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OEMアウターの防寒性能を決定づける中綿素材とキルティング構造

目次
OEMアウターの防寒性能における中綿とキルティング構造の重要性
OEM(Original Equipment Manufacturer)アウターは、日本の製造業において根強い需要があります。
市場の多様化や、小ロット多品種への柔軟な対応が求められる現場では、自社ブランドを持たないサプライヤーがバイヤーの要望に応じ、アウター製品の開発や生産を一手に担っています。
その中で競合他社と差別化を図る上で、最も重要な機能のひとつが「防寒性能」です。
特に冬場のアウターやワークウェアなど、ユーザーが厳しい環境下で着用することを前提とした製品では、その性能が購買決定の最大のポイントになります。
本記事では、OEMの現場目線で防寒性能を左右する「中綿素材」と「キルティング構造」について、実務的な観点や市場の動向、さらには業界のアナログな「昭和的」商習慣も踏まえて徹底解説します。
OEMアウターを取り巻く市場動向と現場課題
昭和から抜け出せない現場、アナログとデジタルの融合点
日本の多くのOEM工場では、いまだに手書き図面や口伝えの仕様確認が幅を利かせています。
サプライヤーとバイヤーの「長い付き合い」に基づいた“あうんの呼吸”が根付いており、些細な要求変更や追加注文にも現場が柔軟に対応できるというメリットがあります。
一方で、仕様伝達のミスや、担当者の「好き嫌い」「過去実績」に偏った素材選びが、防寒性能や品質のばらつきに直結するリスクもあります。
デジタル化が叫ばれつつも、アナログ手法が現場の強みである事実をどう活かすかが、今後のOEMアウター開発のカギと言えるでしょう。
OEMバイヤー・サプライヤーのスタンス
バイヤー(発注側)は、コスト・納期・最低発注量(MOQ)・品質といった基準でパートナー選定を行います。
一方、サプライヤー(受注側)は、得意な生産背景や独自のネットワークを活かし、他社との違いをアピールします。
この双方の利害や、製品仕様への“こだわり”の折衝こそが、OEMの現場ならではの醍醐味と言えるでしょう。
近年はSDGsやサステナビリティ志向の高まりから、環境負荷の少ない中綿や、再生材料を活用した製品への要求が強まっています。
こうした時代の変化を確実に捉えるためにも、OEM現場のプロとして真に「選ばれる」アウターを提案することが求められています。
中綿素材の選定が防寒性能を決定する
主要な中綿素材とその特徴
アウターの防寒性能は中綿の選定によって大きく左右されます。
中綿には大きく分けて「天然系」と「合成系」があり、それぞれに一長一短があります。
- ダウン(羽毛):最高レベルの軽量性と保温性。高価でアレルギーリスクがあり、環境配慮が問われることも。
- フェザー:ダウンよりやや劣るが、コストを抑えられる。
- ポリエステル中綿(例:シンサレート、プリマロフト等):ダウンに近い保温性でアレルギーフリー。水濡れに強く、サステナブルな製品も開発されている。
- ウール中綿:天然の調温機能を持つが、重くカビに弱い。
- リサイクルポリエステル:SDGs要件対応で引き合い急増中。エコマーク取得による付加価値も。
それぞれの素材について、性能(保温性・軽さ・通気性・耐久性・コスト)をバランス良く評価する必要があります。
バイヤーが求める「価格」と「品質」の天秤を、現場目線でどこに下ろすのかが勝負の分かれ目なのです。
OEM現場での中綿選定ポイント
中綿素材の選定では、スペック表や一般的なサンプルデータだけでなく「実際のロットでどうなるか」が最も重要です。
たとえば同じ厚みで比較しても、国内大手素材メーカー品と、海外のノンブランド品とでは、成型密度や繊維の質が大きく異なります。
OEMでは、限られた時間とコストの中で、サプライヤー独自の目利き力が強く求められる場面です。
また、発注ロットによっては、中綿メーカー側でも同品質の材料を常に安定調達できるとは限らず、「ロットブレ」による性能低下をどう管理するかが現場の課題です。
