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社内の情報分断が物流全体最適を阻む最大要因

目次
はじめに:製造業を蝕む「情報分断」という病
製造業の現場に長く身を置いてきた方なら、誰もが一度は感じたことがあるのが「情報分断」です。
これは、各部門がそれぞれ独自のやり方やシステムで業務を進めているために、全社的な情報の共有や連携がスムーズにいかない状態を指します。
特に購買、調達、生産管理、物流、品質管理などが別々の島宇宙状態では、各自が自部門での最適のみを追い求めることになり、結果として「全体最適」から遠ざかってしまいます。
それが物流の非効率、在庫過多(もしくは欠品)、納期遅れ、無駄なコスト増へと繋がり、強いはずの製造現場が“昭和のアナログ”から脱却しきれずに苦しむ原因となっています。
本記事では、社内の情報分断がいかにして物流全体の最適化を阻害し、新たな競争力の源泉となる「デジタル時代のサプライチェーン実現」を妨げているかを、現場目線で詳しく解説します。
また、その打開策についてもラテラルシンキング=「水平思考」で一歩先を読む視点から迫ってみます。
情報分断の現場実態:縦割り組織が招く“担当者の壁”
部門間の意思疎通はなぜ難しいのか
多くの製造業では、調達・購買、生産計画、生産管理、品質管理、物流管理がそれぞれ異なる部署として存在し、自部門の役割を全うするために独自のKPIを持ち、異なるシステムで仕事を進めています。
例えば調達部門は「できるだけ安く、安定的に部材を仕入れる」ことを重視しがちですが、その結果、バラバラに届く納品物を生産現場が受け入れるには余分な在庫スペースや管理工数が発生します。
生産部門は「とにかく製造を止めないこと」、物流部門は「効率よく出荷」…。
どの部門も善意で自分たちの最適を目指しているのに、全体最適につながらないのです。
この構造が、「棚卸は現場任せ」「欠品は購買の責任」「物流費の増加は現場の生産ばらつきのせい」など、お互いに責任転嫁しやすい風土を生みます。
アナログな情報流通が残る理由
製造業は「ものそのもの」が動くため、どうしても伝票や紙ベースでの管理が残りがちです。
たとえ部分的にシステム化が進んでも、全社共通の情報基盤が整備されていないと、「EXCELファイルをメールで回す」「電話で催促」という、属人的かつ非効率な運用が温存されます。
昭和から令和へと時代が移っても、多くの現場でクリップ止めの納品書や、ホワイトボードでの在庫管理、FAXでの発注依頼が根強く残っているのを見れば、その根深さがわかるはずです。
これでは「いま、どこに、なにが、どれだけあるか」が全社的に見えず、突発的なトラブルに現場が右往左往するのは避けられません。
情報分断が引き起こす5つの典型的な弊害
1. 在庫の過不足
情報が部門ごとに閉じていると「安全を見込んで多めに発注・生産しておく」という“念のため運用”がまん延します。
一方で、本当に必要な物が急に不足したときには誰も全体を把握できておらず、緊急調達・特急輸送で余計なコストを払ってしまうこともしばしばです。
2. 納期遅延・段取り替えの増加
材料がある・ない、生産現場の負荷が高い・低いといった情報がリアルタイムで共有されないまま計画が立てられるため、現場が日々計画変更に追われ、工程にムダや手戻りが発生します。
3. サプライヤー・バイヤー間での不信感
社内で情報がつながらない場合、サプライヤーやバイヤーとのやりとりもギクシャクします。
「うちは今月●●しか入れられません」といった事情説明も現場の肌感では合っていても、全体最適から見て妥当なのか判断できません。
伝達間違いやミスコミュニケーションの温床となります。
4. 属人化・担当者依存体質の強化
「●●さんしか工程や在庫の状況を知らない」「発注のクセも●●さんに聞かないとわからない」となると、異動時に業務が大混乱したり、取引先も混乱を強いられることになります。
デジタル時代にはありえない光景ですが、今も地方の製造現場では日常茶飯事です。
5. 改善提案・現場力の限界
