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製造業の基幹システムとスタートアップ技術を共存させる統合戦略

目次
はじめに:製造業の基幹システムに変革の波
日本の製造業は、長らく高度な現場力と伝統的なオペレーションで世界をリードしてきました。
しかし、グローバル化とデジタル化の加速により、従来の「昭和型」のアナログな業務運用だけでは限界が見え始めています。
基幹システム(ERPなど)を中核に据えた管理手法に加え、スタートアップが生み出す革新的な技術の導入が、今まさに製造業の現場にも求められています。
とはいえ、巨大かつ複雑に構築された基幹システムと、柔軟でスピーディなスタートアップ技術の共存は、決して簡単ではありません。
本記事では、20年以上の現場経験に基づき、両者を上手に“統合”するための具体的な戦略と実践例をご紹介します。
基幹システムとは何か?その機能と製造現場での役割
ERPを中心とした全社的な業務管理
製造業の基幹システムとは、一般的にERP(Enterprise Resource Planning)やSCM(Supply Chain Management)といった、部門横断型の業務管理システムを指します。
具体的には、調達購買、生産管理、品質管理、在庫・物流管理、販売管理、人事等の情報を一元化し、全社最適を図るITインフラです。
工程ごとのデータが分断化されやすい製造現場において、基幹システムは業務プロセスの可視化や帳票の標準化、責任所在の明確化、コンプライアンスの徹底といった役割を担っています。
昭和型現場文化と基幹システムの“ギャップ”
しかし多くの現場では、紙伝票や口頭報告も根強く残ります。
特に老舗メーカーほど「人の目・勘・経験」に依存したオペレーションが根付いています。
基幹システムの活用は進む一方で、現場固有の“アナログな運用”との乖離が、デジタル化推進の大きな壁となっているのが実情です。
スタートアップ技術が製造現場にもたらす革新性
IoT・AI・クラウド活用による“現場の見える化”
製造業向けスタートアップは、既存のシステムを補完・拡張する形で、IoTやAI・クラウドなど最先端技術を次々に持ち込みます。
具体的には、IoTセンサーによる設備の稼働データ自動収集、AI画像解析による不良品検出、クラウド経由での遠隔監視、需要予測AIによる発注自動化などが挙げられます。
これらのスタートアップ技術を導入することで、「現場の見える化」「リアルタイムな意思決定」など、従来できなかった価値創出が可能となりつつあります。
ベンダーロックインからの脱却とAPIエコノミーの台頭
一度導入したERP基幹システムは、カスタマイズや機能追加に高コストかつ長期間を要します。
そのため「使い勝手が悪くても我慢」「現場の実態に合わせた細かな改善が進まない」という課題が顕在化しています。
ここで威力を発揮するのが、「API連携」による“部分的な拡張”です。
スタートアップ製のクラウドサービスはAPIで基幹システムと繋がりやすい設計が多く、既存の骨太なシステムを活かしつつ、必要な機能のみプラグインのように取り込む動きが増えています。
現場目線で考える基幹システムとスタートアップ技術の“統合”
オールインワン化から“モジュール連携型”へ
従来の発想は「オールインワンの巨大システム」で全てを標準化・自動化するものでした。
一方、現場は少料種・多品種・変量の変動が日常茶飯事であり、机上設計どおりに業務が流れるとは限りません。
これからの現場最適は、あえて“一枚岩”を目指さず、「基幹システムによる大枠標準化+各工場/工程ごとに最適なスタートアップ技術を組み合わせる=モジュール連携型」の柔軟な設計にシフトしつつあります。
APIを活用した“場当たり的な”デジタル化のすすめ
例えば、生産現場では以下のような進め方が有効です。
– 特定工程の歩留まり改善に、AI画像検査サービスをAPI連携でスポット導入
– 調達先管理や納期フォローに特化したクラウドツールを、主要取引先のみ段階的に追加
– 基幹システムからリアルタイム抽出したデータを、クラウドBIで分かりやすく可視化し、現場の意思決定をスピードアップ