製品サンプルの段階から、信頼できる素材パートナーと密に連携して進めることが品質ブレ防止の鍵となります。
キルティング構造の設計が性能とコストを左右する
なぜキルティング構造が必要なのか
アウターの中綿は「そのまま入れて布で包むだけ」と思われがちですが、実際は縫い目や構造設計が防寒性・デザイン・耐久性・コストのすべてに関わっています。
キルティングとは、中綿と表地・裏地をダイヤ型や直線状に縫い合わせる加工方法です。
適切なキルト設計がなされていないと、中綿の偏りやヨレ・ヘタリが発生し、部分的に保温性能が極端に低下します。
これが“防寒着の死角”となり、ユーザー満足度を大きく損なう要因になります。
キルティングの種類と性能影響
代表的なキルティング構造には次のようなものがあります。
- ダイヤ柄キルティング:最もオーソドックスで、中綿の固定力が高い。見た目もクラシックで、ワーク・カジュアル双方で需要あり。
- 水平直線キルティング(ダウンジャケット型):ボリュームを出しやすく、トレンド感がある。
- ウェーブキルティング:意匠性が高く、ブランド差別化に。
- シームレス(圧着)キルティング:縫製レスで中綿の飛び出しリスクを抑える。スポーツウェア・アウトドア向けで採用が増加傾向。
キルティングピッチ(柄の幅)が広いほど、デザイン上の立体感や軽さは出しやすくなりますが、中綿の偏りやすさも増すため、防寒性とのトレードオフです。
バイヤーは外観と機能のバランスを求める一方、サプライヤーは縫製・圧着機器の制約や、人件費、歩留まり率など工場運営のリアルな現場課題を抱えます。
つまり、単純なスペック競争だけで「よいOEM商品」は生まれません。
ものづくり現場のリーダー・バイヤーは、現実的な生産制約と、市場が求めるトレンド・性能を冷静にブレンドするラテラルシンキング(水平思考)が必要なのです。
防寒性能を最大化するOEM現場のアプローチ
品質とコストのせめぎあい、現場ができる工夫
OEM製造の現場で頻繁に問われるのは、「去年と同じ材料で、もっと安く、もっと良くできないか?」というお決まりのリクエストです。
この要求に真正面から向き合うことで、現場の創意工夫が進化します。
たとえば、中綿充填機の最新モデル導入による歩留まり向上や、糸の番手・針ピッチの工夫による縫製強度の最適化。
また、手作業と機械加工の“合わせ技”でコストと性能を両立するライン設計など、日本の「現場力」はまだまだ進化の余地があります。
国内サプライチェーンの再評価とデジタル化
過去10年、OEMアウターの多くは海外工場生産が中心でしたが、コロナ禍以降はサプライチェーンリスクと品質安定ニーズが高まり、国内回帰が進行中です。
この流れの中で、国内素材メーカーと地場サプライヤーが連携し、短納期・高付加価値の“日本製アウター”を訴求するチャンスが広がっています。
一方で、受発注~納品までのDX(デジタルトランスフォーメーション)対応が遅れる現場も多いため、AI・IoTを活用した工程管理や、データ共有の推進がより一層求められています。
OEMアウター開発の未来に向けて
「アウターは防寒着である前に、信頼される商品でなければならない」。
これは製造業現場の多くのリーダーが語る言葉です。
OEMのアウター開発は、決まった正解がありません。
規格内の大量生産ではなく、小ロット多品種、時にはブランドや商社から見えざる高難度オーダーを「どうカタチにするか」が大きな挑戦です。
今後は、バイヤーにもサプライヤーにも「水平思考」と「現場感覚」の双方を磨き、時には大胆な素材選びや、工程内の自動化・見える化によるパフォーマンス向上を目指すべきです。
ユーザーがアウターを手に取った瞬間、安心して着用でき、極寒の現場でも快適に過ごせる。
その裏側に、高品質な中綿選定と、考え抜かれたキルティング構造があるのだと伝えることが、製造業に携わる私たち発信者の使命だと言えるでしょう。
OEMアウターの防寒性能向上は、日本の現場力を再定義する絶好のテーマです。
現場の知見と業界動向、最新テクノロジーを融合させ、次世代のものづくりを共に切り拓いていきましょう。
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