投稿日:2024年12月24日

射出成形時のトラブルと対策

はじめに

射出成形は、プラスチックを溶融状態にし、それを射出装置から金型に圧入して成形する工法です。
流動性や寸法精度に優れた成形品を大量生産できることが特徴ですが、成形中には様々なトラブルが発生することがあります。
本記事では、射出成形時における代表的なトラブルとその対策方法について、現場目線から詳しく解説します。

射出成形時の主なトラブル

ショートショット

ショートショットとは、成形品が金型のキャビティに完全に充填されず、部分欠落が発生する現象です。
主な原因としては、射出圧力や速度の不足、樹脂温度の低さ、金型の通気不良などが挙げられます。

フラッシュ

フラッシュは、成形品が金型の合わせ面から漏れ出る現象です。
金型の締め圧が不十分だったり、金型が摩耗している場合に発生します。
また、射出圧力が高すぎる場合にもフラッシュが生じることがあります。

ウエルドライン

ウエルドラインは、異なる流れのプラスチックが合流する箇所に生じる線状の痕跡です。
強度が低下するため、成形品の使用に影響を及ぼすことがあります。
樹脂温度や金型温度の不足、金型設計の不備が原因となることが多いです。

シンクマーク

シンクマークは、成形品の厚みが均一でないために表面に現れる凹みのことです。
冷却収縮や成形条件の不適切さが原因となります。
特に厚い部分がある成形品で発生しやすいトラブルの一つです。

バーニング(ガス焼け)

バーニングは樹脂が過熱されることによって生じる黒い焦げ痕で、製品外観に悪影響を及ぼします。
主に射出速度が速すぎる、キャビティ内の空気が逃げにくいなどの要因で発生します。

トラブルの原因と対策

ショートショットの対策方法

ショートショットを防ぐためには、以下の対策が有効です:
– 射出圧力と速度を適正に設定する:成形装置の制御が正確であるか確認します。
– 樹脂温度と金型温度を上昇させる:材料の流動性を高め、キャビティへの充填効率を向上させます。
– 金型通気性の改善:通気口の清掃や設計見直しを行います。

フラッシュの対策方法

フラッシュを防ぐために考慮すべき点は以下の通りです:
– 金型の締め圧を適正に保つ:締め圧の調整や金型のメンテナンスを行い、合わせ面からの漏れを防ぎます。
– 射出圧力を適正化する:必要以上の圧力を避け、成形条件を最適化します。
– 金型の摩耗点検:摩耗が原因であれば金型を修繕または交換します。

ウエルドラインの改善方法

ウエルドラインの影響を最小限にするための対策は以下です:
– 樹脂と金型温度の最適化:温度を上げることで樹脂の流動性を高め、融合部の見え方を改善します。
– 流れ合流部の設計改善:流路設計の見直しやゲート位置の変更を検討します。
– 混練度の高い材料を使用:材料特性を考慮し、ウエルドラインの影響を受けにくい樹脂を選択します。

シンクマークの対応策

シンクマークを回避するための対策としては次が挙げられます:
– 樹脂の冷却速度を適切に調整する:冷却時間を延長または厚みを均一化するなどして均一な収縮を促します。
– 成形条件の最適化:射出圧力や充填速度を調整し、材料の均等冷却を図ります。
– 金型設計の見直し:肉厚部分の特殊冷却や圧縮成形を検討し、歪みを軽減します。

バーニングを防ぐ方法

バーニングを防ぐには以下のアプローチが有効です:
– バルブのスローオープンを実施する:射出開始時の速度を緩やかにすることで、過剰なガスの発生を抑制します。
– 通気口の清掃と拡充:キャビティ内の空気が逃げやすいよう、通気性の改善を行います。
– 射出速度を適切に管理:過速射出を避け、均一でコントロール可能な成形を実施します。

おわりに

射出成形の現場では、様々なトラブルが発生しますが、原因を正確に把握し、効果的な対策を講じることで高品質な製品を安定して生産することが可能になります。
改善のための小さな工夫や知識の積み重ねが、成形プロセスの洗練度を高め、製造現場の競争力を向上させる鍵です。
体験に基づく実践的なアプローチを通じて、トラブルに迅速かつ効果的に対応していきましょう。

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