- お役立ち記事
- 内部統制が追いつかず監査対応で混乱する問題
内部統制が追いつかず監査対応で混乱する問題

目次
はじめに:製造現場で無視できない内部統制の現実
長年にわたり製造業の現場で働く中で、調達購買や生産管理、品質管理など、多種多様な部門を経験してきました。
そこで痛感したのは、内部統制が十分に機能していないと組織全体が混乱の渦に巻き込まれるという現実です。
特に年に一度やってくる「監査」。
膨大な書類の山、管理手法の属人化、現場の抵抗感、そしてどこか時代遅れな意識の壁。
監査対応が近づくたびに現場は色めき立ち、「あれもこれも急いで用意しろ」と指示が乱れ飛びます。
なぜここまで内部統制が進まないのでしょうか。
アナログな習慣から抜け出せないこの業界特有の背景を踏まえつつ、実践的な解決策に迫ります。
内部統制が機能不全に陥る理由とその構造
昭和的慣習の呪縛
多くの日本の製造業は、かつての高度経済成長期に培われた「現場第一主義」や「職人の勘と経験」を美徳としてきました。
巨大なホワイトボードや紙ベースの帳票、担当者の記憶に頼る発注管理。
この「アナログ文化」が根強く残っていることで、内部統制の仕組みを阻害しています。
業務の属人化によるリスク
方式化されておらず、ベテラン社員だけが内容を知るという「属人化」も大きな問題です。
引き継ぎが曖昧なまま、帳票やワークフローがブラックボックス化し、新しい担当者や監査部門ですら全貌が分かりません。
こうした状況下では、内部統制のための記録や証憑がうまく機能せず、監査の際に大混乱となります。
多拠点・多工程の複雑化
近年の製造業は、調達先の多様化や海外拠点との連携、サプライチェーンの長大化により、組織がより複雑になっています。
工程ごと、拠点ごとに業務標準がバラバラなまま温存されている場合、統一された内部統制ルールの適用は困難を極めます。
監査が近づくと発生する混乱の実態
書類探しの大騒動
監査のシーズンになると、「証憑」や「履歴」が必要だと通達が出されます。
しかし、日常管理が属人化・アナログ化しているため、どこに何の記録があるのかさえ分からない。
調達の契約書、品質検査の結果表、作業指示書などを探すのに膨大な時間を費やし、やっと発見しても内容が不十分、フォーマット不一致、保存期間切れなどの問題が頻発します。
現場のやらされ感と抵抗感
監査対応は本来、内部統制状態を健全に保つための業務です。
しかし現場では「また監査か」「余計な仕事が増えた」と受け止められ、仕事の優先順位も下がってしまいます。
この温度差が、監査準備の遅れや不正確な資料提出を引き起こし、「監査対応=面倒な仕事」という悪循環に陥ります。
管理職の板挟みと疲弊
現場からは「こんなに急に言われても無理だ」と不満が噴出。
一方、本社企画や内部監査部門からは「期日厳守、抜け漏れなく」と厳命されます。
部門長や現場リーダーは、日常業務と監査対応の板挟みで心身ともに疲弊します。
なぜ、製造業は内部統制高度化が進みにくいのか
システム投資の遅れ
製造業はコスト競争の激しさから、在庫や原材料には投資しても、間接部門やIT化への投資は後回しにされがちです。
現場のニーズや過去の名残に引きずられ、最新の統合基幹システム(ERP)や電子ワークフローの導入が遅々として進みません。
現場主義と全社目線の断絶
「現場がやりやすい方法」と「全社としてルール化が必要な部分」とのバランス調整が難しいのも要因です。
現場主義を掲げるあまり、標準化や見える化が進まない。
一方、トップダウンでルールを押し付けると現場は反発し、形骸化した運用に陥ります。
知識・経験の属人性が伝統とされる風土
ベテラン社員の知恵と経験、職人技を重んじるがゆえに、手順やノウハウの形式知化(見える化)が進みません。
マニュアルを整備しても「現場では使えない」「臨機応変が信条」といった風土が根強く残ります。
ギャップを解消するための現場発・実践的アプローチ
「なぜ監査が必要か」を現場にわかりやすく伝える
内部監査や本社の方針を現場に押し付けるだけではなく、実際に起こり得るリスク(情報漏洩、不正調達、品質トラブルなど)を具体的な事例とともに伝えましょう。
「監査=組織を守るためのリスクヘッジ」という共通認識を持つことで、やらされ感や抵抗感を和らげることができます。
