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陶器皿の印刷で釉薬との密着を強化するための中間層樹脂と熱処理設定

目次
はじめに —— 陶器皿印刷の現場課題に迫る
陶器皿の印刷工程において、「釉薬」と「インク」の密着性は、製品品質と耐久性を左右する重要な要素です。
しかし、現場では印刷剥がれや色ムラ、耐久性不足など、昭和から続くアナログ作業だけでは解決しきれない課題に直面している方も多いのではないでしょうか。
本記事では、私が長年にわたるメーカー勤務で培った現場目線のノウハウと、最新トレンドを組み合わせて、「陶器皿の印刷で釉薬との密着を強化するための中間層樹脂と熱処理設定」について、実践的に解説します。
サプライヤーとして、バイヤーの意図や評価ポイントを知りたい方にも役立つ内容を目指します。
陶器皿印刷における密着の壁 —— 何が問題なのか
表面の物理・化学的ギャップ
釉薬を施した陶器皿は、その上にガラス質の滑らかな膜を持ちます。
このシリカを主成分とした層と、オフセットやパッド印刷で使われるインクでは、化学的な親和性が低く、直接印刷すると密着不足が発生しやすい傾向にあります。
現場では、印刷仕上がり時には問題ないように見えても、熱水や洗剤で繰り返し洗ったり、食器洗浄機に入れただけで簡単に剥がれてくるといったクレームが発生しやすいのが現実です。
昭和的現場の限界とデジタル化の遅れ
現場では「この温度で焼成すれば大丈夫」「経験則でここまでやれば染み込む」といった勘や伝統に頼りがちです。
しかし、グローバル市場では安全規格、耐久性規格などが厳格化し、「なぜ密着安定するのか」をメカニズムで語れなければ、サプライヤーの評価は年々下がっています。
バイヤー視点でも「密着不良=ブランドイメージダウン」「安定供給できない工場はリスク」と見なされます。
中間層樹脂(プライマー)の役割とは
なぜ中間層樹脂が必要なのか
陶器の釉薬表面には、インクの顔料や樹脂成分が物理的・化学的に結合しにくい性質があります。
中間層樹脂(プライマー、アンダーコート)は、そのギャップを埋め、釉薬層とインク層の“仲介役”として働きます。
中間層樹脂が形成する薄膜が「釉薬表面に吸着しやすい官能基」「インク成分と反応しやすい官能基」を両方持つことで、密着が飛躍的に向上します。
現場で使われる主な中間層樹脂の種類
1. エポキシ系プライマー
エポキシ基は幅広い素材に密着性が高く、耐熱性・耐水性も良好です。
工業用途でのスタンダードですが、反応硬化型なのでポットライフ管理が必要です。
2. ポリウレタン系プライマー
柔軟性もあり、割れにくく、インクとの親和性が高いのが特長です。
食器用途では食品衛生法対応グレードも選ばれています。
3. アクリル系プライマー
速乾性が高く、大量生産ライン向きです。
ただし長期耐久性や釉薬の粗さによっては密着力に波があるため、相性は検証が必須です。
4. 特殊シランカップリング剤
無機(釉薬)と有機(インク)を化学的に橋渡ししてくれるのがシランです。
界面反応で強固な密着が得られ、最近の高級食器、ホテル向けでは採用事例が増加しています。
中間層選定・印刷プロセスの実践ノウハウ
サンプル評価は「実使用を想定した耐久試験」必須
どれだけ実験室環境で密着していても、「熱湯」「洗剤」「摩耗」など、ユーザーの使い方に耐える必要があります。
ISO、JIS規格に基づく摩耗試験、加速洗浄試験、あるいは食器洗浄機を用いたサイクルテストが推奨されます。
現場でありがちな“目視チェックのみ”は廃止し、規格化された試験データでバイヤーとの信頼度もアップします。
中間層の塗工条件の管理ポイント
– 塗布量
– 薄膜均一性
– 乾燥時間
– 塗布直後のコンタミ対策
はとくに重要です。
塗工後に指紋が付着したり、乾燥不足だと密着強度低下の大きな原因になります。
