包材を「標準品」に絞るというケースが多々あります。
標準化によって
・調達コストが下がる
・発注点がわかりやすい
・在庫管理の工数削減につながる
一方で、何百という品種に同じ外箱を使う状態が続き、肝心の「最適化」が進まないという矛盾も生まれます。
また、長年の取引先指定や規格変更の稟議が煩雑といった文化・手続き的なハードルも現場を縛りつづけます。
この“昭和型習慣”から脱却せずにいると、いくら生産性を高めてモノを作っても、最後の「物流・梱包」で利益が漏れてしまう構造が温存されてしまうのです。
梱包資材メーカー・印刷会社との関係性も一因
あるあるなのが、包材メーカーや印刷会社との長期取引に胡坐をかき「型がもうあるから新しいサイズの設定変更は面倒」「小ロットでは費用対効果が合わない」として、見直しのインセンティブそのものが働きにくいという現実です。
さらに、自動梱包機械やパレタイザー設備が決まったサイズ運用前提になっていて、柔軟な外形変更そのものが難しい工場も少なくありません。
ラテラルシンキングによる新しい解決策
現場が変わる発想転換:AI活用・箱設計自動化へ
従来型の発想では、「何種類かの既成箱で一括対応しよう」となりがちですが、現代ではAIやロボティクスの進化により、「製品ごとにジャストサイズの箱をその場で作成」「3Dスキャン+最適包材カット」で自動梱包が可能になりつつあります。
大量生産品だけでなく多品種少量にもフレキシブルに対応できるAI最適化ツールが、今後の現場では大きな鍵となるでしょう。
運賃シミュレーションで意識改革を促進
現場の梱包担当やバイヤーに対し、「1箱サイズ変えるだけで毎月これだけ運賃が減る」と具体的なシミュレーションを示すことで、コスト意識を喚起できます。
物流会社によっては、出荷パターンごとの送料試算や過去実績比較を可視化できるシステムもありますので、こうした「数値で語る」取り組みを積極的に活用するべきです。
包材調達と購買戦略のパラダイムシフト
従来の「包材は消耗品・副資材」という発想を捨て、「梱包資材は利益直結の戦略品」と位置付け、本体材料と同等以上に、購買部門で主導権を持って最適化提案すべきです。
例えば、
・年に一度の「包材VA/VE提案会」を包材会社主導ではなくバイヤー主導で実施
・サプライヤー側に容積最小化・分納/混載などの物流効率化を要請
・梱包委託先や3PLに箱最適化も含めたパフォーマンス評価指標を導入
など、「包材→物流→購買」の垣根を越えた取り組みが、これからのスタンダードです。
まとめ:バイヤーとサプライヤーが共創する箱最適化の未来
箱サイズ最適化に取り組むことは、単なるコスト削減策にとどまらず、現場オペレーションの変革、物流業界との新たな価値共創、そしてサステナブルな製造業を実現する第一歩でもあります。
サプライヤーも「価格だけでなく、最適梱包提案・物流企画力」を強みにすることで、バイヤーサイドと信頼関係を築き「選ばれる存在」になっていくことができます。
今後の製造業バイヤー、現場担当者の皆様には、
・「箱を見れば現場の意識がわかる」
・「箱サイズ戦略こそ物流・経営競争力の源泉」
という新たな視点を持ち、意識改革・現場改革へ踏み出していただきたいと思います。
運賃が無駄に増える仕組みを根本から解消し、より効率的でカーボンフットプリントの低いものづくり現場を共に実現していきましょう。
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