個々の部門(もしくは個人)で生まれる現場改善の知恵や工夫が、全社的なベストプラクティスとして活かされず、各々が井戸の中で奮闘する状態が続きます。
業界全体の動向:昭和的アナログ慣習から抜け出せない理由
サプライチェーンマネジメント(SCM)やIoT(モノのインターネット)、AI活用などはここ数年でかなり注目を集めてきました。
ですが、現場レベルでは「紙伝票」「目視確認」「電話・FAX文化」が根強く残り、それが情報分断の温床となっています。
その背景には、3つの理由が見て取れます。
1. 強すぎる現場主義と“暗黙知”の支配
現場には長年の経験で培った「勘とコツ」が存在します。
これがある意味で強固なノウハウの蓄積となる一方、情報をオープンに“見える化”する動きをブレーキしてしまうこともあります。
2. 投資への二の足と「現状維持バイアス」
設備投資やシステム投資はどうしてもコストがかかります。
特に景気に左右されやすい製造業では、“いまのままでもなんとか回っている”古いやり方をあえて変えようとしない傾向が強いです。
3. サプライヤー間の力関係・バイヤー重視
古くからの取引関係が重視されるため、「自社だけ先進的な管理手法を導入しても、サプライヤーや物流パートナーが追随しないと効果が出ない」というジレンマに陥りがちです。
物流全体最適化に向けて:現場で今すぐ始められるラテラルな一歩
1.「情報の見える化」から着手する
まず「自分たちの現場」から、部門ごとに持っている情報をできる範囲でデータ化し、Excelでもクラウドシートでもいいので“みんなで見れる状態”にしてみましょう。
例えば毎日の入出庫情報、在庫残数、納期遅延の理由などを一覧で見せるだけでも、他部門や上層部が「どこに問題があるか」に気づきやすくなります。
2. 小さくても「横串ミーティング」を開催する
月1回でも、調達・生産・物流・品質・営業の現場担当者が集まり、自分たちのKPIや課題を共有し合う場を設けましょう。
「君たちの納期に現場がどう困っているか」「逆に現場都合で余計な在庫を持たせていないか」など、タテヨコに情報が行き交う“生きた情報連携”が、全体最適への第一歩になります。
3. サプライヤー・バイヤーも巻き込んだ情報連携を提案する
上流(購買・調達)と下流(物流・納品)だけでなく、サプライヤー、バイヤーの関係者とも、できる範囲で計画や実績を共有しましょう。
「何を」「どれだけ」「いつまでに」必要とするか、「どこで」「何が」滞留しているのかを可視化し、共通認識を持てば、駆け引きや不毛な値引き競争から脱却しやすくなります。
DX時代に求められる“現場起点”の情報統合とは
今後、IoTやAI、RPAといったデジタル技術の導入が本格化していく中でも、最も大切なのは「現場が納得して動く」「現場で情報を活用できる」ことです。
いきなり大規模なシステムやパッケージ導入に動くのではなく、既存の仕組みや風土のどこに「情報断絶」があるのか、ムリのない範囲から見える化・連携を進めれば、自然と現場のモチベーションも高まり、改善活動の成果として経営陣にも良い報告ができるでしょう。
物流全体の最適化に向けた糸口は、あなた自身の職場、毎日の小さな「違和感」と「もやもや」に隠れています。
それを見過ごさず「なぜ?」「本当にそれが最善?」と問い直すことが、昭和アナログから令和の最先端製造業へと進化する最大の武器になるのです。
まとめ:情報分断の解消が真の全体最適を導く
製造業に根強く残る「情報分断」は、部門も立場も超えて、最適なサプライチェーンを作る最大の障壁です。
しかし本質的な解決策は、必ずしも大規模なDX投資や先端技術導入だけではありません。
現場起点の“見える化”や“横串連携”、関係者全員の「本音会話」から、一歩ずつ部門横断的な協調の輪を拡げていきましょう。
その先にこそ、競争力の源泉となる「真の全体最適」な物流が実現します。
この記事を通じて、あなたの職場での改善活動、新たなバイヤー・サプライヤー関係構築の一助になれば幸いです。
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