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ERP連携APIで二重入力を排除し月末締め処理を3日短縮した統合プロセス

目次
はじめに:昭和的アナログ体質からの脱却が生み出す生産性革命
製造業は「モノづくり大国」として長い歴史を歩んできましたが、2024年現在も多くの現場で昭和のアナログ体質が色濃く残っています。特に調達購買や生産管理、品質管理といった管理業務は、長年の慣習や手作業に頼る部分も多く、「紙」「表計算ソフト」「手書き伝票」がルーティンとして根付いています。
このような現場では、データ入力や転記ミス、属人化といった課題が山積し、月末の締め処理では二重三重の確認や修正作業が大きな負担となります。
しかし、状況は大きく変わりはじめています。近年、ERP連携APIを活用したシステム統合が進み、部門をまたぐ情報の一元管理と自動化が可能になりました。本記事では、こうした連携APIによって、調達、購買、生産の各プロセスがどう「つながり」、月末締め処理を3日短縮できた実践的な事例をもとに、「現場で役立つ本質的な改善策」に迫ります。
ERPとAPI、その基礎を正しく理解する
ERP導入の目的と現場での悩み
ERP(Enterprise Resource Planning)は、企業の資源を一元的に管理し、経営判断のスピードと精度を高めるパッケージソフトです。受発注、生産、在庫、会計など業務全体を一つのシステムでつなぎます。
しかし、現実の工場では、部署ごとに異なるシステムやExcelが乱立し、ERPと現場のシステム(MESや購買システム)が「分断」されていることが多々あります。そのため、本来ERPが持つ一元管理のメリットを最大限発揮できていません。
APIとは何か?
API(Application Programming Interface)とは、異なるソフトウェア同士を橋渡しして情報を連携するための仕組みです。たとえば、現場の受入検査システムとERPの購買モジュールをAPIで接続すると、「受入れ完了」情報が自動で転記され、手作業による二重入力や入力ミスを大幅に削減できます。
アナログ現場で根深い「二重入力」とは
伝票の転記から始まる悪循環
製造業の調達購買現場では、納品伝票に対して検収担当者が実績を記入し、それを会計システムや在庫管理システムにあとから転記する二重入力が長年の習慣となっています。
この手作業は以下のような悪影響を及ぼします。
・転記ミス、見落としのリスク
・担当者が休むと処理が遅延
・監査資料の証跡確認が難しい
・月末にまとめて処理する「つけ払い」文化の温床
これが締日ぎりぎりの「付け合わせ地獄」を招きます。
なぜ二重入力がなくならないのか?
現場は「今までこのやり方で何とかなってきた」という意識と、「システム同士の連携にはコストがかかる」という先入観に囚われがちです。また、部門ごとに部分最適化された業務フローが、「連携の壁」となって変革を阻んでいます。
じわじわ始まったデジタル浸透と業界潮流
製造業DXの波と現場での現実
DX(デジタル・トランスフォーメーション)は、単なるIT化ではなく、「業務プロセス自体の再設計」が本質です。しかし、製造業ではいきなりの全面自動化には慎重な傾向が強く、まずは人手がかかり過ぎているプロセスにスポットをあてた「部分最適化」から始めることが現場受けします。
APIによるERPとの連携は、こうした「現場の痛点」に寄り添いながら、徐々にデジタル活用を浸透させていく有効なアプローチです。
「2025年の崖」とレガシーシステムからの脱却
多くの老舗メーカーでは、90年代に導入したオンプレERPや基幹系システムが“資産”として大切に使われてきました。ですが今、経産省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」問題(レガシーシステムの老朽化とIT人材不足)は、調達・購買領域においても大きなリスクとなっています。
API連携は、レガシー資産を「ゼロクリア」せずに段階的に共存・進化させられる現実的な選択肢として注目されています。
現場目線で見た「月末締め処理」短縮の実際
現場のプロが直面した課題
ある大手メーカーでは、購買品の検収~支払処理を一つ一つ紙で承認し、Excelに転記、そのファイルを会計にメール送付…というやり方が20年以上も続いていました。決算期や月末には「全員出社の付け合わせ・突合せ要員」となり、丸3日がかりで数千件の伝票を確認していました。
API連携でプロセス統合!短縮効果の具体例
そこで、受入検査システムとERPをAPIで接続し、納品実績が確定するとリアルタイムでERP側に「受入済」の情報が連携されるようにしました。
この結果、次のような劇的な変化が起こりました。
・紙伝票、Excel転記がゼロ
・リアルタイムで進捗を把握でき、月末までに差異を発見&是正
・最終日の付け合わせ人員が7割削減
・支払処理の早期化&正確性向上
・監査時の証跡がERP上ですべてトレース可能
こうして、従来3日がかりだった締め処理は、実質1日未満に短縮され、関係部門全体へ業務改善の波及効果が広がりました。
統合プロセスが現場にもたらす本当の価値
単なる効率化以上の「見える化」と「品質保証」
API連携により、調達・生産・品質・会計といった部署ごとの差がなくなり、情報がシームレスに統合されます。
特に製品単位のコスト管理や品質トラブルのトレース、取引先別の実績分析といった「一歩先の見える化」が実現できる点は大きなメリットです。
また、手作業では困難だった「現場の証跡」や「監査対応」も、システムに自動記録として保存されるようになります。これにより品質保証やCSR監査にも強みを発揮し、取引先との信頼構築にも寄与します。
バイヤーとサプライヤー双方に広がるメリット
バイヤーの観点では、業務効率の向上と数値の信頼性がアップし、値引き交渉や支払業務など判断の迅速化が図れます。
サプライヤー側でも、納入実績の確認や支払い状況が即時に“見える化”され、コミュニケーションの円滑化、納品ミスや見落としの激減につながります。
導入ポイント:失敗しないERP連携APIの勘所
現場主導のプロジェクト推進がカギ
「APIで全部つなげよう」というトップダウンだけでなく、現場の業務担当者の声・課題意識の把握が何より重要です。どこに本当の「入力ムダ」「重複」が存在するのか、現場体験者のヒアリングや、実際の帳票・業務フローを可視化するワークショップが欠かせません。
小さく始めて全体へ拡大するステップ
一気に全システム連携を目指すと、コストやリスクが肥大化します。
まずは二重入力が多いプロセスに絞ってAPI連携を導入し、効果を「見える化」することで、他部門へ波及させる作戦が現場にはフィットします。
まとめ:アナログ業界こそ“つなげて、変わる”時代へ
日本の製造業は、現場力・継承力では世界に誇れる実力を持っています。
しかし、いつまでも紙と手入力にこだわれば、グローバル競争力は落ちていきます。
ERP連携APIは、今あるシステムや業務を壊さず「つなぐ」ことで、月末の繁忙や属人化といった課題を根幹から解決します。
DXの正解はひとつではなく、自社の実情や現場の知恵・ノウハウを「デジタルで可視化・自動化」することで、新しい価値が生まれます。
昭和から続くアナログ文化を部分的にアップデートするこの動きは、必ず製造業の持続的な発展につながります。
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