ポイントは、“完璧な全社統一”よりも「80点でも即効性のある現場課題解決」を優先することです。
現場でまず効果を体感し、徐々にノウハウを積み上げていくやり方が、失敗のリスクを減らします。
調達購買・生産管理部門の「現場感」から見た統合戦略
調達購買バイヤーの立場:サプライヤーと“共創”の新常識
従来の購買部門は、既存サプライヤーからの価格交渉や、コストダウン要求が主な役割でした。
しかし今後のバイヤーに求められるのは、「社外リソースの発掘/組み合わせ力」「IT・DXリテラシー」「業務改善を牽引するプロデュース力」です。
– スタートアップを潜在的なサプライヤーと見なす
– プレゼンや共同実証(PoC)を複数社で並行的に進める
– サプライヤー技術をAPIで自社基幹システムと柔軟連携できる設計思想を持つ
これらを通じて、バイヤー自身が“構想および統合のコーディネーター”となることが、社内外に強く求められます。
生産管理・現場リーダーの立場:泥臭い現場SME(主務者)×ITの橋渡し
製造現場は、カスタム要件や現場固有の事情が多いのが常です。
現場SME(主務者)が中心となり、業務の目的・やりたいこと・課題を「現場語」で一度分解することが重要です。
– 「なぜこの業務が必要か?」「本質的に困っていることは何なのか?」を深掘り
– スタートアップや社内IT部門と、小さく速いプロトタイピングに巻き込む
– 成功例を“小規模”でもいいので現場に根付かせることで、全社横展開の足場を作る
現場の痛みや本音を可視化し、システム導入の効果と課題を明文化していくことで、無理なシステム化・ブラックボックス化を防ぐことができます。
サプライヤー側から見た「価値ある提案」とは
サプライヤー、特にスタートアップ企業の立場としては、現場のリアルな課題を拾い上げ、「自社技術が最も価値を発揮できる部分」に絞った提案が、より歓迎されます。
大手メーカーの基幹システム・運用フローへの段階的な噛み合わせ方(例:API仕様の柔軟さや、カスタマイズ事例の提示)が信頼構築のカギとなります。
また、PoC段階で成果の“見える化”、ROI(投資対効果)の数値化ができれば、「現場で本当に使える技術」としてバイヤー側からの指名も増えるでしょう。
統合戦略の推進で得られる3つのメリット
1: 業務改善サイクルの高速化・現場主導の改革
APIやクラウド連携によって、以前は年単位のカスタマイズが必要だった業務改善が、数週間〜数カ月規模で早期実現できます。
現場の“手触り感”とトップダウン戦略が両輪で回ることで、「やってみる→現場反応を即時フィードバック→次の改善」にスピード感が生まれます。
2: データドリブンな意思決定とナレッジの蓄積
基幹システムで蓄積していた、分断された過去データが、スタートアップ系ツールのAPI連携によって有機的にリンクします。
「いつ、どこの現場で、どんな異常や課題が生まれたか」「効果的だった解決策は何か」といったナレッジが蓄積され、全社的な知恵となっていきます。
3: 外部競争力と人材の多様性アップ
新技術の「スポット導入」や異業種連携に強いスタートアップとのオープンイノベーションを実現することで、従来の同質性志向・閉鎖性から脱却できます。
現場若手や女性・外国人など、より多様な人材の参画・活躍の場も拡大します。
まとめ:製造業の未来を切り拓く“共存型”デジタル統合戦略
製造業の基幹システムとスタートアップ技術の「共存」は、一見相反するようですが、「標準化・安定化された骨太の土台」と「変化に迅速に対応する柔軟性」を両立した、新しい業務基盤を構築するチャンスでもあります。
一人ひとりの現場感覚や課題意識が“統合”の起点となり、サプライヤー・バイヤー・現場リーダーが一体となることで、昭和から令和へと進化する日本製造業の底力が発揮されるでしょう。
ぜひ皆さんも、小さなAPI連携や新サービス導入から一歩を踏み出し、「伝統」と「革新」の知恵を掛け合わせ、次世代の競争力をともに築いていきましょう。
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