工場のアナログ現場では量産スピード重視のあまり、ここで“不良混入”が起こりやすくなります。
密着向上に効く熱処理設定の最適化
中間層樹脂には「正しい温度プロファイル」設定が必須
プライマーやインクは焼成(熱硬化)条件によって化学架橋の程度やガラス質層との一体化レベルが大きく異なります。
現場では、「何度で何分」か、工程パラメータ表で管理しているように見えても、季節変動や窯出し場所によって実温度がバラついている事例が散見されます。
– 熱風循環炉の実測による温度プロファイリング
– 計測プローブを使った「釉薬表面」の実温度管理
– 樹脂メーカー推奨より+5℃~-5℃の微調整トライ
という“科学的工程管理”こそ、昭和的カンコツからの脱却には不可欠です。
窯出し直後の急冷はNG
密着強度を最大化するには、焼成→段階冷却が重要です。
樹脂やインク層が急冷で収縮すると、ガラス層から剥離が発生しやすくなります。
冷却工程も生産管理の一部として、時間・風量・冷却速度を記録しましょう。
量産立ち上げ時の重要チェックリスト
1. サンプルロットで密着試験を実施
2. 実機温度でクリープ試験や食洗機テスト
3. IN-LINEでの「印刷→樹脂→熱処理→検査」各工程ごとの歩留まり管理
4. バイヤーや取引先との評価基準統一
これらを実践するだけで、現場・バイヤー・サプライヤー間の齟齬が驚くほど減ります。
中間層樹脂・熱処理工程の最新技術トレンド
UV硬化型樹脂の台頭
近年はUV(紫外線)で瞬時に硬化するプライマーやインクも増えています。
低温で済むため、釉薬の変色を防ぎつつ、大量生産性・省エネ効果も高いことから、サステナブルな生産現場で導入が進んでいます。
ただ、UV残留による安全性、装置投資、フォーミュレーション開発の難易度にも注意が必要です。
AIによる焼成プロセス管理
IoT温度センサ、AIアルゴリズムによる適正温度監視、自動補正の動きが徐々に広がっています。
伝統技術とデジタルが融合すれば、「世界品質」の密着制御が可能となります。
今後はこのような進化を、「クラフトマンシップの新しい形」として現場に定着させていく視点が重要です。
バイヤー視点からみた信頼度アップのポイント
トレーサビリティと説明責任
バイヤーは「なぜ密着が安定しているのか」「不良時はどんな対策を打つのか」をサプライヤーから積極的に説明されることを求めています。
レシピ管理、焼成履歴、ロット追跡などの“見える化”ができている現場は、価格競争だけでなく品質信頼による長期取引の選択肢になります。
コンプライアンスへの感度
食品衛生法、欧州REACH規制など、密着剤・インクの成分規制を理解し、証明書発行・サードパーティ試験を自主的に進める姿勢が今後さらに問われます。
こうした「バイヤーの一歩先を行く情報発信」が現場と評価を大きく変える時代です。
まとめ —— 陶器皿印刷の未来を築くために
陶器皿の印刷において、釉薬とインクの密着強化は、単なる技術課題ではなく、ブランド競争力、サプライチェーン全体の信頼に直結する戦略要素です。
– 中間層樹脂の正しい選定と管理
– 科学的工程管理による熱処理最適化
– 規格化された耐久評価
– デジタル技術との融合による新しい現場作り
– バイヤーが求める「安心・トレーサビリティ・規制対応」意識
これが、アナログ業界から抜け出し、グローバル市場をリードするためのカギです。
二十年以上現場に身を置いた立場から強くお伝えしたいのは、「日常の現場改善が未来を変える」ということです。
あなたの工場や現場が地道な一歩を踏み出すことで、業界全体の進化と信頼獲得につながっていきます。
ぜひ、社内外にノウハウを共有し、業界の新たな地平線を一緒に切り拓いていきましょう。
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