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多層プリントTシャツの乾燥で層間剥離を防ぐための中間冷却制御技術

目次
はじめに:多層プリントTシャツとその課題
多層プリントTシャツは、グラフィックの美しさや立体感でファッション業界を席巻しています。
しかし、製造現場では乾燥工程における「層間剥離」の問題が大きな課題として常に立ちはだかります。
層間剥離とは、プリントの異なるインク層が十分に定着しないまま、印刷後や着用後に層状にはがれてしまう現象を指します。
これが起こると、商品価値は著しく低下し、クレームや再加工、ロスの増加に直結します。
特に、印刷技術や材料、工程がアナログ的に運用されている現場では、根本的解決が図れず悩みの種となりがちです。
この記事では、20年以上の製造現場経験から得たノウハウを基に、多層プリントTシャツの乾燥で層間剥離を防ぐための「中間冷却制御技術」について解説します。
調達・購買から生産管理、品質管理まで、現場のリアルな目線に立って、理論と実践の両輪で深く掘り下げていきます。
多層プリントTシャツにおける乾燥工程の本質
現場で直面する層間剥離のメカニズム
多層プリントは、1色ずつ異なる版を使い、インクの層を順番に積み上げる工程です。
一般的には一層ごとに乾燥工程を挟みますが、現実には「前のインクが完全硬化していない状態で次工程に移る」「乾燥ムラが生じてしまう」といった現象が起き、不十分な乾燥が原因で層間剥離が発生します。
原因の多くは、下記のようなファクターが複雑に絡み合って生じています。
– 各インクの成分や厚みの違い
– 乾燥機の温度ムラ・風量ムラ
– 生産スピード優先による乾燥時間の不足
– アナログ的な職人勘に頼った工程設定
昭和からのアナログ文化が色濃く残る現場では、品質安定のためのロジカルな管理やデータ化が進まず、属人的な運用がトラブルを生みやすい状況となっています。
「中間冷却制御技術」とは何か
中間冷却制御技術とは、1層目のインク乾燥後、2層目印刷前にインク層を適切な温度までクールダウンさせ、物理的・化学的な安定性を確保する仕組みです。
最近では、熱風乾燥機⇔冷却ブロー⇔次工程乾燥という工程間にクーリングゾーンを設置し、インク層の温度や硬化度合いを制御しながら工程を進めるラインが増えています。
これにより、インク層へのストレスや熱膨張の歪み、インク同士の化学反応をコントロールし、層間剥離を大幅に低減できます。
層間剥離対策としての中間冷却技術の進化
なぜ中間冷却が層間剥離を抑止できるのか
ポイントは、各層の「完全硬化度」と「次層印刷への適温」です。
インクの乾燥とは、加熱により揮発成分や溶剤が蒸発し、樹脂分が重合することで物理的に固まる一連の化学反応です。
しかし、過加熱や急速加熱を続けることでインク表面だけが硬化し、内部が半生状態となる「スキン硬化」や、2層目印刷時のインク間の密着性不良につながる「熱応力」の残存などが問題になります。
中間冷却は、
「前層のインクを適温まで下げることで重合を安定化させる」
「再度高温を掛ける次工程への熱ストレスを緩和する」
「表面温度を下げることで次層インクのオフセット性(ズレ・にじみ)を防ぐ」
といった効果をもたらします。
結果的に、各層の定着・密着力が向上し、プリントの耐久性や美観が明らかに向上します。
現場で使われる中間冷却の具体的方法
現場では以下のような中間冷却手法があります。
1. エアブロー冷却:大型ファンで室温または冷風を当てる。安価でメンテ楽、効果は限定的。
2. チラー搭載ブロー:冷却水や冷媒で強制的に低温エアを作り、短時間で効果的にインク温度を下げる。
3. 接触式冷却ローラー:金属ローラーを走行させ直接冷却。局所的な効果。
どの方法も、「インク内温度センサー」や「赤外線表面温度計」での温度管理をセットにすることで安定性が一気に向上します。
