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積載率KPIと回転率KPIを一体管理し在庫と物流の総コストを最小化

目次
はじめに
製造業を取り巻く環境は、少子高齢化による人手不足、物流費の高騰、多品種少量生産化など、日に日に複雑さを増しています。
こうした状況下で、適正な在庫の維持と物流コストの削減は、どの現場でも避けて通れない最重要課題のひとつです。
従来、在庫回転率や積載率といった指標は、それぞれ独立してKPI(重要業績評価指標)管理されてきましたが、実は両者は密接に関連し合っています。
この記事では、20年以上にわたり現場で培ったノウハウや、最新の業界動向を踏まえ、「積載率KPI」と「回転率KPI」を一体管理することで、在庫と物流にかかるトータルコストを最小化する実践的アプローチを解説します。
さらに、昭和的とも言える旧態依然としたアナログ管理が今なお製造業界に根強く残っている現状にも触れ、明日から現場で活かせる「攻め」のコスト最適化手法をご紹介します。
積載率KPI・回転率KPIとは?
積載率KPIの基本理解
積載率とは、輸送手段(例えばトラック)の積載能力に対して、実際にどれだけ荷物を積めているかをパーセンテージで表す指標です。
高い積載率は、空輸送のムダをなくし、輸送効率向上・コスト削減に直結します。
回転率KPIの基本理解
在庫回転率とは、一定期間内に在庫がどれくらい「回転」=入れ替わっているかを示す指標です。
売上高や出荷高を平均在庫で割って算出します。
高ければ高いほど過剰在庫や滞留在庫が発生しにくく、キャッシュフローや資産効率が改善します。
バイヤーや生産管理担当者、経営層が強く意識するKPIの一つです。
これらKPIの「分断管理」が生み出す落とし穴
現場でよく見受けられるのは、「回転率を上げろ」と言われ在庫を減らした結果、配送単位が小分けされて積載率が大幅に低下し、物流費が跳ね上がる現象です。
また逆に、物流担当が積載効率ばかりに目を向け一回の輸送量を大きく設定しすぎると、今度は在庫が膨らんで倉庫の負担や管理費用が増加します。
KPIの一体管理がもたらす革新
現場実例:ある自動車部品メーカーのケース
例えば自動車部品の納入現場では、多くのサプライヤーが「カンバン方式」を採用し、極小ロットでのデリバリーを徹底しています。
一方で運送業者からは「空積みが多すぎて運賃が合わない」という現場の声が噴出し、結果コストのしわ寄せが双方に広がります。
この企業は、在庫回転率と積載率のKPIを統合した「複合KPI」を新設し、生産・物流計画を根本から再設計しました。
具体的には、ある閾値で在庫と輸送単位を集約して出荷するパターンを基本としつつ、特急出荷等のイレギュラー対応も組み込みました。
これにより、「毎回フル積載はしなくてもいい、最適点を見極めよ」という意識改革が全社に広がり、単なるコスト削減を超えてサービスレベルの向上にもつながりました。
データによる判断軸の共有化
両KPIの「見える化」と関係部門での情報共有が、実態の把握と迅速な意思決定を支えます。
販売、物流、生産管理、購買が一気通貫のデータにアクセスし、「今週はここまで積載率を下げてでも回転率優先」「来月は物流費が上昇傾向だから積載率優先」と柔軟に舵取りできる環境づくりが本質的な改革を実現します。
積載率・回転率KPIの“実践的”な運用ポイント
1. 現場起点のKPI再設計
KPIの定義や目標値を、現場状況・取引先の事情を踏まえて都度見直すことが重要です。
たとえば、閑散期と繁忙期とで積載率目標をどう見直すか、あるいは新規大型案件導入時に回転率を一時的に緩和する判断。
KPI「絶対主義」ではなく、「現場の実態に根差した柔軟運用」が成功のカギです。
2. 部門間サイロの打破(昭和的アナログ組織への処方箋)
「物流は物流部、在庫は生産管理部、発注は購買部」――これは分業が進んだ日本の製造業ならでは伝統的なスタイルです。
しかし、KPIを分断的に管理することで「全体最適」を阻害するサイロ現象が蔓延します。
大切なのは「部署横断でのKPI連携」。
たとえば、物流現場で発生した積載率低下の理由を在庫側でもリアルタイムで把握し、すぐに対応策を立てられる環境を仕組みで作ることです。
3. システム投資だけに頼らない、現場主導の運用設計
SCMシステムやWMS(倉庫管理システム)だけでKPI運用をカバーするのは、「昭和的なアナログ管理」に埋もれてしまいやすい中小・零細現場では現実的ではありません。
現場では「ホワイトボード&Excel」という伝統的アナログ管理が今なお主流のケースも多々あります。
この場合でも「曜日ごとに積載率・回転率を目視で整理」「月次で突き合わせして現場会議で振り返り」など、泥臭い地道な運用が着実な効果を生みます。
複合KPIによる「在庫&物流」最適化手法
1. シナリオ別KPI管理のすすめ
一律の高水準KPIではなく、「通常期」「繁忙期」「新商品立ち上げ期」等のシナリオごとに、積載率・回転率のバランスポイントを設定しましょう。
これにより、細かな現場対応力と全体最適が両立できます。
2. トータルコストでの評価基準を徹底
KPIを個別目標で表現するのではなく、「在庫維持費+物流費=総コスト」をベースに評価指標を作ります。
たとえば「積載率90%、回転率15回だが総コストが高い」のであれば、「積載率80%、回転率12回でも総コスト最適」ならそちらを選択できる柔軟性を持ちます。
こうした舵取りは、「数字の背景にある現場実態」を熟知した担当者の手腕にかかっています。
3. サプライヤー・バイヤー間の「パートナー型」情報共有
サプライヤー側としては、「バイヤーが何を重視してKPI設定をしているのか?」「どこまで物流の歩み寄りが期待されているのか?」を知ることが大きな武器になります。
バイヤー側も「納入指示は出したが、その背景には何があるのか?」を開示・議論する姿勢が重要です。
双方で「なぜこの積載率なのか、なぜこの回転率なのか」をオープンにすることで、コスト削減だけでなく、信頼関係と長期取引の安定化につながります。
まとめ:製造業の進化に向けて
現場目線で積載率KPIと回転率KPIを一体管理するということは、単なる数字合わせではなく、現実の「物の流れ」と「コスト構造」を俯瞰し、関係者全員で知恵を出し合うことに他なりません。
昭和のアナログ的手法も、新しいICTやデジタルの波も、すべてはお客様に価値を届け、モノづくりの現場をより強くするためにあります。
明日からできる一歩――それは、「今日の出荷と在庫、この数字は何を意味し、どこを目指すべきなのか?」を関係者とともに改めて見つめ直すことです。
こうした地道な積み重ねと、複眼的なKPI管理こそが、日本の製造業を一段と進化させる原動力になります。
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