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シャツの襟が波打たないための芯地接着とプレス工程

目次
はじめに:シャツの襟の見た目が製造品質を左右する理由
シャツの襟は、着用者の第一印象を大きく左右する重要なパーツです。
その襟が波打ってしまうと、「だらしない」「品質が悪そう」というネガティブな印象を与えかねません。
現代においても、多くのチェックポイントが自動化・デジタル化される一方、アパレル製造の現場では、昭和期から続く“勘と経験”に頼る部分が根強く残っています。
特にシャツの襟製造の工程は、芯地接着とプレスのクオリティ管理が製品価値の分かれ道となる場合が少なくありません。
本記事では、大手製造業現場での実務経験、新旧の知見を交え、襟が波打たないための芯地接着とプレス工程の最適解を深掘りします。
バイヤー志望の方や、サプライヤー目線でバイヤーの要求が気になる方にも、業界の“深層”に迫る情報をお届けします。
襟が波打つ主な原因とは?現場あるあるのお悩みポイント
美しいシャツの襟には、“ピンと立つ形状”“型崩れのなさ”“シワや波打ちのゼロ”が要求されます。
しかし、現実の現場では、以下のような“歪みの種”が数多く潜んでいます。
芯地の選定ミス
襟を美しく、かつ適度なハリを持たせるためには、芯地の種類と厚みが重要です。
特に昨今は「軽量化」「通気性」「快適性」ニーズへの対応も求められ、素材選びが難しくなっています。
安易に「安価でそこそこハリが出る芯地」を選ぶと、生地との相性が悪かったり、洗濯後に波打ちが発生しやすくなるなど、トラブルの原因になります。
芯地接着時の温度・圧力・時間の3バランスミス
芯地の接着は、プレス機による熱・圧力・時間の3要素で完了します。
いずれかが不足・過剰でも、芯地の糊が中途半端に溶けたり、逆に生地への影響が出たりします。
特に多いのが、「忙しい時期にプレス時間を短縮!」「最近のプレス機はクセがある」など現場の“臨機応変”が、裏目に出るケースです。
プレス直後と縫製時の温度管理の盲点
接着直後の芯地面は熱を持っています。
この熱がしっかり冷めてから縫製をしないと、ミシン作業中に芯地接着面がズレ、後で「波打った襟」になることがあります。
忙しいラインでは、プレス直後の襟をすぐ次工程へ回す現場も多く、この管理抜けが品質に直結します。
昭和と令和で変わる襟製造現場のリアル
工場の自動化・IoT化が進む中でも、襟の波打ち防止は“経験と理論”両方のアプローチが不可欠です。
ここでは、時代ごとの製造現場の変化と、“未だに根強いアナログ文化”の実態を解説します。
デジタル管理が進みつつも、アナログ依存の現場
大型工場では、圧力・温度・時間を自動制御できる最新プレス機も増えています。
しかし、現場では「手の感覚で確かめる」「目視で芯地のなじみ具合をチェックする」といった、いわゆる“昭和的”な所作が今も大切にされています。
なぜなら、微妙な生地ごとの個体差や、季節(梅雨・冬の乾燥)による条件変化を、現在の自動機だけで完全にフォローしきれないためです。
「手間とスキル」の蓄積がものを言う現場技術
襟の芯地接着からプレス、冷却—縫製までの一連工程は、機械の設定値だけでは本質的な品質安定にはつながりません。
「プレス機の癖」「今日の芯地ロットの微妙な違い」を現場リーダーが読み取り、微調整を指示することで、不良発生を未然に防いでいます。
こうした経験値を“見える化”して積み上げる活動が、今まさにアナログ業界でも求められてきています。
芯地接着とプレスの「正しい手順」と頻出トラブル対策
襟の波打ちを絶対に発生させないため、製造現場で今すぐ取り入れられる具体的プロセスを整理します。
芯地選びの5つのポイント
1. シャツ本体(身生地)の素材との相性チェック
2. 仕上がりイメージ(カチッと系・ソフト系)に応じた厚み/硬度の選定