また、「冷却後のインクの硬化度」(簡易テープ剥離テストなど)を現場で即座にチェックする手法も有用です。
中間冷却の現場導入事例とそのインパクト
デジタル化で進化する中間冷却制御
昨今は乾燥工程の自動化が進展しており、温度センサーやラインコントローラーにより、冷却ゾーンの温度・風速を自動制御できる設備の導入が増えています。
これにより、「一人ひとりの熟練工の経験」に頼るのではなく、「データにもとづいた安定的な生産管理」が可能になりつつあります。
導入効果としては、
– インク歩留まり率が大きく向上
– 「加工クレーム(層間剥離で返品)」の激減
– 作業スピードと品質の両立
といった現場のKPI(生産効率・不良率・工数削減)にダイレクトな良化が見られています。
成熟したアナログ業界の“昭和的工場”での導入ハードル
一方で、長年アナログ的業務プロセスが根強く残る工場では、「冷却工程の新設=ラインスピード低下」と敬遠される場合もあります。
「冷却の手間・コスト増」「現場作業員の抵抗感」「古い設備に新技術が載らない」など導入障壁も少なくありません。
しかしこうした現場でも、例えば「現有の空冷ファンの増設」「インク温度の可視化と再教育」「簡易型冷却ゾーンの設置」など、負担が小さくて済む導入から始めることで、着実な効果が出ています。
さらには、工場全体のカイゼン活動やデジタル化の一環として、国の補助金制度等を活用する動きも増えています。
調達・購買、バイヤーへの示唆:技術選定とサプライヤー管理の視点
中間冷却技術がバイヤーにもたらす価値
バイヤー視点では、「中間冷却技術を持つサプライヤーか否か」は品質とコストの両側面で大きな意味を持ちます。
多層プリントTシャツは、ファッションやアパレルブランドとしては商品価値の核。
返品や市場クレームリスクを抑えるためには、最新の品質安定工程=中間冷却制御の有無の確認が重要です。
サプライヤー提案時や監査時には、以下のような項目のチェックを推奨します。
– 工程フローに冷却制御ゾーンがあるか(設備・手法を含む)
– 温度管理や硬化確認の測定データを管理しているか
– アナログ現場での改善実績(KPI変化・歩留まり・再発防止)を説明できるか
導入設備や技術水準がサプライヤーの「差別化」となり、価格競争に巻き込まれずに高付加価値受注につながる可能性も広がります。
サプライヤー側で意識したいこと
サプライヤー側も、従来の「現場勘」や「伝統のノウハウ」だけでなく、「見える化されたプロセス制御」として中間冷却制御を積極的にアピールすることが取引拡大につながります。
客観的データや改善事例、導入プロセスの工夫(簡易器具等の内製・ローコスト提案)も武器として有効です。
今後の展望と、変わらない現場文化とどう向き合うか
多層プリントTシャツの競争は今後も激しさを増します。
海外製品との品質・価格競争の中で、「中間冷却制御による品質安定」をシステムとして持てるかが、工場の競争力の分水嶺です。
しかし、どれだけノウハウや設備が進化しても、現場の「人」の理解や共感がなければ根付きません。
ベテランの知見と新技術の融合、昭和的勘とデジタル計測のハイブリッド運用を積み重ねていくことが、現場改革のリアルな一歩です。
まとめ
多層プリントTシャツの乾燥で生じる層間剥離問題は、中間冷却制御技術の導入と最適化で大きく改善できます。
工場設備の自動化・デジタル化と現場目線の運用改善を組み合わせることで、昭和アナログ工場でも確かな歩み寄りが可能です。
バイヤー、サプライヤー双方にとって、プロセス技術の進化は新たな価値の源泉です。
現場の知恵と現代技術の融合から、製造業の「次の地平線」を一緒に開拓していきましょう。
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