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輸入禁止品規制変更で差戻しを防ぐ仕向け地調査と柔軟対応策

目次
はじめに:グローバル調達の落とし穴「輸入禁止品規制変更」
グローバルな調達戦略が当たり前となった今日、多くの製造業の現場で見落とされがちなポイントがあります。
それが「仕向け地」(=商品が最終的に届けられる国や顧客)ごとの輸入禁止品や規制の変化です。
一歩間違えると、せっかく調達した部材や製品が仕向け地の通関でストップ、差戻しや廃棄、巨額の損失、顧客との信頼毀損など、ダメージは計り知れません。
この複雑な実情は、昭和のアナログ時代から根強く残る業界体質や、「いつも通り」「うちは大丈夫」といった慣習に起因することもしばしばです。
本記事では、筆者自身の工場長・調達リーダーとしての現場経験をもとに、なぜこのような問題が繰り返されるのか。
「仕向け地調査」の失敗例と成功例、さらに変化に強いサプライチェーンを作るためのラテラルシンキング的な柔軟対応策について、実践的に解説します。
なぜ「仕向け地調査」が杜撰になりやすいのか
昭和の慣習が残る、属人化した調達現場
製造業の多くの現場では、調達・購買業務が「ベテランバイヤーの経験」に依存しがちです。
仕向け地の輸入禁止品リストや規制情報も、紙やExcelベースで管理され、「あの時は輸入できたから、今回も大丈夫だろう」という過去の成功体験が暗黙の前提になっていることが少なくありません。
とくに海外サプライヤーや中小企業では、最新の規制改正情報のキャッチアップが手薄になっています。
法規制の急激な変化と情報不足
近年は各国で環境規制や安全規格の改定が頻繁です。
例えば「RoHS指令」のような有害物質規制の改正、新興国における機械電気製品の登録要件追加、突発的な貿易摩擦による輸出入制限などがあります。
日本国内にいると、現地の実務運用や最新ガイドラインに気づけず、「前回OKだったものが今回はNG」と足元をすくわれる危険性が常にあります。
「取引先まかせ」=高リスク
「商社や現地代理店に任せれば何とかしてくれるだろう」と油断しがちですが、取引先もまた、日本側依存のサプライヤーに頼り切っている場合も多いものです。
責任の所在が曖昧で、トラブル時に「うちの責任じゃない」と押し付け合いになりやすいことは、調達現場の常識として再認識が必要です。
差戻し・通関トラブルのリアルな現場事例
現地での通関ストップ、返品処理での損失
たとえば、タイ向けに工業用機械部品を輸出したところ、現地で新たに施行された化学物質管理規制(新SDS提出義務)に違反していると判断され、通関で留め置かれてしまったケース。
部品は一度輸入許可が下りないと日本へ返品するしかなく、輸送費・再パッケージ・廃棄費含め大きな損失が発生しました。
顧客クレームから判明する規制違反
完成品の一部に使われていた樹脂材料が、ヨーロッパのREACH規則で新たにSVHC認定(高懸念物質)されたことに気づかず、販社経由で出荷した製品が顧客の監査で差戻しとなった例もあります。
「競合は出荷できているのに、うちだけNG…」と社内で責任追及やバイヤー・品質管理部門への批判が集中し、再発防止策の強化が急務となりました。
輸出前の「突然」の通関NGと納期遅延
東南アジアの一部地域では、現地の担当者次第で法規制の解釈や運用が異なることも珍しくありません。
出荷直前に「XX書類が未提出」「この規格証明が不備」などと指摘され、物流スケジュールが完全に崩れてしまうこともしばしばです。
本気の仕向け地調査を成功させる現場目線のノウハウ
1. 業界情報・規制改正のアンテナを張る
バイヤーや調達担当者は、仕向け地ごとの最新規制をキャッチアップする体制づくりが不可欠です。
– 各国大使館や商工会、業界団体の公開情報をウオッチする