3. 洗濯耐性テスト(事前に数回洗濯し、クセや波打ち具合を確認)
4. 粘着剤(ホットメルト系/ラバー系など)の種類を吟味
5. 芯地メーカーとの連携(最新素材/サンプル提供依頼も重要)
プレス機の最適設定
・温度:140〜160度(芯地の仕様書を厳守)
・圧力:1.5〜2.5kg/cm²(機種や素材厚で微調整)
・時間:10〜15秒(環境や生地厚により調整)
ここで重要なのは、毎日の“始業前テスト”。
芯地・生地ロットごとに確認プレスを行い、その日の最適条件を現場の指示書(デジタル・紙でも可)に明記しておきます。
プレス後の「冷却」フェーズの徹底
芯地接着は“冷却完了”までがワンセットです。
プレス後すぐに縫製に回すのは厳禁です。
最適なのは、専用の冷却スペース(ネット棚・送風ファン併用)で最低10分間自然冷却。
これにより芯地と生地の“縮率差”トラブルによる波打ちを大幅に抑えることができます。
縫製時の“押さえ”や“引っ張りすぎ”のミス防止
ミシン作業時の生地送りで「引っ張る」「押さえが強すぎる」といった操作ミスも波打ち発生の原因です。
年配熟練者だけでなく、新人スタッフでもミスしづらいように、押さえ金の適正設定・生地誘導治具の導入でフォローすることがポイントです。
バイヤーが襟品質で重視している“裏側”とは?
バイヤーは単なる「見た目」だけでなく、以下のような多面的視点で襟品質をチェックしています。
洗濯後の変化まで重視
納品前サンプルだけピシッと見せても、洗濯数回で波打つ襟はブランドの信用失墜に直結します。
バイヤーは「量産品全ロットでの品質安定+納品後の“耐久性”」まで必ずチェックしています。
現場の品質保証体制や、工程チェック記録に注目
「どんな工程で」「誰が」「どのように」品質安定を担保しているかを重視します。
現場のブラックボックス化や、「経験頼み」から脱却したPDCAが回っているかどうかも、選定の大きな判断材料です。
安価志向と「持続的高品質」のバランス
価格競争が激化する一方で、「見た目だけの安物利得」を嫌うバイヤーが増加しています。
芯地とプレスのわずかな工程コストで、取引全体の信頼性を損なわない“先行投資”を求められる時代です。
これからの襟製造現場はどう変わるか?次世代への提言
AIやIoT導入が進んでも、「最後の差」は現場の知見と細やかな改善で決まります。
DX化推進と「現場のムダ」に着目した改善
工程毎の温度・圧力・時間データをクラウド管理し、不良発生率や仕掛かりタイミングとひもづけて“見える化”することで、根拠ある改善活動が進みます。
現場ノウハウを“暗黙知”から“形式知”に変え、技術の世代交代を加速できる環境づくりが不可欠です。
“波打ちゼロ”を実現する人材育成と連携
芯地メーカー・現場リーダー・品質保証部の三位一体による、PDCAループと水平展開が使命感を持つプロフェッショナルを育てます。
製造現場の“一手一手がブランドを作る”との自負を持ち、他社との差別化を目指すことが、サプライヤー・バイヤー双方の利益を最大化する道です。
まとめ:襟の波打ちゼロを目指すために、今すぐできること
シャツの襟の波打ちを防ぐには、芯地の選定からプレス・縫製・冷却まで、あらゆる工程の一手間を惜しまない“現場力”が求められます。
さらに、製造だけでなく、その情報をバイヤーや川上の素材メーカーとしっかり共有することで、業界全体の品質底上げが実現します。
アナログ文化が根強い製造業においても、科学的根拠と職人技、その両輪による「最適化」と「見える化」を意識して取り組むことが、未来の勝者になる唯一の道です。
あなたの工場やチームが「襟の波打ちゼロ」を実現し、末永く信頼されるブランドパートナーになるよう、今こそ現場から変革を始めましょう。
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