短期間で実現できる「小さな成功体験」を積み重ねる
一度に全ての業務を改革しようとすると現場は戸惑い、必ず反発が起こります。
例えば「調達契約書だけは共有サーバーで一元管理する」「品質検査記録は一定期間ごとに自動で保存・通知される仕組みにする」といった小さな取り組みから始めましょう。
これにより「これならできそう」「実際に効率が上がった」といったポジティブな成功体験を積み上げていけます。
ベテランの知恵を標準化に活かす
「形式知化」=「現場の自由度を奪う」という誤った認識を解きほぐし、むしろベテランのノウハウを整理・標準化して残すことで、より新人育成やスキル継承がやりやすくなるという目的を丁寧に伝えることが重要です。
ベテラン社員を巻き込み、「標準手順の見直しチーム」や「マニュアル作成プロジェクト」の主役になってもらうことで、現場のリアリティを担保したルール整備が進みます。
ITツールの「現場目線導入」を目指す
ツール導入自体が目的になってしまうと、現場から「使いにくい」「意味がない」と敬遠されがちです。
本当に現場の課題解決となっているか、アナログ業務がどこまでデジタル化できるかを現場メンバーと一緒に確認しながら段階的にIT化を進めましょう。
また、現場に任せきりにせず、管理職や本社側も「現場にどんなツールが受け入れられやすいか」を把握し続ける姿勢が必要です。
バイヤー目線、サプライヤー目線で考える内部統制の意義と価値
バイヤーが考える内部統制の要点
バイヤーの最大の関心事は、「調達先の信頼性確保」と「リスク低減」です。
内部統制が機能していれば、契約不備・不正・品質事故のリスクを大幅に下げられます。
また、監査対応がスムーズな企業は、サプライチェーン全体の安定性にも寄与します。
バイヤーを目指す方であれば、単なる価格交渉能力だけでなく、こうしたガバナンス意識も強く求められています。
サプライヤーは「監査」をビジネスチャンスと捉え直すべき
監査というと「評価・指摘される場」というネガティブイメージが根強いです。
しかし、バイヤーの信頼を勝ち取るには、自社の内部統制をアピールできる絶好の機会になります。
自社の取り組みを棚卸しし、監査に柔軟かつ的確に対応できる体制を整えておくことは、リピート受注や新規バイヤー開拓にも直結します。
サプライチェーン全体の健全化が信頼のカギ
業界標準化やガイドライン策定の流れを見ても、今や内部統制はバイヤー・サプライヤー双方にとって、単なる「監査対応業務」ではなく、企業価値を高める経営戦略となりつつあります。
現場と本社、バイヤー・サプライヤーが一体となって日々の取り組みを積み重ねていくことが、結果的に組織全体の信頼獲得につながります。
まとめ:昭和の呪縛を超えて、現場主導の「進化する内部統制」へ
監査対応で混乱する現状から脱却するには、「業務の属人化」「アナログ管理」「現場と本社の断絶」といった根本的な課題を直視しなければなりません。
昭和の成功体験をベースとしつつも、今の時代の多拠点・多工程・多様なステークホルダーに対応できる仕組みに進化させることが問われています。
現場の成功体験を重ねながら、組織横断的に「なぜ内部統制が必要なのか」を明確にし、ITとアナログの「いいとこ取り」で一歩ずつ前進していく。
これが、現役の製造業従事者として皆さんに提案する最も現実的で、効果的なアプローチです。
内部統制は守りのためだけでなく、攻めのビジネスにもつながります。
昭和のアナログな良さと、現代のデジタルによる効率化を融合させ、日本の製造業全体がより強く、しなやかに進化していくための一助となれば幸いです。
ノウハウ集ダウンロード
製造業の課題解決に役立つ、充実した資料集を今すぐダウンロード!
実用的なガイドや、製造業に特化した最新のノウハウを豊富にご用意しています。
あなたのビジネスを次のステージへ引き上げるための情報がここにあります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが重要だと分かっていても、
「何から手を付けるべきか分からない」「現場で止まってしまう」
そんな声を多く伺います。
貴社の調達・受発注・原価構造を整理し、
どこに改善余地があるのか、どこから着手すべきかを
一緒に整理するご相談を承っています。
まずは現状のお悩みをお聞かせください。