– グローバルな規制データベース(例:Emergo、CHEMTREC等)を定期巡回
– サプライヤー・ローカル代理店から規制改定の速報・文書を都度もらう
– 現地顧客や販社とのコミュニケーションチャネルを増やし、「噂話」レベルも吸い上げる
調達部門単独ではなく、品質保証・法務部門と横連携を取り、危ない情報はすぐシェアする仕組みづくりも実効性が高いです。
2. 複数人・複数部署によるクロスチェック体制
仕向け地調査は属人化を防ぐことがカギです。
輸出前照会票や輸入可否判定書の作成・回覧・承認プロセスに複数の目を入れることが、「うっかりミス」や「抜け漏れ」を減らします。
また、調達だけでなく、品質保証、設計開発、営業、現地現法のスタッフなど、多角的な視点でリスクを洗うことが有効です。
3. 規制「ギリギリ」案件は、事前に現地専門家へ確認
判断が分かれそうなケースや、条文の読解が難解な規制については、現地の通関業者や専門コンサルタント、場合によっては関係官庁へ積極的に照会・相談を行います。
調達側からは経費や手間が気になるところですが、損失リスクと天秤にかけて、初期段階で丁寧に対応する姿勢が結果的に経済的です。
4. 社内教育と、「疑問は躊躇なく指摘する」文化づくり
「これは大丈夫だろうか?」
「前回と違う規制が出ていないか?」
現場のスタッフが少しでも不安に思ったら、声をあげやすい雰囲気づくりが長期的には大きな効果を発揮します。
新入社員や若手にも分かりやすく、仕向け地規制の基本や失敗事例を教育し、属人ノウハウから組織知へ展開していきましょう。
差戻しを防ぎ、柔軟に対応するための新時代の取り組み例
デジタル活用によるリスク検知の仕組み
紙やExcel台帳だけでなく、調達・輸出管理システムに仕向け地・輸出品目ごとの規制情報を一元管理し、ワーニングが自動で出るようなデジタル運用の導入が進んでいます。
AIやRPA技術による最新情報取得、規制マッチングも今後の選択肢ですが、現場では「人による目視確認」との併用がまだ不可欠です。
サプライヤーマネジメントの高度化
サプライヤー評価の指標に、「規制遵守体制」や「情報提供の即応性」「現地窓口対応力」なども加え、イレギュラー対応力が高いパートナーの選別を強化しましょう。
リスクが高い仕向け地向けには、第2・第3の調達ルートや現地工場での現地調達切替えも有効です。
また、サプライヤーにも「バイヤーの立場」を適宜説明し、共に規制コンプライアンスを追求する姿勢が、信頼関係の深化につながります。
「もしも」に備えた輸送・納期のバッファ設計
グローバルサプライチェーンでは、100%完全なトラブル回避は期待できません。
あらかじめ関税トラブル・差戻し時の再手配に耐えうる納期バッファや、代替手段(予備在庫・別サプライヤー調整)を用意しておくことが、納期遵守・顧客満足のためには必要です。
まとめ:現場力と情報感度で、新たな時代のトラブルゼロ調達へ
輸入禁止品の規制変更は、グローバル化が進むほどにその重要性が増しています。
昭和から続く属人・アナログ的な調達体制では、もはや時代に対応しきれません。
仕向け地調査は面倒だからこそ、システムと人の知恵を融合し、最新の信頼できる情報へのアクセス、そして複数人によるクロスチェック・教育を駆使することが必要です。
さらに、サプライヤーともバイヤー視点・リスク意識を共有しあい、柔軟な体制を構築することで、差戻しや通関トラブルの連鎖から抜け出すことができるのです。
グローバル競争を勝ち抜くためには、新たな時代の「柔軟調達マインド」を現場で徹底しましょう。
バイヤー志望の方、サプライヤーからバイヤー視点を学びたい方にも、この「現場目線」と「情報感度」がきっと武器になるはずです。
今こそ、製造業の進化に向けた一歩を踏み出しましょう。
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